ブレイザー(Blazar)とは:超高エネルギー活動銀河核と相対論的ジェットの解説

ブレイザーとは何か?活動銀河核と相対論的ジェット、超高エネルギー現象を詳解し観測と理論をわかりやすく紹介。

著者: Leandro Alegsa

ブレイザーとは、地球方向に向いた強い相対論的ジェットを持つ活動銀河核(AGN)の一種で、非常にコンパクトで強烈な放射を示す天体です。典型的には中心にある超巨大ブラックホールが周囲の物質を降着してエネルギーを供給しており、遠方のクエーサーと同様に非常に高い光度を示します。ブレイザーは宇宙で最もエネルギーに満ちた宇宙現象の一つとされ、天文学の重要な研究対象です。

ブレイザーは一般に、活動的で巨大な楕円銀河の中心に位置する超巨大ブラックホールをエンジンとして持つ活動銀河核(AGN)に分類されます。AGNとは、銀河の中心部にある、電磁波の広い範囲(可視光〜電波〜X線〜ガンマ線)にわたって通常よりもはるかに高い電磁スペクトル上の輝度を示す領域を指します。この高輝度は、降着円盤やジェットで失われる運動エネルギーが放射に変換されることで生じます(ここで言う輝度の異常は観測上の特徴であり、しばしば輝度という用語で表現されます)。

主な観測的特徴

  • 強い変光:数時間〜数日、場合によっては数分といった短時間で明るさが大きく変わることがあり、これがブレイザーの大きな特徴です。
  • 高い偏光率:光の偏光が強く、磁場に起因するシンクロトロン放射が重要な役割を果たしていることを示します。
  • 超光速運動:電波干渉法などでジェット中に見られる見かけ上の超光速運動(相対論的ジェットの効果による)を示します。
  • 広いスペクトル分布:電波〜光〜X線〜ガンマ線にわたる強い放射をもち、スペクトルは一般にふたつの「山」(低エネルギー側はシンクロトロン、 高エネルギー側は逆コンプトンなど)を示すことが多いです。

分類と代表的性質

ブレイザーは大きく分けて二つの亜型に分類されます。ひとつは、光学スペクトルにほとんどまたは全く輝線を持たないBLラセタエ型(BL Lac)、もうひとつは強い幅広い輝線を示すフラットスペクトル電波クエーサー(FSRQ)です。これらはジェットのパワーや降着率、周囲の降着物質の量などの違いに対応すると考えられ、統一モデルでは、観測される違いの多くがジェットの指向とドップラー効果(ビーミング)によって説明されます。

物理的起源とジェット形成

ブレイザーのジェットは、超巨大ブラックホールの降着円盤と強力な磁場の相互作用によって形成・加速されると考えられています。代表的なメカニズムとしては、ブラックホール自身の回転エネルギーを磁場で取り出すや、降着円盤から物質を磁場で掻き上げるなどが提案されています。相対論的速度を持つジェット内では電子(あるいは電子と陽電子ペア)がシンクロトロン放射を行い、さらに高エネルギー側の放射は同じ電子による逆コンプトン散乱や、場合によっては原子核の相互作用から生じます。

ブレイザーと他のAGNの位置づけ(統一モデル)

AGNの統一モデルでは、ブレイザーはジェットが地球方向にほぼ向いている「ビームされた」AGNであり、ジェットの向きの違いによって観測されるクラス(ラジオ銀河、クエーサー、ブレイザーなど)が説明されます。例えば、低光度のラジオ銀河(FR I)に対応するのがBL Lac型、より強力なFR IIに対応するのがFSRQに対応するとする考え方があります。

有名な観測例と注意点

しばしば参照される近傍の活動銀河に、銀河M87があります。M87は中心に非常に大質量のブラックホールを持ち、強いジェットを放っていますが、ジェットの向きが地球方向から大きくずれているため典型的なブレイザーではありません。以前の推定で中心ブラックホール質量が約30億太陽質量とされていたこともありますが、近年の高精度観測では質量はより大きく(およそ数十億太陽質量、例えばイベントホライズン望遠鏡の結果などで約6.5×10^9太陽質量と推定される)とされています。

観測手法と現代的意義

ブレイザーの研究は、電波干渉撮像、光学・分光観測、X線・ガンマ線観測(衛星および地上望遠鏡)、さらには高エネルギー粒子(ニュートリノや宇宙線)との関連を含むマルチメッセンジャー天文学の重要な一分野です。近年では、ブレイザーが高エネルギーニュートリノの発生源の候補として注目され(例:TXS 0506+056 に関連するとされる事例)、宇宙線加速の現場としての意義も議論されています。

まとめ(要点)

  • ブレイザーはジェットが地球方向に向いたAGNで、強いビーミングにより短時間変動・高偏光・高エネルギー放射を示す。
  • 主にBL Lac型とFSRQに分類され、スペクトルや輝線の有無で区別される。
  • ジェットはブラックホール周辺の降着や磁場で形成・加速され、シンクロトロンや逆コンプトン過程が主要な放射機構となる。
  • ブレイザー研究は、高エネルギー天体物理学や宇宙線・ニュートリノ天文学にとって重要であり、マルチ波長・マルチメッセンジャー観測が鍵となる。
ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した、M87からほぼ光速で噴出された物質のジェットが銀河中心部から1.5kpc(5kly)伸びている様子。Zoom
ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した、M87からほぼ光速で噴出された物質のジェットが銀河中心部から1.5kpc(5kly)伸びている様子。

質問と回答

Q:ブレイザーとは何ですか?


A:ブレイザーとは、活動的な巨大楕円銀河の中心にある超巨大ブラックホールを持つ非常にコンパクトなクエーサーで、宇宙で最もエネルギッシュな現象の一つです。

Q: 活性銀河核(AGN)とは何ですか?


A:活動銀河核とは、銀河の中心部にある、電磁波の一部または全部で通常よりはるかに高い輝度を持つ領域のことです。

Q: ブレザーと他の活動銀河核を持つ銀河の違いは何ですか?


A:ブレイザーは、AGNを持つ活動銀河の一つですが、相対論的なジェットが地球の方向に向いているため、観測しやすいと言われています。

Q: 「ブレイザー」という言葉は誰が作ったのですか?


A: 1978年に天文学者のエドワード・スピーゲルによって作られた言葉です。

Q: なぜ多くのブレイザーは、ジェットの最初の数パーセクに超光速の特徴を持つのでしょうか?


A: 多くのブレイザーは、ジェットの最初の数パーセクに超光速の特徴を持ちますが、これはおそらく相対論的なショックフロントのためです。

Q: 銀河M87の中心にあるブレイザーは、何を燃料にしているのですか?


A: M87銀河の中心にあるブレイザーは、銀河の中心から10光年以内にある約30億太陽質量のブラックホールによって引き起こされています。

Q: なぜブレイザーは天文学の重要なテーマなのでしょうか?


A: ブレイザーは宇宙で最もエネルギーの高い現象の一つであり、高エネルギー天体物理学的プロセスや銀河の進化について洞察を与えるため、天文学の重要なトピックとなっています。


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