ツヴェンテンドルフ原子力発電所(未稼働)—オーストリアの原発の歴史と現在
ツヴェンテンドルフ原子力発電所の知られざる未稼働の歴史、1978年の国民決議と現在の太陽光・研修利用を詳しく解説。
ツヴェンテンドルフ発電所は、オーストリアのツヴェンテンドルフ・アン・デア・ドナウにある原子力発電所である。設計は商業用の沸騰水型炉(BWR)として進められ、建設は1970年代に行われたが、一度も運転を開始することなく稼働しないまま残された。
建設と中止の経緯
1970年代に着工してほぼ完成に至ったものの、1978年にオーストリア国民が原子力発電所の稼働に反対する意思を示す国民投票を行い、使用反対を決議したためである。この国民投票は僅差ではあったが反対が多数となり、結果的にツヴェンテンドルフは燃料を搬入されることなく運転開始を見送られた。設計上は当時の商業炉としては標準的な出力クラスで建設されていたが、実際に発電に至らなかった。
その後の利用と現状
稼働しなかったため、施設自体は解体されずに残された。以降は以下のような用途に転用・活用されている。
- 同型炉や近隣国の原子力関連施設(主にドイツ)への交換部品の保管・供給拠点としての利用。
- 原子力技術者や保守要員のトレーニング施設、緊急対応訓練の場としての活用。
- 映画や撮影のロケ地、産業技術の実験場として一部が利用されることもある。
- 1987年には、原子力を代替する形で石炭火力の発電所が周辺で建設されるなど、地域のエネルギー供給は別の方向で整備された。
一般公開はされておらず、通常は発電所を見学することはできません。ただし、専門家向けの見学や研究・教育目的の限定的な訪問が行われることはある。
所有と転用 — 太陽光発電など
現在はオーストリアのエネルギー会社が敷地と設備の所有者となっており、一部の施設や敷地は太陽光発電施設として転用されている。建屋やインフラが残っていることから、再生可能エネルギーの導入や産業利用の拠点として活用されるケースが増えている。
社会的意義と評価
ツヴェンテンドルフは、完成したにもかかわらず一度も稼働しなかった稀有な例として、国内外で広く知られている。1978年の国民投票はオーストリアのエネルギー政策に大きな影響を与え、以後オーストリアは商業用原子力発電所の導入に慎重な姿勢を取る政策を続けている。このためツヴェンテンドルフは反原発運動の象徴の一つとなり、エネルギー政策や市民参加のあり方を考える際の重要な事例とされている。
参考/補足
ツヴェンテンドルフは「完成しているが未稼働の原発」という特殊な立場から、技術的な保存、訓練拠点、再利用方法の検討など多面的な議論を呼び続けている。将来的な用途は所有者や政策の方針、地域のニーズによって変わる可能性がある。

セーブ・ザ・ワールド・アワード 2009の授賞式でのツヴェンテンドルフ原子力発電所の様子。
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