蛍光とは|定義・原理・測定法と応用(生物検出・蛍光灯・分析)
蛍光の定義・原理・測定法をわかりやすく解説。生物検出や蛍光灯・分析への応用まで基礎から実践例を網羅。
蛍光とは、ある物質が光などの電磁波を吸収したときに発する光のことである。まず物質がエネルギーを吸収し、次に光を放出する。光源を取り除くと、蛍光は起こらなくなる。発光の一種である。
多くの場合、吸収された光よりも、放出された光の方が波長が長く、エネルギーが低い。これは吸収後に熱的な緩和(振動緩和など)で一部エネルギーが失われるためで、放出光と吸収光の波長差はストークスシフトと呼ばれる。
蛍光の中でも特に驚くべきは、人間の目には見えない紫外光を吸収して、可視光を発する物質のことである。こうした性質は鉱物や宝石の鑑定、蛍光塗料、検出法などで広く利用される。
原理(簡潔な説明)
蛍光は分子内で起きる電子遷移に基づく現象で、次のような過程をたどる(Jablonski図を言葉で表すと):
- 物質が光(光子)を吸収して電子が基底状態(S0)から励起状態(主に一重項励起状態 S1)へ遷移する。
- 励起後、分子は振動緩和や内部変換により基底準位近くの状態に速やかに落ち着く(数ピコ秒以下〜ナノ秒スケールの過程)。
- その後、励起状態(主にS1)から基底状態(S0)へ光子を放出して戻る過程が蛍光であり、典型的な寿命はナノ秒オーダーである。
- 蛍光と似た現象に燐光があるが、燐光は三重項状態(T1)からの遷移で寿命が長く(ミリ秒〜秒)、温度や不純物の影響を受けやすい。
重要な指標
- ストークスシフト:吸収スペクトルと蛍光(放出)スペクトルのピークの波長差。大きいほど検出しやすい。
- 量子収率(蛍光量子効率):吸収した光子に対して放出される蛍光光子の割合(0〜1)。高いほど明るく見える。
- 蛍光寿命:励起状態に留まる平均時間(典型的にナノ秒)。時間分解測定で得られる情報は環境や相互作用を反映する。
- 励起・蛍光スペクトル:励起波長と放出波長の分布。測定で同定や選択が行える。
測定法・装置
蛍光は高感度に検出できるため、多彩な測定法が存在する。
- 分光蛍光光度計(スペクトロフルオロメーター):励起波長と放出波長を分光してスペクトルを得る。定量・定性に用いられる。
- 蛍光顕微鏡:蛍光色素で標識した細胞や組織の高解像度観察に使用。共焦点顕微鏡や多光子顕微鏡も含む。
- プレートリーダー・蛍光イメージャ:多検体をまとめて高速測定する装置。ハイスループットスクリーニングで一般的。
- フローサイトメーター:個々の細胞や粒子の蛍光を高速で測定・解析する装置。
- 時間分解蛍光法(TRF、FLIM):蛍光寿命を測定し、環境や相互作用(例:FRET)を検出する。
- フィルター式測定:フィルターを用いて狭帯域の励起・検出を行う単純な蛍光検出法。携帯機器やセンサーに多い。
主な応用分野
蛍光は、鉱物学、宝石学、化学センサー(蛍光分光法)、染料、生物学的検出器、蛍光灯など多くの分野で利用されています。
- 生命科学・医療:蛍光色素や蛍光タンパク質で分子や細胞を標識し、局在やダイナミクスを観察する。本文にもあるように、生命科学における蛍光は生体分子を追跡する重要な方法であり、タンパク質やその他の成分に蛍光色素を付着させることで、科学者は顕微鏡を使って特定のタンパク質を視覚的に見つけることができる。代表例:GFP(緑色蛍光タンパク質)、免疫蛍光法、FISH(蛍光 in situ ハイブリダイゼーション)。
- 分析化学・センシング:極めて高感度な検出法。環境モニタリング、化学センサー、食品・医薬品分析で利用。
- 材料・ナノテクノロジー:量子ドットや蛍光ナノ粒子を用いた高輝度標識や光学材料。
- 鉱物・宝石の鑑定:紫外線照射による発光色で識別。特有の蛍光色は鑑定の手がかりとなる。
- 蛍光灯(照明):水銀蒸気放電で紫外線を発生させ、蛍光体(リン)で可視光に変換して照明を得る。一般的な蛍光灯やLED蛍光体応用はここに含まれる。
- 法科学(forensics):指紋や血痕の検出、文書鑑定などで蛍光反応を利用。
代表的な蛍光色素と技術
- 有機蛍光色素:フルオレセイン、ローダミン、アレクサフルオアなど。
- 蛍光タンパク質:GFP、mCherryなど遺伝子で標識可能な蛍光プローブ。
- 無機材料:量子ドット、ナノ粒子は耐光性や狭帯域発光が特徴。
- FRET(蛍光共鳴エネルギー移動):分子間距離や相互作用を高感度で検出する技術。
測定・実験上の注意点
- クエンチング(消光):酸素や特定のイオン、濃度依存性の自己消光(自己吸収)などにより蛍光強度が減弱する。
- フォトブリーチング(光退色):高強度光により蛍光分子が不可逆に失活する。観察条件や露光時間を最適化する必要がある。
- 内濾過効果:試料が高濃度であると励起光や蛍光が吸収され正確な定量ができなくなる。
- 環境依存性:溶媒、pH、温度、イオン強度が蛍光特性(ピーク位置、量子収率、寿命)に影響する。
- 安全性:紫外線や一部の蛍光色素(発がん性の可能性が指摘されるもの)には注意。適切な保護具と廃棄処理が必要。
まとめ(ポイント)
- 蛍光は光を吸収してすぐに放出する発光現象で、光源を除くと消える短寿命の光。
- 高感度・高選択性を持つため、生物学、化学分析、材料、照明など幅広い分野で利用される。
- 測定には機器や試料条件の最適化が不可欠であり、消光やフォトブリーチングなどの影響を考慮する必要がある。

顕微鏡下の内皮細胞には、特定の細胞成分を示す3つの独立したチャンネルがある
質問と回答
Q: 蛍光とは何ですか?
A: 蛍光とは、ある物質が光などの電磁波を吸収したときに放つ光のことです。
Q: 物質が蛍光を発するとどうなるのですか?
A: 物質が蛍光を発するとき、まずエネルギーを吸収し、次に光を発します。
Q: 光源を取り除いた後も蛍光は出ますか?
A: いいえ、光源を取り除くと、蛍光は発生しなくなります。
Q: 蛍光はルミネセンスの一種ですか?
A: はい、蛍光はルミネッセンスの一種です。
Q: 蛍光を発する光の波長やエネルギーは、吸収される光と比較してどうですか?
A: ほとんどの場合、蛍光を発する光は、吸収された光よりも波長が長く、エネルギーが低いです。
Q: 蛍光の意外な例として、どのようなものがありますか?
A: 人間の目には見えない紫外線を吸収して、可視光線を発する蛍光は、意外な例です。
Q: 蛍光はどのような分野で使われているのですか?
A: 蛍光は鉱物学、宝石学、化学センサー(蛍光分光法)、染料、生物検出器、蛍光灯など多くの分野で利用されています。
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