聖ピオ十世会(SSPX)とは:伝統主義カトリックの歴史・破門と和解
聖ピオ10世協会(SSPX)の成立から破門・和解まで、伝統主義カトリックの歴史と論争を詳しく解説。
聖ピオ10世協会は、伝統主義的な考えを持つ司祭の友愛団体です。フランス人司祭のマルセル・ルフェーブルは、第二バチカン公会議がこれらの伝統の多くを放棄したと考えたため、1970年代にこの会を設立しました。第二バチカン公会議が導入した、他の宗教の指導者との対話や、異なるキリスト教グループの共同体的関係といった多くの変化に反対しています。1975年以降、同会とローマ教皇庁との関係は緊張状態が続き、正式な典礼上・教会法上の取り扱いをめぐる論争や制裁が生じました。1988年にルフェーブルは新しい司教を奉献しましたが、これは教会法上の重大な手続き違反と見なされ、奉献者と奉献された者に対してローマ教皇庁は破門(免罰)を宣言しました。教皇ベネディクト16世は、関係者全員が教皇がカトリック教会の最高権威であることを確認した後、2009年1月に当該破門を取り消しました。
起源と主要な教義的立場
聖ピオ10世協会は、伝統的なラテン典礼(いわゆるトリデンティン典礼)を堅持し、1960年代後半から1970年代にかけての第二バチカン公会議の教会改革(典礼の改正、教会と世俗社会・他宗教との関係見直し、宗教の自由に関する教義的解釈など)に強く異議を唱えます。典礼の保存だけでなく、教義理解や教会の自己認識(教会観)においても、従来の立場を維持することを重視します。
1988年の叙階と破門の経緯
1988年6月、マルセル・ルフェーブルはローマ教皇庁の許可を得ずに複数の司教を叙階しました。この行為は教会法上で重大な許可違反とされ、ローマは叙階に関与した司祭たちに対して破門を宣告しました。破門は同会とバチカンの決定的な亀裂を象徴する出来事となり、その後の数十年間にわたり、教会法上の地位や司牧権の行使をめぐって継続的な議論が続きました。
和解への取り組みと現在の状況
2000年代以降、ローマと聖ピオ10世協会の間では対話が続けられてきました。教皇ベネディクト16世による2009年の破門取り消しは象徴的な和解の一歩でしたが、これは完全な教会法上の一体化や教義上の合意を意味するものではありません。以降も教義上の懸案(例えば教会の教導権、宗教の自由、エキュメニズムに関する見解)を中心に協議が続いています。
近年では、ローマ側が限定的な実務上の譲歩を行うこともあり、たとえば一時的・限定的に聖務(告解の授け方、婚姻の扱いなど)に関する便宜を認める動きが見られました。しかし、完全な正規の地位回復(教会法上の完全な復帰)には至っておらず、現在も「不規則な」または「特別な」状況と表現されることが多いです。
組織、活動、影響力
聖ピオ10世協会は世界各地に拠点を持ち、神学校、礼拝所、信徒の集会を運営しています。代表的な神学校としてはスイスのエコン(Écône)神学校があり、多くの伝統主義派司祭や信徒がここで神学と聖務の訓練を受けます。組織は修道会や教区とは異なる独自の運営形態をとり、ある地域では強い支持基盤を持つ一方、ローマ教会内の正式な教区運営とは区別されます。
批判と論争点
- 教義・典礼に関する硬直的な姿勢が近代の社会や教会改革と対立していると批判されることがある。
- 1988年の叙階に伴う破門、及びその後の和解過程は、教会内外での評価を二分している。
- 一部の構成員や過去の発言に関連して、反ユダヤ主義や差別的発言を巡る論争が生じたことがある(代表的人物の発言が問題視された事例など)。このため、組織全体のイメージに影を落とした期間もあった。
今後の展望
聖ピオ10世協会とローマ教皇庁との間の対話は断続的に続いており、和解を目指す動きと、教義上の明確な合意を求めるローマ側の姿勢が並行しています。完全な正規化には教義的な問題の解決と教会法上の手続きが必要です。信徒レベルでは伝統的な典礼を求める動きと、より広いカトリック共同体との関係改善を望む声が混在しており、今後も注目されるテーマです。
参考:組織の成立背景、1988年の叙階と破門、2009年の破門取り消しなどは、聖ピオ10世協会を理解する上で重要な節目となっています。教義と典礼を巡る議論はカトリック教会内部の広範な課題とも絡んでいるため、今後も継続的に動向を観察する必要があります。
質問と回答
Q: 聖ピオ十世協会とは何ですか。A: 聖ピオ十世協会は、1970年代にマルセル・ルフェーブルによって設立された、伝統主義的な考えを持つ司祭からなるカトリックの友愛団体です。
Q: なぜ聖ピオ10世会は設立されたのですか?
A: マルセル・ルフェーブルは、第二バチカン公会議によって多くの伝統が放棄されたと考え、聖ピオ10世会を設立しました。
Q: 聖ピオ十会は何に反対しているのですか?
A: 聖ピオ10世会は、第二バチカン公会議によって導入された、他宗教の指導者との対話、異なるキリスト教グループの共同体関係などの変化に反対しています。
Q: サン・ピオ10世の公認はどうなったのですか?
A: 1975年以来、サン・ピオ10世会はもはや正典の委任を受けていません。
Q: なぜ1988年に聖ピオ10世会の中で破門があったのですか?
A: 協会は新しい司教を奉献しましたが、そのため、奉献した者と、典礼法によって奉献された者が破門されました。
Q: サンピオ10世協会内の破門はいつ取り消されたのですか?
A: 教皇ベネディクト16世が2000年代に破門を無効にしました。
Q: 2020年の聖ピオ10世の司祭と神学生は何人ですか?
A: 2020年現在、680人の司祭と217人の神学生がいます。
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