ユルト(ゲル)とは:モンゴル遊牧民の丸い移動式テントの構造と歴史
ユルト(ゲル)の構造と悠久の歴史を写真と図で詳解。モンゴル遊牧民の暮らし・設営法・文化背景までわかる入門ガイド。

モンゴル語でゲルとも呼ばれるユルトは、持ち運び可能な丸いテントです。皮やフェルトで覆われている。中央アジアの草原地帯に住む遊牧民の住居としてよく使われている。
構造と主要部材
ユルトは軽量で分解・組立が簡単な構造を持ち、寒冷な草原の気候に適した断熱性が特徴です。代表的な部材は次の通りです。
- 円形の木骨組み(ハナ / khana):折りたたみ式の格子状の壁パネルで、ユルトの側面を作ります。
- 屋根桁(ウル / uni、または杉の梁):壁から中心の天井開口まで放射状に伸びる木の梁で、天井を支えます。
- 天井の開口(トーノ / toono):中央の丸い頂部で、換気・採光・煙突の出口となります。装飾や儀礼的な意味を持つこともあります。
- 被覆材:羊毛のフェルトや動物の皮、現代では帆布や化繊のカバーが用いられます。フェルトは断熱性が高く、防寒・防音に優れます。
- 内装・床材:ラグ、毛皮、木の床板や簡易の家具(寝床、棚など)が置かれます。中央にストーブを置くことが多いです。
組み立てと移動
ユルトは分解・折りたたみが容易で、数人で数時間あれば組み立てられます。移動時は格子状の側壁や屋根桁、フェルトをたたんで動物や車両で運びます。伝統的には馬やラクダ、ヤクなどで運搬していましたが、現代ではトラックを使うことが多くなっています。
気候適応と住み心地
フェルトは熱を逃がさず、乾いた寒冷地でも暖かさを保ちます。また円形形状は風に強く、積雪が屋根に均一に積もるため耐久性があります。中央のトーノは換気と採光を兼ね、冬には閉じて暖かさを保ち、夏には開けて通風します。伝統的なユルトの中央には暖炉やかまどが置かれ、煙はトーノまたは煙突で外へ出します。
歴史と文化的意義
ユルト(英語では yurt、モンゴル語では「ゲル(гэр)」)は、中央アジアの遊牧文化と密接に結びついています。その起源は古代のトルコ系・モンゴル系の遊牧民にさかのぼり、遊牧生活の移動性と気候への適応から発達しました。チンギス・ハーンの時代には軍営や住居として広く用いられ、草原文化の象徴的な住まいとなりました。
内装や外側の装飾には地域ごとの模様や色彩、刺繍が施され、家族や部族のアイデンティティを表します。ユルトの空間配置や儀礼(客人の迎え方、祭礼の場としての利用など)は、地域ごとの習慣と結びついています。
地域差と種類
- モンゴルの「ゲル」は円形が比較的大きく、木材の装飾や色彩が豊かな場合が多いです。
- トルコ系の「ユルト」は語源が同じですが、形状や被覆材に地域差があります。キルギス、カザフなどの遊牧民の間でも細部が異なります。
- 現代では旅行用のキャンピングユルトや宿泊施設(グランピング)、展示用のユルトが作られており、伝統的要素を残しつつ素材や寸法を変えたものも見られます。
現代での利用と保存
今日、ユルトは伝統的住居としてだけでなく、観光施設、文化体験、環境に配慮した移動住宅として再評価されています。博物館や民俗行事、国際的なグランピング施設でも用いられ、伝統技術の保存に貢献しています。一方で都市部での恒常的な居住に用いる場合は、法規制やインフラの整備が課題となることがあります。
手入れと長持ちさせるコツ
- フェルトは湿気に弱いので、雨や雪の浸入を防ぐ外被を適宜補修・交換する。
- 木部は防虫・防腐処理を施し、割れや反りを定期的に点検する。
- 屋根開口(トーノ)や煙突回りは密閉性と換気のバランスを保つよう調整する。
ユルトは、簡素でありながら機能的・美的にも豊かな住居です。伝統的な技術と現代の素材や用途を組み合わせることで、持続可能な住まいとしての可能性が広がっています。
建設
伝統的なユルトは、木製の円形のフレームが広がり、フェルトのカバーがかけられています。フェルトは羊の毛から作られる。樹木のない草原では、外壁を作るための木材は手に入らない。
ヤートは解体してラクダやヤクでコンパクトに運び、別の場所で再建できるように設計されています。完成まで2時間程度かかります。
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モンゴル語のゲル:壁とドアから始まる
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モンゴル・ゲル:屋根の支柱を置き始める。
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モンゴル・ゲル:屋根のポールを設置した状態
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モンゴル・ゲル:薄いインナーカバーを屋根に乗せる
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Mongolian Ger:フェルトカバーの追加
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Mongolian Ger:外装カバーの追加
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マンダルゴヴィ近くの草原にたたずむゲル

モンゴルのゲル
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