熱帯低気圧や亜熱帯低気圧は、予報、警戒、警報に関する予報官と一般の人々の間のコミュニケーションを容易にするために、様々な警報センターによって名前が付けられている。これらの名称は、同じ流域で同時に発生する暴風雨が発生した場合の混乱を軽減することを目的としている。一般的に、33ノット(61km/h; 38mph)以上の持続的な風速を発生させる暴風雨が発生すると、どの流域で発生したかに応じて、あらかじめ定められたリストから順番に名前が割り当てられる。熱帯低気圧の中には西太平洋で名前が付けられるものもあるが、南半球で名前が付けられる前に、熱帯低気圧の中心付近でかなりの量の強風が発生していなければならない。

正式な命名が始まる前は、熱帯低気圧は場所や物体、またはそれらが発生した聖人の祭日にちなんで命名されていました。気象系に個人名を最初に使用したのは、一般的にクイーンズランド州政府の気象学者クレメント・ラグジュ(Clement Wragge)で、彼は1887年から1907年の間に気象系に名前を付けました。気象系に名前を付けるこのシステムは、第二次世界大戦の後半に西太平洋のために復活するまで、ラッゲが引退した後、数年間使用されなくなりました。その後、東太平洋、中央太平洋、西太平洋、南太平洋、オーストラリア地域、大西洋、インド洋などに正式な命名法と命名リストが導入され、開発されてきました。

由来と歴史(補足)

  • 初期の慣習: 初期には座標や発生地、聖人の名などで呼ばれていました。これらは記録上便利でしたが、複数の低気圧が同時に存在する場合に混乱を招くことがありました。
  • 個人名の導入: クレメント・ラグジュが個人名を用いたことが近代的な命名の出発点とされます。第二次世界大戦後、連合軍の気象担当者や各国気象機関の間で名前を使う慣行が広まりました。
  • 国際的管理: 現在ではWMO(世界気象機関)や地域の専門気象センター、各国の気象機関が協力して命名リストを管理しています。

命名の基準とルール

  • 強さの基準: 一般に、「熱帯低気圧」が持続風速で約33〜34ノット(約61〜63 km/h)以上の強風を伴う場合、定められたリストから名前が割り当てられます。ただし測定方法(1分平均風速か10分平均風速か)や流域により判定基準やタイミングに違いがあります。
  • 測定方法の違い: 例えば、米国のNHC(ハリケーンセンター)は1分平均風速を基準にしますが、日本気象庁(JMA)は10分平均を用いています。このため同じシステムでも機関によって「名前が付く/付かない」のタイミングが異なることがあります。
  • 地域ごとの管轄: 各流域にはRSMC(地域専門気象センター)やTCWC(熱帯低気圧警報センター)があり、命名リストの管理・運用を担います。

各地域の命名方法(世界一覧・代表例)

  • 大西洋: 北大西洋(大西洋)ではWMOの承認したアルファベット順のリスト(通常はQ, U, X, Y, Zを除く21の名前)を年ごとに使用し、このリストは通常6年ごとに再利用されます。非常に多くの発生で用意した通常リストを使い切った場合は、補助リストが使用されます(近年、ギリシャ文字の使用は中止され、代替の補助リストが導入されました)。
  • 東・中央太平洋: 東太平洋と中央太平洋でもそれぞれ定められた名前リストがあり、米国のNHCや中央太平洋ハリケーンセンター(CPHC)が運用します。中央太平洋ではハワイ語の名前が使われることもあります。
  • 西太平洋(日本・中国・フィリピン域など): 西北太平洋ではWMOの台風委員会により、加盟国・地域が提出した語(花、動物、地名などの名詞)からなる約140の名前リストが順次使用されます。ここでは各国の文化を反映した名前が多く見られます。加えて、フィリピン周辺ではPAGASAが独自に国内向けの名前を付けるため、国際名と国内名が同時に存在することがあります(例:国際名「Haiyan」=PAGASA名「Yolanda」)。
  • オーストラリア・南太平洋: オーストラリア気象局(BOM)や南太平洋のサービス機関が担当し、各国・地域で作成したリストが使われます。南半球では台風のシーズンが北半球と逆になります。
  • インド洋: 北インド洋(ベンガル湾・アラビア海)や南西インド洋でもWMO関連のパネルが命名リストを管理しています。北インド洋の命名は比較的最近(2000年代以降)に体系化されました。
  • その他: 各地域ごとにリストの回転頻度や名前の様式(個人名、地名、動植物名など)が異なります。

名前の引退と更新

  • 引退の理由: 死者や被害が甚大で、名前の使用が不適切と判断される場合、当該名前は引退(retire)され、以後そのリストでは使用されません。これは被災者や関係者への配慮のためです。
  • 代替名の選定: 引退された名前は加盟国・機関が新しい名前を提案して置き換えます。置換作業はWMOや地域の委員会で承認されます。
  • ローカルと国際の別: 同じ流域でも国際名と国内名が別々に管理されている場合、どちらのリストでも独自に名前が引退されることがあります(例:フィリピンのPAGASAが国内名を引退するが、国際リストは別の決定をする場合など)。

なぜ名前が重要か

  • 情報伝達の明確化: 数字や座標だけよりも覚えやすく、報道や避難情報での混乱を減らします。
  • 緊急対応の円滑化: 行政や救援機関が特定の暴風雨事象について効率よく連携できます。
  • 教育と記録: 歴史的な災害記録や教訓を共有する際にも名前は分かりやすい参照となります。

補足:呼称の二重表記など実務上のポイント

  • 同一の低気圧が複数の機関で異なる基準により扱われる場合、国際名と地域名が併存することがあります。報道や自治体の広報では両方の名を併記する例が多いです。
  • 数値予報や警報文書では名前だけでなく識別番号(例:01W、AL01など)が併用されることがあり、気象専門家の間では番号が参照される場合もあります。

このように、熱帯低気圧の命名は単なる呼び名以上に、警報伝達・被害軽減・国際協力の重要な仕組みとなっています。各流域ごとの具体的なリストや最新のルールは、WMOや該当する地域の気象機関の公式発表で確認することをおすすめします。