ヴェルサイユ宮殿のアポロンの泉とは — 歴史・彫刻・台南レプリカの解説
アポロの泉(仏語:Bassin d'Apollon)は、ヴェルサイユ宮殿にある泉である。中央には、ギリシャの太陽神アポロンが夜明けに4頭の馬車に乗って海から昇る姿が配され、アポロンを先導するトリトン隊を従えている。太陽神アポロンのモチーフは、当時の宮廷政治と密接に結びつき、特に「太陽王」を自称したルイ14世の象徴として重要視された。
歴史と設置までの経緯
この場所にはもともと別の水域があり、1639年にルイ13世が噴水の跡地に「白鳥の池」と呼ばれる池を掘ったのが始まりである。のちにルイ14世が宮廷と庭園の大改修を進める中、1671年に池が拡張され、泉として整備された。設計・構想にはル・ブランが関わり、彼は池の東西の向きからアポロンを捧げることを提案した。ル・ブランによる主題の選定は、ルイ14世と太陽神アポロンとの類似性(太陽=王のイメージ)を意図的に強調するものであった。
彫刻・制作
泉の中心像は、ル・ブランの構想を元に制作されたもので、アポロンが4頭の馬車に乗り、テティスの洞窟(海)から立ち上がる姿が表現されている。この主題は当時のヨーロッパ美術で流行していた。中心像は金箔で飾られた彫像で、制作はローマのチュービによって行われ、最終的に1671年に設置された。素材や仕上げは長年にわたり維持・修復が行われており、金箔の補修や噴水機構の点検が定期的に必要とされる。
位置と向きの特異性
アポロンの泉は庭園の軸線上、大運河に面して配置されているのが特徴である。興味深い点として、泉の彫刻はアポロンが西側に昇る(大運河の方向へ向く)ように描かれており、現実の太陽の昇る東とは向きが逆になっている。これは、庭園の視覚的な広がりや宮殿からの見通し(大運河と軸線のつながり)を優先した結果であり、必ずしも天文学的な方位の再現を意図したものではない。つまり、象徴性と景観設計上の理由で向きが選ばれたと考えられている。
台南(知名美術館)にあるレプリカ
2014年、台湾の台南にある知名美術館の入り口に、ヴェルサイユ宮殿のアポロンの泉と同規模のレプリカが公開された。同博物館は2008年にフランス人アーティストのジルズ・ペローに依頼し、ベルサイユ宮殿にあるものと同じ意匠の泉を再現するプロジェクトを進めた。複製制作では、まずフランスで近代的なレーザー測定と金型製作に3年、つづいてイタリアで大理石を彫るのにさらに3年を要するなど、合計で数年にわたる工程を経て完成した。
興味深い違いとして、知名美術館の「アポロの泉」はアポロンが東から昇る向きで正しく描かれており、ヴェルサイユのものとは向きが異なっている。この点は制作側が天文学的な方位に合わせて意図的に修正した結果と説明されている。
現在の見どころと保存
ヴェルサイユのアポロンの泉は、宮殿庭園の主要な景観要素の一つであり、訪問者は大運河と庭園軸を背景にした荘厳な配置や、金色に輝く中央像と水の演出を楽しめる。噴水や像は時折修復・再金箔が施されるため、保存作業にも注目が集まる。台南のレプリカも原作の美的・技術的側面を伝える好例として、文化交流や模刻制作の実例として評価されている。
- 主題:アポロンが海(夜明け)から馬車で昇る姿。
- 制作・設置年:池の拡張や像の設置は1671年。
- 象徴性:ルイ14世(太陽王)とアポロンの結びつきによる王権の象徴。
- 台南レプリカ:2008年発注、2014年公開。フランスでの測定・金型製作とイタリアでの彫刻という国際的な制作プロセスを経て完成。


アポロの泉、台湾・台南市智美博物館前


アポロの泉のルイ14世(車椅子)(前景
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質問と回答
Q:「アポロンの泉」とは何ですか?
A: アポロンの泉は、ヴェルサイユ宮殿にある噴水で、ギリシャ神話の太陽神アポロが夜明けに四頭立ての馬車で海から上がってくる様子を描いています。
Q: 誰がアポロに捧げることを提案したのですか?
A: ル・ブランが、東西の方向からアポロに捧げることを提案したのです。
Q: 金箔を貼った像は誰が作ったのですか?
A: 金箔を貼った像は、ローマのテュービーによって作られました。
Q: 噴水の先にある大運河はどこにあるのですか?
A: 泉の向こうには大運河があります。
Q: 「アポロンの泉」は、アポロンが東から昇るように描かれているのか、それとも西から昇るように描かれているのか?
A: アポロンの泉は、アポロンが東からではなく西から昇るように描かれているのは誤りです。
Q:台湾の台南市でレプリカが公開されたのはいつですか?
A:2014年、台湾の台南市にある奇美博物館の入り口に、同じ大きさのレプリカが公開されました。
Q:このレプリカの複製彫刻と大理石の彫刻のために、現代のレーザー計測と成形にどれくらいの時間がかかったのでしょうか?A:フランスでの複製彫刻のための近代的なレーザー計測と成形に3年、イタリアでの大理石の彫刻にさらに3年かかりました。