ブルセラ症(マルタ熱)とは|人獣共通感染症の原因・感染経路・症状・治療
ブルセラ症(マルタ熱)の原因・感染経路・症状・治療をわかりやすく解説。動物由来の感染リスクと予防法、早期発見のポイントを掲載。
ブルセラ症は、ブルセラ属の細菌によって引き起こされる病気です。バン病、クリミア熱、ジブラルタル熱、マルタ熱、地中海熱、ロック熱、アンデュラント熱などとも呼ばれます。かつては人から人へ容易にうつると考えられていましたが、実際には主に動物から人へ感染する人獣共通感染症であり、人から人への感染は非常にまれです(特殊な状況を除く)。
原因
原因はブルセラ属の細菌で、代表的なものに Brucella melitensis、B. abortus、B. suis、B. canis などがあります。これらは主に家畜(牛、羊、山羊、豚、犬など)に感染しており、人はこれら動物との接触や汚染物を介して感染します。
感染経路
ブルセラ症は人獣共通感染症の一つで、動物から人へと感染する病気です。主な感染経路は次のとおりです。
- 加熱処理されていない牛乳や乳製品の摂取(牛乳など)
- 感染動物の肉の取り扱いや未加熱の肉の摂食(例:病気の動物の肉を食べる)
- 感染動物の分泌物や流産胎盤などの汚染物に直接触れること(農場や獣医での曝露)
- 感染動物の血液や組織のエアロゾル吸入(解剖や屠畜作業での吸入)
まれに、母乳や性的接触、輸血や臓器移植での感染が報告されることがありますが、一般的な生活での人から人への感染は稀です。
主な症状
潜伏期間は数日〜数週間、場合によっては数か月に及ぶことがあります。症状は急性期、持続性(慢性)で異なり、非特異的な全身症状が多いのが特徴です。
- 発熱(波状熱:一度下がって再び上がることがある)
- 寝汗や特に夜間の多汗
- 倦怠感、食欲不振、体重減少
- 関節痛、筋肉痛、腰痛
- 頭痛、咳、腹痛、肝脾腫(肝臓や脾臓の腫れ)
重症化すると心内膜炎(心臓弁の感染)、脊椎炎、神経症状(神経系の合併症)などを引き起こすことがあります。慢性化すると疲労感や関節症状が長引き、生活の質が低下します。
診断
診断は臨床症状と疫学的情報(感染動物との接触歴、未殺菌乳の飲用歴など)を基に行い、確定診断には以下が用いられます。
- 血液培養:病原体の分離が確定診断となる(ただし陽性率は状態により変動)
- 血清学的検査:抗体検査(SAT、ELISAなど)で感染を示唆
- 遺伝子検査(PCR):早期診断に有用な場合がある
注意点として、抗生物質投与後は培養の感度が下がるため、検体採取は可能な限り治療開始前に行うことが望ましいです。
治療
ブルセラ症は細菌性の感染症であり、適切な抗生物質による治療が必要です。再発を防ぐために長期間の併用療法が推奨されます。一般的な治療例:
- ドキシサイクリンとリファンピシンの併用(通常6週間以上)
- 重症例や合併症ではドキシサイクリン+ストレプトマイシン(筋注)などの組み合わせを用いる場合がある
治療期間は症状や合併症の有無により延長されることがあり、心内膜炎など重大な合併症がある場合は外科的処置や入院治療が必要になることがあります。
予防と対策
- 生乳や未殺菌の乳製品は加熱(パスチャライズ)して摂取する。
- 家畜やペット(特に犬)との接触時は手袋や防護具を使用し、獣医や屠畜作業者は適切な衛生管理を徹底する。
- 家畜のワクチン接種や感染動物の管理(淘汰、隔離)により家畜由来の感染リスクを下げる。
- 旅行先での食事管理や現地での生乳摂取を避ける。
合併症・予後
適切に治療すれば多くは回復しますが、治療が遅れると慢性化や再発、心内膜炎、脊椎炎、神経系合併症など重篤な合併症を残すことがあります。早期診断と十分な治療期間が重要です。
流行地域と歴史
ブルセラ症は世界的に分布しますが、衛生管理や家畜の予防接種が行き届いた国では発生が減少しています。地中海沿岸、中東、ラテンアメリカ、アフリカの一部などで流行が続く地域があります。歴史的には、この病気は最初“マルタ熱”と呼ばれ、英国の軍医がクリミア戦争(1850年代)の際にマルタ島で経験した発熱性疾患として知られるようになりました。ブルセラ症の原因となる細菌を最初に発見したのは、デビッド・ブルース博士です。
受診の目安
発熱、持続する倦怠感、夜間多汗、関節痛などがあり、特に未殺菌乳を飲んだ、家畜や屠畜に関わる仕事・旅行歴がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。疑いがある場合は検査(血液培養や血清検査)を行い、必要に応じて専門医(感染症内科、呼吸器内科、循環器内科など)と連携した治療が行われます。
質問と回答
Q:ブルセラ症とは何ですか?
A:ブルセラ病とは、ブルセラ属の細菌によって引き起こされる病気です。
Q: ブルセラ症の他の呼び名は?
A:ブルセラ症は、バング病、クリミア熱、ジブラルタル熱、マルタ熱、地中海熱、ロック熱、ウンデュラント熱とも呼ばれています。
Q: ブルセラ病はどのように感染するのですか?
A: ブルセラ病は動物から人へ感染します。多くの場合、殺菌されていないミルクを飲んだり、病気の動物の肉を食べたりすることで感染します。
Q: ブルセラ病は感染するのですか?
A: はい、ブルセラ病は非常に感染力が強く、人から人へ容易に感染します。
Q: ヒトはブルセラ症を他のヒトにうつすことがありますか?
A:まれですが、ヒトが他のヒトにブルセラ症を感染させることがあります。
Q:ブルセラ病の原因菌は誰が発見したのですか?
A:ブルセラ病の原因菌を最初に発見したのは、デビッド・ブルース博士です。
Q: ブルセラ病はどこで発見されたのですか?
A:ブルセラ病は、1850年代のクリミア戦争中のマルタ島で、軍人のイギリス人医師によって初めて発見されました。
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