流産とは、子宮内の胚や胎児が、母体外で自力で生きていける年齢になる前に自然死することです。流産は医学的には自然流産と呼ばれます。(「自然」とは、人が予期していなかったことが起こるという意味です。中絶」とは、出産前に妊娠が早期に終了することです)。
妊娠がわかっている女性のうち、約15~20%が流産しています。(つまり、妊娠を知っている女性の最大5人に1人が流産していることになります)。人間の妊娠初期に起こる合併症(重大な問題)の中で最も多いものです。
原因(主なもの)
- 染色体異常:早期流産の割合で最も多く、胚の遺伝情報に異常があると正常な発育ができません。
- 母体側の問題:子宮奇形、子宮筋腫の位置や大きさ、子宮内膜ポリープ、頸管無力症など。
- 内分泌・代謝異常:甲状腺機能異常、糖尿病、ホルモン不均衡(黄体機能不全など)。
- 免疫学的要因:抗リン脂質抗体症候群などの自己免疫疾患が関与することがあります。
- 感染:まれですが、トキソプラズマ、サイトメガロウイルス、風疹など一部の感染症が影響することがあります。
- 環境・生活習慣:喫煙、過度の飲酒、薬物乱用、高用量カフェイン、極端な体重(やせすぎ・肥満)など。
- 年齢:母親の年齢が上がるほどリスクが増加します(特に35歳以上で上昇、40歳以上でさらに高くなる)。
症状(よく見られる兆候)
- 性器出血(少量〜大量)
- 下腹部の痛みやけいれん
- 組織や血のかたまりが出る(胎嚢など)
- 妊娠症状の消失(つわりの軽減など)
- しかし、無症状で超音波検査で発見される「稽留流産(けいりゅうりゅうざん)」もあります。
流産の種類(簡潔に)
- 切迫流産(threatened):出血はあるが胎児はまだ確認できる場合。
- 進行流産(inevitable/inevitable):流産が進行している状態で、完全に妊娠を維持できない。
- 不全流産(incomplete):一部の組織がまだ残っている状態。
- 完全流産(complete):子宮内からすべての組織が排出された状態。
- 稽留流産(missed):胎児心拍が停止しているが自然排出が起きていない状態。
- 反復流産(recurrent):短期間に繰り返す流産。基準は医療機関により2回以上または3回以上とする場合があります。原因精査が推奨されます。
診断と検査
- 超音波検査(経膣超音波が早期診断に有用)で胎嚢や胎芽、心拍の有無を確認します。
- 血液検査(妊娠ホルモンhCGの推移、貧血の有無、感染・甲状腺機能などの精査)。
- 必要に応じて子宮内容物の病理検査や染色体検査、免疫・血液検査を行うことがあります(特に反復流産の場合)。
妊娠初期に起きた場合の対応(受診の目安と治療)
- 出血や強い腹痛がある場合:すぐに産婦人科を受診してください。大量出血、めまい、意識障害があれば救急を呼びます。
- 診断後の治療選択肢:
- 自然経過観察(期待的管理):自然に排出されることを待つ方法。
- 薬物療法(例:子宮収縮を促す薬)での処置。
- 外科的処置(掻爬術または吸引)による除去:必要に応じて行われます。
- Rh陰性の方は流産後に抗D免疫グロブリン(Rhogam)の投与が必要な場合があります(医師の判断に従ってください)。
- 感染や出血が続く場合は速やかに治療が必要です。処置後も発熱・悪臭のある分泌物・持続する激しい痛みがあるときは再受診を。
予防と妊娠前後にできる対策
- 妊娠前の健康管理:持病(糖尿病、甲状腺疾患、血液凝固異常など)をコントロールし、妊娠前に医師と相談すること。
- 葉酸の補給:神経管閉鎖障害の予防だけでなく、妊娠前からの葉酸摂取は推奨されます。
- 生活習慣の改善:禁煙、節酒、適正体重の維持、バランスの良い食事、過度なストレスや過労を避ける。
- 感染予防:生肉や非加熱の食品を避ける(リステリアやトキソプラズマ対策)、予防接種(風疹など)を事前に確認。
- 薬剤管理:妊娠中に服用している薬は事前に医師と相談し、不要な薬は避ける。
精神的ケアとサポート
流産は身体的だけでなく心理的な負担も大きい出来事です。悲しみや喪失感、不安が続くのは自然な反応です。必要に応じて家族やパートナー、医療者、カウンセラーによるサポートを受けましょう。支援グループや専門の相談窓口を紹介してもらえることもあります。
まとめ(ポイント)
- 流産は妊娠が確認されている女性の約15〜20%で起こりますが、原因はさまざまです。
- 出血や腹痛があれば早めに受診し、超音波や血液検査で状態を確認します。
- 予防には妊娠前からの健康管理・生活習慣改善が有効です。
- 流産後は身体の治療だけでなく心理的ケアも重要です。疑問や不安は遠慮せず医療機関に相談してください。

