平行光(コリメート光)とは:定義・回折の制約とコリメーターの役割
平行光(コリメート光)の定義、回折がもたらす制約、現実との違いとコリメーターの仕組みを図解で分かりやすく解説。
平行光(コリメート光)とは、光線が平行になっている光のことを指します。理想的には光線が互いにまったく交わらず、進行方向に沿って一定の間隔を保ちながら進むため、距離が増しても広がらない光です。コリメートという語は、英語の“collimate”(整列させる)に由来し、コリニア(同一直線上に並ぶ)という概念と関係があります。
理論的な見方(波面と平面波)
波の観点では、完全な平行光は位相面(波面)が無限に平らな平面波に相当します。平面波は空間全体で一様な振幅・位相を持つ数学的理想であり、物理的には無限のエネルギーを要するため現実には存在しません。実際の光は有限の開口(ビーム幅)を持つため、波動光学で扱うとその開口に対応する波面から回折が生じ、わずかに広がります。
回折による制約(なぜ完全な平行光は作れないか)
有限の開口を通る波は回折によって拡がり、遠方ではフラウンホーファー回折に従って角度的な広がり(ダイバージェンス)を持ちます。おおまかな目安として、中心的な広がりの角度θは波長λと開口径Dの比で与えられます:
θ ≈ λ / D
例えば波長λ = 500 nm、開口D = 1 cmのとき、θ ≈ 5×10^−5 rad(約10.3秒角)になります。開口を大きくすればダイバージェンスは小さくなりますが、無限に小さくすることはできません。
現実の光ビーム:ガウシアンビームとビーム品質
レーザー光など実際のビームは理想の平面波ではなく、しばしばガウシアン強度分布を持ちます。ビームにはビームウエスト(最小径)やその位置が存在し、そこからの広がりは理論的に決まっています。ビーム品質を表すパラメータとしてM^2(エムスクエア)があります。M^2=1が理想的な単一モードガウシアンビームで、値が大きくなるほど実際のビームは理想から乖離し、同じ開口サイズでより早く広がります。
コリメーターの役割と種類
コリメーターは光源から出る光を「おおまかに平行にする」ための光学素子や装置です。完全な平行にはできませんが、用途上十分に小さなダイバージェンスに整えることができます。代表的な方式:
- レンズ(コリメーティングレンズ)— 光源や光ファイバーの出射面をレンズの焦点に置くことで平行光に近づける。
- パラボラ鏡/放物面反射鏡—遠方からの平行光を集める、あるいは点光源を平行光に変換するのに有効(非色収差)。
- ピンホールやスリットを用いた空間フィルタ—波面の高周波ノイズを除去し、より整ったビームを得るが出力を減らす。
- 光ファイバー(特に単一モードファイバー)— 出射はほぼガウシアンで、その後レンズでコリメートすることが多い。
- アスフェリックレンズやオプティカルウィーブなど高性能コリメータ—特定用途で低ダイバージェンスを達成。
実用上の注意と応用例
完全な平行光は理想なので、設計では「どの程度まで平行であれば十分か」を基準にします。主な応用:
- 望遠鏡や顕微鏡:入射光を平行に近づけて対物レンズや接眼レンズで像を形成する。
- レーザー加工、光通信、距離測定(LIDAR):小さなダイバージェンスが必要。
- 光学測定(干渉計、分光器):平行光で精密な測定が可能になる。
- 照明設計(スポットライト、プロジェクタ):指向性を制御するためのコリメーション。
ダイバージェンスの測定と評価指標
ビームの広がりは角度(mrad や deg)で表されます。実務では次のような指標を使います:
- 半角ダイバージェンス(1/e^2点やFWHMで定義)
- ビーム径(2wや直径の定義に注意)
- M^2(ビーム品質)— 理想ビームに対する広がりの倍率を示す。
まとめ
平行光(コリメート光)は、光線がほぼ平行に進む光を指す概念で、波動性と有限開口による回折のため完全には実現できません。コリメーターは光を実用上平行に近づけるための装置であり、用途に応じてレンズ、鏡、ピンホール、光ファイバーなどが用いられます。設計では波長、開口径、ビーム品質(M^2)などを考慮して、必要なダイバージェンスを達成することが重要です。

下の写真では、光がコリメートされています
語源
コリメート」という言葉は、ラテン語の動詞「collimare」に由来し、「collineare」の誤読「直線に向ける」に由来する。
質問と回答
Q: 平行光とは何ですか?
A: 平行光とは、光線が互いに平行である光のことです。
Q:コリニアとコリメートという言葉の関係は?
A: 平行光線の光線はすべて互いに平行なので、collimatedはcollinearと関係があります。
Q: コリメートされた光は伝播するのですか?
A: はい、コリメートされた光はゆっくりと広がります。
Q: 回折とは何ですか?
A: 回折とは、波が開口部や物体の縁を伝わり、曲がって広がる現象のことです。
Q: 誰でも完全に平行な光線を作ることができますか?
A: できません。回折現象により、完全な平行光は作れません。
Q: コリメーターとは何ですか?
A: コリメーターは粒子や波のビームを絞る装置です。
Q: コリメーターはどのようにして平行光を作るのですか?
A: コリメータは粒子や波のビームを絞り、光をおおよそ平行にします。
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