アナポリス(メリーランド州)—州都・海軍士官学校・チェサピーク湾の概要
アナポリス(メリーランド州)—州都でアメリカ海軍士官学校の本拠地。チェサピーク湾に臨むヨットの首都として歴史・観光・海洋保全の魅力を紹介。
概要
アナポリス(Annapolis)は、アメリカ合衆国のメリーランド州の州都である。2010年の国勢調査では人口は38,394人と報告された。市内にはアメリカ海軍士官が訓練を受けるアメリカ海軍士官学校(United States Naval Academy)があり、1845年の創立以来、地域の主要な教育機関かつ経済的な存在となっている。セント・ジョンズ・カレッジ(1696年に設立されたキング・ウィリアムの学校に起源を持つ)も市内にあり、伝統的なリベラルアーツ教育で知られる。
歴史的意義
アナポリスには州議事堂(Maryland State House)があり、この建物は現役の政府建物としてはアメリカで最も古いものの一つとされ、現在も州議会の会場として使われている。1783年にパリ条約が調印された後、アナポリスはアメリカ合衆国の臨時首都となり、1783年11月26日から1784年6月3日まで連邦政府の会議がここで行われた。特に1783年12月23日には、ジョージ・ワシントン将軍がここで大陸陸軍総司令官の職を辞任したことでも知られる。
海とレクリエーション
アナポリスは世界最大級の潮汐河口であるチェサピーク湾に面し、「アメリカのヨットの首都(America's Sailing Capital)」として長く親しまれている。毎年開催されるボートショーやセーリングのイベントには多くの愛好者と観光客が訪れる。海軍士官学校の行事や帆船のパレードも街の魅力の一部である。
チェサピーク湾の環境問題と保全活動
チェサピーク湾はその豊かな生態系で知られてきたが、過去数十年間にわたり水質の悪化や生息環境の劣化が進んでいる。原因としては都市化や農業・河川からの栄養塩(窒素・リン)の流入、沿岸開発、過剰漁獲などが挙げられる。そのため、カキ(oyster)、ストライプドバス(通称ロックフィッシュ、rockfish/striped bass)、ブルークラブ(blue crab)などの主要漁業資源は大幅に減少し、天然資源だけでの回復が困難な状況になった場所もある。こうしたため、人工的な再放流や養殖技術の導入、流域全体での水質改善といった保全活動が行われており、メリーランド州や連邦、地域団体によるチェサピーク湾プログラム(Chesapeake Bay Program)などで協働している。メリーランド大学の研究者たちは、ブルークラブの養殖や再放流技術の開発など、資源回復に向けた研究を進めている。
外来種と生態系の変化
湾岸やその周辺では、在来の植物・動物が環境変化に弱まる一方で、より適応力のある侵略的な外来種が繁茂する例が増えている。たとえばフラグマイト(Phragmites、ヨシ類)、チャイニーズミトンクラブ(Chinese mitten crab、チュウゴクケガニ)、イングリッシュアイビー(ツタ類)などに加え、ムートスワンは、この人為的に変化した環境で繁栄している外来種の一例である。これらは在来種の生息地を圧迫したり、水域の機能を変えたりするため、管理・駆除とともに生態系の回復が課題となっている。
交通・アクセス
アナポリスは大都市圏に近接しているものの、鉄道による定期旅客線のサービスは市内に直接ないため、公共交通ではバスや自動車が主要な移動手段となっている。最寄りの鉄道駅や大規模空港はボルチモアやワシントンD.C.方面にあり、その間をバスや車で結ぶルートが一般的である。
観光と地域経済
観光、教育、海軍関連施設が地域経済の重要な柱で、歴史的建造物、帆船、シーフードを楽しめるレストランやマリーナが観光客を引きつけている。また、地元の漁業やマリーナ産業、サービス業が雇用を支えており、環境保全と経済活動の両立が引き続きの課題となっている。
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