マラリアは寄生虫によって引き起こされる感染症で、主に感染した蚊に刺されることで人にうつります(蚊の唾液を介して寄生虫が人体に侵入します)。マラリア原虫は最初に肝臓に入りそこで増殖し、その後血液中の赤血球を破壊することで発熱や貧血などの症状を引き起こします。適切な治療が行われない場合、重症化して命に関わることがあります。
原因(病原体)
マラリアの原因は「プラスモディウム」という< a href="79552">原虫です。原虫は単細胞生物であり、細胞が1つしかない生物に分類されます(細菌とは構造が異なります)。ヒトに感染する主なプラスモディウム種には以下があります:
- Plasmodium falciparum(熱帯熱マラリア、重症化しやすい)
- Plasmodium vivax(間欠熱と再発を引き起こすことがある)
- Plasmodium ovale(再発を起こすことがある)
- Plasmodium malariae(慢性感染を引き起こすことがある)
- Plasmodium knowlesi(主に東南アジアで見られる人獣共通感染症)
感染経路
最も一般的な感染経路は、感染した雌の蚊に刺されることです。マラリアは蚊の唾液中に存在するスポロゾイトが皮膚を通じて血中に入ることで始まります。蚊の種類としては、主にAnopheles属の雌蚊が媒介者です。なお、Culex属の蚊は日本脳炎など他の病気を媒介しますが、マラリアの主な媒介者ではありません。
蚊以外のまれな感染経路としては次のものがあります:
- 母体から胎児への垂直感染(妊娠中の感染)— 文中でいう母体から胎児への感染。
- 輸血による感染(感染者の血液を用いた場合)
- 汚染された注射針の共有などによる血液を介した感染(文中の針の使用に関連)
症状と経過
マラリアの主な症状は発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛、全身倦怠感、吐き気などです。症状は感染後の潜伏期間(数日〜数週間、種や免疫状態で異なる)を経て現れます。プラスモディウムは赤血球内で増殖し破壊される際に周期的な発熱(間欠熱)を引き起こすことがあります。
重症化すると以下のような深刻な症状が出ます:
- 意識障害やけいれん(脳マラリア)
- 重度の貧血や呼吸不全
- 腎不全、肝機能障害、循環不全など多臓器不全
どの年齢層でも重症化は起こり得ますが、特に免疫が十分でない乳幼児、妊婦、非免疫者(マラリア流行地域に慣れていない旅行者)ではリスクが高くなります。
診断
- 血液塗抹標本の顕微鏡検査(薄膜・厚膜)— 寄生虫の確認と種の同定、寄生率の測定に有用。
- 迅速抗原検査(RDT: Rapid Diagnostic Test)— 現場で迅速に検査できるが、感度や種の判別に限界がある場合がある。
- 遺伝子検査(PCR)— 感度が高く種の特定に有用(診療所では必須でないことも多い)。
予防
マラリア予防は感染のリスクを下げ、流行を抑えるために重要です。主な対策は次の通りです:
- 蚊に刺されないようにする:寝るときに長袖・長ズボンを着る、蚊帳や網戸を使う、屋内では虫除け(網戸、蚊取り器)を利用する。
- 経口の予防薬(渡航前・滞在中の内服):訪問先の地域や寄生虫の耐性状況に応じ、医師の指示で服用する(例:渡航者へのマラリア予防薬)。
- 虫よけスプレーや忌避剤(DEET、IR3535、イカリジンなど)の使用。
- 公衆衛生対策:蚊の繁殖源除去(たまった水の除去)、屋外の散水管理、殺虫剤の散布など。
治療
治療は感染したプラスモディウムの種と感染の重症度により異なりますが、基本は抗マラリア薬による治療です。近年は特にPlasmodium falciparumに対してアルテミシニンを主成分とする併用療法(ACT)が第一選択とされています。その他のポイント:
- 重症マラリア:入院して静脈内投与(例:静注アルテスネート)などの集中的治療が必要。
- P. vivaxやP. ovaleでは、肝臓内の潜伏形態(ヒプノゾイト)を根絶するためにプラミキンやタフノキンなどの薬で「根治療法(再発予防)」を行うことがある。
- 輸血や支持療法(輸血、抗菌薬の併用、腎機能や呼吸の管理など)を必要とする場合がある。
受診と注意点
熱や悪寒などの症状があり、マラリア流行地域への渡航歴がある場合は速やかに医療機関を受診してください。診断が確定するまで安易な自己判断で治療を開始せず、医師の指示に従うことが重要です。輸血や注射針の使い回しなど血液を介するリスクも意識してください。
このページの冒頭でも触れた通り、マラリアは蚊による感染が主ですが、まれに母子感染や輸血、汚染針(例:文中の針)などによる血液感染もあり得ます。早期診断と適切な治療、そして予防策の徹底が大切です。














