ポール・ローレンス・モドリッチ:DNAミスマッチ修復の先駆者・2015年ノーベル化学賞受賞者
ポール・ローレンス・モドリッチ — DNAミスマッチ修復の先駆者。2015年ノーベル化学賞受賞、がん研究や遺伝子安定性の基盤を築いた業績と軌跡を紹介。
Paul Lawrence Modrich(ポール・ローレンス・モドリッチ、1946年6月13日生まれ)は、アメリカの生化学者である。DNAミスマッチ修復の研究で知られる。アジズ・サンカー、トマス・リンダールとともに2015年ノーベル化学賞を受賞した。
1946年6月13日、ニューメキシコ州ラトンでLaurenceとMargaret Modrichの間に生まれた。弟にデイブがいる。父親は生物の教師で、1964年に卒業したラトン高校ではバスケットボール、フットボール、テニスのコーチをしていた。
略歴
モドリッチは若年時代から生物学や科学に強い関心を持ち、大学で分子生物学・生化学を学んだ後、研究者の道に進んだ。卒業後は大学教授として教育・研究活動を続け、特にDNA修復機構の分子レベルでの解明に専心した。長年にわたり米国の主要研究機関で教鞭を執り、研究室を率いて次世代の研究者を育てた。
研究と業績
モドリッチの代表的な業績は、DNAの「ミスマッチ修復(Mismatch Repair; MMR)」機構の分子機構を解明したことにある。ミスマッチ修復はDNA複製時に生じる誤った塩基対(ミスマッチ)を検出して修正するシステムで、遺伝情報の正確性とゲノムの安定性を維持する上で不可欠である。
- 認識と始動:モドリッチは、ミスマッチを認識するタンパク質群(細菌ではMutS、MutLなど)と、それらがどのようにして修復反応を開始するかを明らかにした。
- 鎖識別の仕組み:細菌では、新しく合成された鎖を既存鎖と区別するためにDNAのメチル化状態(DamメチラーゼによるGATC配列の半メチル化)が利用されることを示した。また、真核生物ではニック(切れ目)や複製フォークに伴う目印を利用するなど、鎖識別の方法が異なることを示唆した。
- in vitroでの再構成:彼の研究チームは、酵素や因子を用いてミスマッチ修復系を試験管内で再構成し、各因子の役割や作用順序を分子レベルで実証した。これにより修復経路の詳細が明確になった。
- 医学的意義:ミスマッチ修復の欠陥がヒトの遺伝性大腸癌(リンチ症候群、旧称HNPCC)やその他のがんの原因となることを関連づけ、基礎研究が臨床・診断・治療に与える影響を示した。
受賞・栄誉
2015年には、DNA修復の基礎メカニズムを解明した業績により、ノーベル化学賞をアジズ・サンカー、トマス・リンダールと共同で受賞した。ノーベル賞は、DNAの安定性を維持するための修復機構の重要性を国際的に認めさせる契機となった。
ほかにも多数の学会賞や栄誉(米国科学アカデミーなどの会員選出や研究助成・講演招待など)を受け、生命科学分野における主要な研究者の一人として国際的に高く評価されている。
影響と意義
モドリッチの研究は、基礎生物学だけでなくがん研究や遺伝診断、創薬研究にも大きな影響を与えた。ミスマッチ修復の理解が進んだことで、遺伝的に修復機能が欠損した患者のリスク評価や治療法の検討が可能になり、がん予防・治療の新たな方向性が拓かれた。
人物像
私生活では家族を大切にし、教育と地域活動に関心を持つ人物として知られている。出身地のラトンで育った経験や高校時代のスポーツ指導などが、彼の人間性や教育観に影響を与えたとされる。
総じて、ポール・ローレンス・モドリッチは、分子レベルでのDNA修復機構を解明したことで現代の分子生物学と医学に不可欠な知見を提供し、その成果は今日も幅広い研究領域で参照され続けている。
彼の作品
主に鎖指向性ミスマッチ修復を研究している。彼の研究室では、DNAミスマッチ修復が、DNAポリメラーゼからのエラーを防ぐコピーエディターとして機能することを実証した。Matthew Meselsonは以前、ミスマッチの認識の存在を提唱していた。モドリッチは、大腸菌におけるミスマッチ修復を研究するために生化学的な実験を行った。その後、彼らはヒトでミスマッチ修復に関連するタンパク質を探した。
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