拡張と除去(D&E)とは:妊娠中絶・流産後の手順とリスク
拡張と除去(D&E)の手順・麻酔・合併症リスク・回復や注意点を妊娠中絶・流産後の視点でわかりやすく解説。安全性や術後ケアも網羅。
拡張と除去(D&E)は、妊娠中絶や流産後の処置として行われる外科的手技の一つです。一般的に第2期(妊娠12週以降)に行われますが、実施する週数の範囲は医療機関や法的規定により異なります。D&Eは、妊娠組織や流産後に残った組織を安全に取り除き、子宮が完全に空になっていることを確認するために用いられます。子宮内に組織が残っていると、感染症にかかるリスクや出血が続く可能性があります。
手順の流れ
D&Eは大きく分けて「子宮頸管の拡張」と「内容物の除去」の2段階で行われます。
1. 子宮頸管の拡張(準備)
通常、処置の前日か数時間前に子宮頸部を徐々に拡張します。方法は:
- 吸水性のディレーター(ラミナリアなど)や合成ディレーターを頸管内に挿入して時間をかけて拡張する
- プロスタグランジンやミソプロストールなどの薬剤で頸管を柔らかくする(施設によって併用)
- 機械的な拡張器具で段階的に広げる
頸管の拡張は、鉗子(手術用トング)やキュレット(子宮の裏地を削り取る器具)などを安全に入れるために必要です。
2. 内容物の除去(処置本体)
処置当日、鎮痛や不安軽減のために局所麻酔や静脈内鎮静、場合により全身麻酔が行われます。その後、医師はカニューレ(細いチューブ)を膣から子宮内に挿入し、ポンプで真空(吸引)を作って胎児や胎盤などの組織を吸引除去します。大きな組織や付着している部分は鉗子でつまみ出し、必要に応じてキュレットで子宮内膜を整えることもあります。処置後に再度吸引して子宮内が空であることを確認します。処置自体は短時間(通常10~20分程度)で終わることが多いですが、前後の準備・回復時間を含めると滞在時間は長くなります。
妊娠初期との違い
妊娠初期(概ね~妊娠12週)では、頸管の拡張を伴わない真空吸引(吸引法)がよく行われます。妊娠週数が進むほど胎児や胎盤が大きく、胎盤組織が子宮に強く付着するため、D&Eのように頸管拡張と鉗子操作が必要になることが多くなります。
麻酔・痛み管理
痛み対策は施設や患者の希望に応じて選ばれます。局所麻酔と坐薬や経静脈鎮痛で対応することもあれば、短時間の全身麻酔を行うこともあります。処置中の痛みや不快感、術後の腹痛は個人差がありますが、鎮痛薬で管理されます。
合併症とリスク(主なもの)
- 出血:大多数は軽度〜中等度で自己停止しますが、まれに大量出血で追加処置や輸血が必要になる場合があります。
- 感染:子宮内感染を起こすことがあり、発熱や悪臭のある分泌物、強い腹痛があれば抗生物質が必要です。
医療機関ではリスク低減のために予防的に抗生物質を投与することがあります。 - 子宮穿孔(穿通):器具により子宮壁を傷つけることがごくまれにあり、場合によっては追加手術が必要です。
- 頸管損傷や頸管不全:頸管が傷つくことがあり、将来の妊娠に影響することは稀ですが考慮されます。
- 残存組織(不全流産):十分に除去されず、再処置が必要になる場合があります。
- 稀な長期合併症:子宮内癒着(アッシャーマン症候群)などが生じることがありますが頻度は低いです。
重大な合併症は比較的まれで、多くの報告で重篤な合併症率は1%未満とされていますが、個々の状況や施設によって異なります。
検査・予防措置
- 処置前に血液検査や超音波検査を行い、妊娠週数、出血量、感染の有無を確認します。
- Rh陰性の女性には、妊娠組織に曝露された場合の抗D免疫グロブリン(Rhogam)投与が推奨されることがあります。
- 抗生物質の予防投与や術後に必要な抗生物質を処方されることがあります。
回復とアフターケア
多くの場合、入院せず日帰りで帰宅できますが、体調に応じて観察のために数時間~一晩の滞在が必要なこともあります。術後の一般的な注意点:
- 出血やおりものは数日~数週間続くことがある(大量の出血や塊が出る場合は受診)。
- 過度の安静は不要ですが、数日間は重い荷物を持つ運動や激しい運動、性行為、タンポンの使用は避けるのが一般的です。
- 発熱(通常38℃以上)、強い腹痛、悪臭のある分泌物、短時間での大量出血(1時間に1枚以上の多量な出血が続くなど)があれば直ちに医療機関を受診してください。
- フォローアップ診察(通常1~2週間後)や、必要に応じて超音波検査で残存組織の有無を確認します。
- 避妊については、希望すれば術後すぐに開始できる方法が多くあります。次回の妊娠計画について担当医と相談してください。
代替法と相談
妊娠の週数や個々の健康状態によっては、以下の代替や選択肢が検討されます:
- 薬による中絶(メフェプリストン+ミソプロストール)— 主に妊娠初期に使用されます。
- 真空吸引(吸引法)— 妊娠第1期やごく早期の第2期でよく行われます。
- 誘発分娩による中絶— 後期妊娠での選択肢となることがあります。
- 流産後の経過観察(期待的管理)— 出血や感染の徴候がなく自然排出が期待できる場合に選択されることがあります。
どの方法にも利点とリスクがあるため、担当医と十分に相談し、同意に基づいて最適な方法を選ぶことが重要です。また、身体的な安全性だけでなく心理的なサポートも重要です。必要ならカウンセリングや支援グループの紹介を受けてください。
この説明は一般的な情報です。実際の手術方法や注意点、法的規制は国・地域・医療機関によって異なりますので、具体的な疑問や個別の事情については担当の医師や医療機関に必ず相談してください。
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質問と回答
Q: 拡張と脱出とは何ですか?
A: 拡張と排出(あるいは「D&E」)は、女性が妊娠第2期(妊娠12-32週)のときに中絶の方法として用いることができる医療処置です。
Q:この方法には他にどのような目的がありますか?
A:D&Eは、女性が流産した後、子宮が完全に空になったことを確認するために用いることもできます。
Q: なぜ流産後に子宮を空にすることが重要なのですか?
A: 流産後に子宮内に組織が残っていると、感染のリスクが高まる可能性があります。
Q : この手術は妊娠のどの時期から受けられますか?
A : この手術は通常、妊娠12週から32週の間に行われます。
Q:この方法は中絶にのみ使用されるのですか?
A:いいえ、この方法は流産の後にも使用されることがあります。
Q:この手術にリスクはありますか?
A:はい。他の医療処置と同様に、拡張と排出には出血や感染などのリスクが伴います。
Q: この種の医療処置は誰が行うのですか?
A: この種の医療処置は通常、経験豊富な医師または医療従事者によって行われます。
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