概要

ティック付きエル(大文字 Ҏ、小文字 ҏ;斜体: Ҏ ҏ)は、キルディン・サーミ語の正書法で特に用いられるキリル文字である。これはキリル文字のエル(Er)を変形した文字で、ロシア語や他のスラヴ語で使われる通常のエルとは音韻的に異なる、r系の音を示す。

特徴と用法

この字形は、基本となるキリル文字エルの形に小さな付加記号、つまり「ティック」を加えて作られ、別の発音を示す。キルディン・サーミ語の正書法では、通常のエルと対立し、語の音素体系の中で独立した r に似た子音を表す。具体的な音価は方言によって異なりうるが、話者や読者にとっては標準的な r とは別の音として扱われる。

歴史と標準化

ティック付きエルのような文字は、話者や言語学者がキリル文字を北ユーラシアの非スラヴ系言語の表記に適応させる過程で生まれた。20世紀のあいだにキルディン・サーミ語の正書法が整備・改訂される中で、ロシア語にはない音を表すために、いくつかのキリル文字が修正されたり新たに作られたりした。ティック付きエルもその一つであり、一般的なキリル文字の用法ではなく、キルディン・サーミ語のアルファベットにのみ現れる専門的な文字である。

符号化、フォント、入力

この文字は、キリル拡張に用いられる現代の文字コード体系に含まれているため、拡張キリル文字に対応した適切なフォントがあればコンピュータ上で表示できる。実際にデジタル文書で使うには、サーミ語固有の文字ブロックを扱えるフォントや入力方式が必要であり、対応していない場合は欠落グリフの記号として表示されることがある。

関連文字と区別

  • ティック付きエルは、さまざまなコーカサス語やウラル語の正書法に見られる他の修正エル文字と混同してはならない。それぞれの修正は、通常、異なる音声上の対立を示す。
  • これは基本のキリル文字エルとも、エルにフックを付けたものやエルに下部記号を付けたものなどの拡張形とも異なり、それぞれ別の言語と音を表す。

基礎となる表記体系や、キリル文字のより広い適応については、キリル文字の項目も参照されたい。