レスリー・エレアザー・オルゲル FRS(Leslie Eleazer Orgel FRS、1927年1月12日 - 2007年10月27日)は、イギリス出身の化学者で、生命起源(化学進化)研究の先駆者の一人です。分子進化、自己複製、前生物化学の分野で多くの基礎的業績を残しました。
経歴
オルゲルはロンドンに生まれ、オックスフォード大学マグダレン・カレッジで化学の学士号と博士号を取得しました。1953年4月、彼はクリックとワトソンのDNAモデルの初期の発表を目にした研究者の一人でもあります。
研究と業績
1964年にサルク生物学研究所の上級研究員兼研究教授に就任し、化学進化研究室を率いました。また、サルク在任中に、NASAの支援を受けた外来生物学(astrobiology)のNSCORTプログラムで5人の主任研究員の一人を務め、宇宙生物学分野でも重要な役割を果たしました。さらに、サルクと並行して、カリフォルニア大学サンディエゴ校の化学・生化学科の非常勤教授も務めました。
オルゲルはまた、NASAのバイキング火星着陸船計画に参加し、ロボットに搭載されたガスクロマトグラフィー-質量分析計などの分子分析機器の設計チームの一員として貢献しました。これらの活動は、地球外環境での有機物検出や生命の痕跡探査と直接結びついています。
彼の研究室では、後に臨床で用いられる抗がん剤の一つであるシタラビン(cytarabine、Ara-C)を経済的に合成する実用的な方法に行き当たったとされ、合成有機化学の応用面でも成果がありました。
生命起源理論と科学的貢献
オルゲルは生命起源に関する理論的・実験的研究で知られています。1970年代には、地球外起源の可能性を再検討するパンスペルミア仮説を支持する立場から、初期生命の起源が地球外から到来した可能性を提起しました(隕石などを介した物質輸送の観点から)。
また、スタンレー・ミラーらとともに、初期の自己複製分子としてリボ核酸(RNA)よりもペプチド核酸(PNA)のようなアナログが有利であった可能性を示唆し、RNAワールド仮説に対する重要な代替仮説を提示しました。これらの議論は、遺伝情報担体としての分子の化学的妥当性や前駆体供給の現実性を検討するうえで大きな影響を与えました。
オルゲルは「オルゲルの法則」と呼ばれるいくつかの簡潔な格言でも知られ、そのうちの第二法則「進化はあなたよりも賢い(Evolution is smarter than you)」は広く引用されています。これは、生物・進化系の複雑さや適応の結果を過小評価しないことを促す警句として受け取られています。
著作と思想
彼は著書『The Origins of Life』(邦訳のタイトルは文脈により異なります)の中で、生命と非生命を区別する観点や、化学的・機能的に意味のある複雑性について議論しました。オルゲルは、生命現象を理解するために必要な「特異性(specified complexity)」に関する問題提起を行い、科研費的・概念的な枠組みを提供しました。
研究論文は300本を超え、レビューや解説を含め広範な文献を残しており、化学進化や前生物化学の基礎づけに長く寄与しました。
死去
オルゲルは2007年10月27日、カリフォルニア州サンディエゴのサンディエゴ・ホスピス&緩和ケアで癌のため逝去しました。彼の研究と教育は、生命起源研究の発展に大きな影響を与え続けています。