必須医薬品とは|WHOリストの定義・歴史・入手性と主要課題
必須医薬品リストは、WHOがまとめた医薬品のリストです。リストには、社会の基本的なニーズをカバーする医薬品が数多く含まれています。掲載される医薬品は、効果と安全性が確認され、品質が担保され、入手が容易で手頃な価格であることが求められます。リストは1977年に初めて発行され、通常は2年ごとに見直されます。2003年には156カ国がこの取り組みに参加しています。2016年現在、リストには300種類以上の医薬品やワクチンが掲載されている。リストに掲載されている薬や物質の約95%は特許の対象外であり、表示されている物質を使用したジェネリック医薬品が容易に製造できることを意味している。
主な課題
このリストには大きな問題点が2つあります。第一に、市場性が低いために新薬開発が進みにくい疾患が多く含まれていることです。特に発展途上国で多く見られる病気は、患者が薬に高額を払う余裕がないために製薬会社が投資しにくく、新薬の開発が滞りがちです。例として、マラリアや結核などがあります。第二に、リストに載っている薬の中には特許を取得しているものや高価な治療薬があり、費用がアクセスの大きな障壁になっている点です。ものがあり、高価なものが多いということです。
入手性の現状
世界銀行の調査によると、世界人口の約3分の1がこれらの薬を利用できていません。入手性の問題は単に価格だけでなく、供給チェーンの脆弱性、品質管理の欠如、適切な診療・処方体制の不備、医療保険や支払能力の不足など複合的な要因によって引き起こされています。
選定基準とリストの構成
- 選定基準:有効性と安全性、疾病の公衆衛生上の重要性、費用対効果、供給可能性や品質確保の可能性などに基づいて薬剤が選ばれます。
- 構成:WHOのモデル必須医薬品リストは一般に「コアリスト(基礎的必須医薬品)」と「補完リスト(補助的医薬品)」に分かれます。コアは普遍的に必要とされる薬、補完は特定の状況や専門的医療で必要となる薬です。また、小児用必須医薬品リスト(Essential Medicines List for Children)も別に整備されています。
主要な課題の詳細
- 特許と価格:新しい抗がん剤や高額のバイオ医薬品など、特許で保護され高価な薬が増え、低所得国や脆弱層には手が届かない。
- 研究開発のミスマッチ:市場規模が小さい、あるいは利益見込みが低い疾患(いわゆる「ネグレクト疾患」)に対するR&Dが不足する。
- 供給と品質:医薬品の安定供給、偽造薬対策、適切な製造・流通の監督が不十分な国が多い。
- 医療システムの制約:診断能力や医療提供体制が整っていないため、必要な薬があっても適切に使われないことがある。
- 抗菌薬耐性(AMR):抗生物質の誤用・過剰使用は耐性菌の拡大を招き、既存の必須薬の有効性を損なうリスクがある。
改善に向けた取り組み
- 国家レベルの必須医薬品リストの整備と定着:WHOモデルを各国の事情に合わせて採用し、調達・保険制度と連動させる。
- 価格対策と知的財産政策:ジェネリック医薬品の促進、強制実施権(コンパルソリ・ライセンス)やボランタリー・ライセンス、特許プールなどでアクセス改善を図る。
- 国際的な協力:国際機関や基金(例:グローバルファンド、Gaviなど)を通じた資金支援、共同調達や価格交渉。
- 供給チェーンと規制強化:品質管理、偽造薬対策、製造・流通インフラの整備。
- 研究開発の促進:公的資金や公民連携によるネグレクト疾患向けR&Dの支援、費用対効果を考慮した新薬評価。
- 適正使用の推進:医療従事者と患者への教育、治療ガイドラインの普及、耐性対策(AMR対策)など。
まとめ
必須医薬品リストは、限られた資源の中で公衆衛生上優先される薬を明確にする重要なツールです。しかし、特許・価格、研究開発の偏り、供給・品質の課題などにより、世界の多くの人が必要な薬にアクセスできていない現実があります。各国政府、国際機関、民間セクターが連携して、価格政策、供給体制の強化、R&Dの促進、適正使用の推進など多面的な対策を進めることが求められます。
質問と回答
Q: 必須医薬品リストとは何ですか?
A: 必須医薬品リストとは、WHOがまとめた、社会の基本的な必要性をカバーする医薬品のリストです。
Q: 必須医薬品リストが最初に発表されたのはいつですか?
A: 必須医薬品リストは1977年に初めて発行されました。
Q: 必須医薬品リストはどのくらいの頻度で見直されるのですか?
A: 2年ごとに見直されます。
Q: 必須医薬品リストの作成に参加している国は何カ国ですか?
A: 2003年現在、156カ国が必須医薬品リストの作成に参加しています。
Q:2016年現在、必須医薬品リストにはどれくらいの医薬品やワクチンが掲載されていますか?
A:2016年現在、300種類以上の医薬品やワクチンが必須医薬品リストに掲載されています。
Q:途上国の病気について、必須医薬品リストの大きな問題点は何ですか?
A:発展途上国の病気に関する必須医薬品リストの大きな問題は、多くの人々が高い薬価を支払う余裕がないため、製薬会社がそのような病気に対する新薬の開発に興味を示さないことである。
Q: 特定の特許医薬品に関する必須医薬品リストの主な問題点は何ですか?
A:特許を取得した医薬品が高価なため、世界銀行の調査によると、世界人口の約3分の1がこれらの医薬品を入手できていないことが大きな問題です。