アンドリュー・ウィントゥーン — スコットランド史の詩人・『オリギナール・クロニキル』著者(約1350–1425)

アンドリュー・ウィントゥーン—14世紀スコットランド詩人、伝説と史実を綴る『オリギナール・クロニキル』の魅力と歴史的意義を解説。

著者: Leandro Alegsa

アンドリュー・オブ・ウィントゥーン(Andrew de WyntounAndrew Wyntounとも)(約1350年頃 - 約1425年頃)は、スコットランドの中世末期の詩人・年代記作者で、聖アンデレ(St Andrew)のカノン(大聖堂の聖職者)を務め、レーベン湖(Loch Leven)にある聖サーフ・インチ(St Serf's Inch)の修道院でプリオール(前任者、prior)を務めたと伝えられています。WyntounはJohn Barbour(The Brus, 1375)と並んで、スコットランドの言語(中期スコット語、いわゆるスコッツ語)で歴史を書いた初期の重要な作家の一人です。

生涯(概略)

Wyntounの生涯についての詳細な記録は少ないものの、教会の要職にあった記述から教育を受けた聖職者であり、教会や修道院に伝わる史料や口承伝承に接する機会が多かったことがうかがえます。ローカルな教会組織の長としての立場から、王侯や聖人伝、地元の出来事に関する情報にアクセスでき、これが彼の歴史作品の基盤となりました。

主要作品:『スコットランドのオリギナル・クロニキル』

Wyntounの代表作は、長い韻文の年代記『Orygynale Cronykil of Scotland』(ここでは『スコットランドのオリギナル・クロニキル』と訳出)で、創世(神話的起源)から始まり、ジェームズ1世が治世した時期までを扱っています。作品は詩的な形式で書かれており、公式のラテン年表とは異なる口語的・物語的な語り口で、王の系譜、戦争、聖人伝、伝承的な起源譚などを織り交ぜながら記述しています。作品には彼はスコットランドの神話的な前史が含まれており、ブリトゥス(Brutus)伝説やケルト系の伝承など、当時の人々が信じた由来譚も多く取り上げられています。

作風と資料

  • 言語と形式:中期スコット語(初期スコッツ)の口語的表現を用いた韻文で記され、読み手に向けた物語性が強いのが特徴です。
  • 資料の利用:Wyntounはラテン語の年代記、口承伝承、教会記録など多様な情報源を参照しており、史実と伝説を合わせた総合的な歴史像を提示しています。
  • 目的と視点:王権や教会の正統性を示す意図がうかがわれる一方、地域伝承や民間信仰にも関心を示すため、歴史記述と文学的物語の境界に位置する作品となっています。

評価と影響

Wyntounは、John BarbourのThe Brusと並んで、中世スコットランド語文献の重要な担い手と見なされています。彼の年代記は後世の歴史家や年代記作者に参照され、スコットランドの民族的・政治的自意識の形成にも寄与しました。また、言語史・文学史の観点からは、中期スコット語の語彙や語法、史観を知るための主要資料とされています。

写本・刊行

『オリギナール・クロニキル』は中世の写本群として現存しており、近代に入ってから編集・翻刻・翻訳が行われています。現代の研究では、テキストの写本間差異や原典資料の特定、物語の伝承過程などが検討されています。日本語や英語での研究成果や注釈付き版を通じて、作品の史料的価値と文学的意義が広く理解されるようになりました。

現代における意義

Wyntounの作品は、史実と伝説を併せ持つ中世の歴史観を知る上で貴重です。史料批判的な読み方をすることで、当時の政治的主張や地域的伝承の成り立ち、言語変遷を同時に学べる資料として、歴史学・文学研究の双方で重視されています。

要点まとめ:

  • アンドリュー・オブ・ウィントゥーンは聖職者であり詩人、約1350–1425年頃に活動した。
  • 代表作は韻文による長大な年代記『Orygynale Cronykil of Scotland』で、創世からジェームズ1世時代までを扱う。
  • 中期スコット語で書かれ、史実と神話を折り混ぜた語り口が特徴で、スコットランド史・文学の重要資料である。


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