ジブラルタルは、イギリス海外領土です。つまり、イギリスの国王や女王を共有し、イギリス軍の保護を受けています。面積は約6.7平方キロメートル、人口は約3万2千人で、住民は一般にジブラルタル人と呼ばれます。公用語は英語ですが、スペイン語や地元の方言もよく使われ、多文化が色濃い社会です。通貨はジブラルタル・ポンド(英ポンドと等価)を発行しています。

地理と戦略的位置

ジブラルタルは、ヨーロッパ南西端に位置し、地中海の入り口にあるため戦略的に重要です。地中海と大西洋をつなぐ海峡(通称ジブラルタル海峡)は最も狭い所でおよそ14キロあり、このためジブラルタルを支配することで地中海へ出入する船舶を監視・制御することが可能になります。ジブラルタルとスペイン本土との間には陸上国境があり、空港の滑走路が国境道路を横切るなど特殊な地形・交通事情があります。

歴史の概略

ジブラルタルは古代から交易・軍事上の要衝でした。名称はアラブの将軍タリク(Tariq ibn Ziyad)に由来する「ジャバル・タリク(タリクの山)」とされ、711年にイスラム勢力が上陸した記録があります。以後、ムーア人、スペイン王国などの支配を経て、1704年に英蘭連合艦隊が占領、1713年のユトレヒト条約で正式にイギリス領として認められました(スペインは領有権を巡り現在も主張を続けています)。18世紀後半には大包囲戦(Great Siege:1779–1783)などの戦闘を経験し、第二次世界大戦では軍事拠点として要員・住民の一時避難が行われました。近年ではEU離脱(Brexit)の影響でスペインやEUとの国境・通商関係が注目されています。

ザ・ロック(ジブラルタルの岩)

ジブラルタルで最も象徴的なのは、海からそびえる高さ約426メートルの石灰岩の岩山、通称「ジブラルタルの岩」です。岩は石灰岩から成り、長年の浸食で洞窟や切り立った崖が発達しています。岩上は自然保護区に指定されており、観光資源としても重要です。主な見どころには、自然の鍾乳洞であるセントマイケルズ・ケーブ(St. Michael's Cave)、18世紀から続く大包囲戦のためのトンネルや第二次大戦中の防衛用トンネル群、そしてケーブルカーで上ることができる展望台などがあります。晴れた日にはアフリカ大陸を望むこともできます。

バーバリー猿(バーバリーマカク)

ジブラルタルには、ヨーロッパで唯一の野生のサル、尾のないマカク(学名 Macaca sylvanus)、一般にバーバリー猿(バーバリーマカク)が生息しています。個体数は季節や調査によって変動しますが、数百頭規模とされ、観光の目玉にもなっています。起源については、ムーア人や後の時代に人為的に持ち込まれた可能性が高いとされます。地元当局は保護管理を行っており、観光客に対しては餌付けや接触の禁止、持ち物管理など安全上の注意が呼びかけられています。伝説的には「猿がいなくなると英国の支配も終わる」といった言い伝えがありますが、これは観光文化の一部として語られることが多いです。

現代の社会と経済

現代のジブラルタルは軍事拠点の色合いに加え、観光、金融サービス、オンラインギャンブル、船舶登録(船籍)など多様な経済活動を行っています。税制や規制面での優遇が企業誘致に寄与しています。住民は英国との密接な関係を重視する傾向が強く、2016年のEU離脱の国民投票ではジブラルタルでは圧倒的に残留に賛成しましたが、その後の交渉で英国本国と同様にEUとの関係を新たに調整しています。

訪問時のポイント

  • 観光ではザ・ロック、セントマイケルズ・ケーブ、グレート・シーッジ・トンネル(Great Siege Tunnels)、旧市街のショップや博物館が主要なスポットです。
  • バーバリー猿に触れたり餌を与えたりしないでください。猿は観光客の荷物や食べ物を狙うことがあり、被害が出ています。
  • 国境を越える際はパスポートが必要で、混雑することがあるため時間に余裕を持って行動してください。
  • 小さな領域に多くの観光資源が集中しているため、歩きやすい靴と水分補給の準備をおすすめします。

ジブラルタルはその小さな領土に歴史、自然、戦略的価値が凝縮された場所です。短時間の観光でも多くの見どころが楽しめる一方、スペインとの国境問題やEUとの関係など国際政治の要素も色濃く残る地域です。