地熱エネルギーとは?定義・仕組み・発電・利用方法をわかりやすく解説

地熱エネルギー(ギリシャ語で地球を意味する「ジオ」と熱を意味する「テルモス」を語源とする)は、地球の地殻内部に蓄えられた熱エネルギーです。表面を暖めるエネルギーの多くは太陽は地球の影響ですが、地球内部の熱は主に惑星形成時に残った熱(原始熱)と、地下の鉱物が行う放射性崩壊による熱で生み出されます。研究では、地球内部の熱のうちおおよそ20%が原始熱、残りが放射性崩壊由来と考えられています(地域や学説により見解は異なります)。地球の中心部、すなわち核の部分が最も高温で、そこから地表へ向かって徐々に温度が下がっていきます。

地熱資源の種類と分布

地熱資源には深さや状態に応じていくつかのタイプがあります。

  • 浅部の地中熱:地表から数メートルの浅い地中は年間を通じて比較的温度が安定しており、地中熱ヒートポンプ(GHP)で利用されます。
  • 熱水貯留層(ハイドロサーマル):地下の温水や蒸気が貯留するクラスで、温泉や間欠泉(温泉や間欠泉として地表に現れることがある)として知られています。これらは発電や直接利用に適しています。
  • 高温乾燥岩(HDR)やホットドライロック:水が乏しい高温の割れ目だらけの岩盤で、加熱した岩盤を循環させて熱を取り出す手法が検討されています。
  • マグマに由来する超高温の資源:非常に高温だが深部にあり、直接熱を取り出す技術はまだ商業化されていません。

地熱発電の仕組み(発電方式)

地熱発電は、地中の熱や蒸気を利用してタービンを回し、発電機で電気を作ります。代表的な方式は次の3種類です。

  • 乾式蒸気式(Dry Steam):地下から直接蒸気を取り出してタービンを回す方式。条件が限られますが単純で効率が高い。
  • フラッシュ蒸気式(Flash Steam):高温高圧の熱水を地表に引き上げ、圧力を下げて一気に蒸気化させ、その蒸気でタービンを回す方式。世界で多く使われています。
  • バイナリーサイクル式(Binary Cycle):熱水の熱で沸点の低い作動流体を加熱して蒸発させ、その蒸気でタービンを回す方式。比較的低温の資源でも発電可能で、環境負荷が小さい。

発電所によっては、貯水池(熱水を蓄える地下の帯水層)から直接蒸気を利用するものや、熱水で作動流体を沸騰させるものがあります。アメリカなどでは、地熱による温水貯水池が多く、井戸を掘って地下貯水池から発電することも行われています。

直接利用と地中熱ヒートポンプ(GHP)

地熱エネルギーは発電以外にも幅広い用途で直接利用されています。代表的な用途は次の通りです。

  • 地域暖房・給湯:建物や集落の暖房、温水供給。アイスランドは国土の多くを地熱で暖房していることで有名です。
  • 温室暖房や養殖(養魚)用の水加温、農作物の乾燥、工業プロセスの低温加熱など。
  • 温泉やリゾートとしての利用(古くからの利用例は旧石器時代の入浴まで遡ります)。

地中熱ヒートポンプは、ほとんどどこでも地表下約10フィート(3m)程度の地面が年間を通じておよそ50〜60°F(10〜16℃)でほぼ一定である性質を利用します。システムはヒートポンプ本体、空気供給のダクトワーク、熱交換器(建物近くの浅い地中に埋設したパイプ)で構成されます。冬は地中の熱を取り出して室内へ、夏は室内の熱を地中へ戻すことで冷房を行います。夏に取り除いた熱は給湯などに再利用でき、運転に必要な電力は外部から供給されます。

強化地熱システム(EGS)と将来技術

既存の地熱貯留層がない乾燥岩盤でも、人工的に割れ目を作り冷水を注入・循環させて熱を取り出す試みが強化地熱システム(EGS)です。手法としては高圧注入による破砕や熱水注入で岩盤を熱交換可能にするなどがあります。EGSは理論上は巨大な資源ポテンシャルを持ちますが、以下の課題が残っています。

  • 深部掘削や破砕に伴う高コスト
  • 注入による誘発地震(小規模な地震を引き起こすことがある)
  • 地下水や岩石との化学反応によるスケーリングや腐食

現在、EGSは実証・試験段階のプロジェクトが中心で、商業規模での広範な展開には更なる技術開発と社会的合意が必要です。

利点・課題・環境影響

  • 利点
    • 安定したベースロード電源になり得る(24時間稼働が可能)
    • 温室効果ガス排出が化石燃料発電に比べて非常に低い
    • 土地利用面積が比較的小さい
    • 長寿命(適切な管理で数十年単位)
  • 課題・環境影響
    • 初期の掘削・設備投資が高い
    • 流体放出による硫化水素などの局所的な大気汚染や地下水への影響の可能性
    • 地下での応力変化に伴う誘発地震(特にEGSで問題となる)
    • 資源の枯渇や温度低下を避けるための適切な流体管理が必要

実例と現状

地熱発電や地熱利用は、国や地域によって活用状況が異なります。アイスランドは地熱の直接利用・発電で先進的な国の一つです。世界のいくつかの国(アメリカ、フィリピン、インドネシア、ケニア、ニュージーランドなど)は地熱発電の比率が高く、災害対応やエネルギー安全保障の面でも役立っています。発電所の運転は比較的安定しており、季節や天候に左右されにくい特性があります。

実務的な利用方法(まとめ)

  • 発電(乾式蒸気、フラッシュ、バイナリー)
  • 地域暖房・給湯・温室暖房・養殖場・工業用途などの直接利用
  • 住宅や商業ビルでの地中熱ヒートポンプ導入による冷暖房と給湯
  • 将来的にはEGSや深部熱利用、既存油井の共生利用などの拡大が期待される

地熱エネルギーは、適切に評価・管理すれば低炭素で安定したエネルギー源になります。一方で、資源評価、掘削や環境影響評価、地元合意形成といった初期段階の対策が重要です。技術革新(掘削コストの低減、EGSの実用化、耐腐食材料の開発など)が進めば、より幅広い地域での導入が期待できます。

(補足)本文では地下熱の仕組みや利用方法、発電方式、利点・課題をわかりやすく解説しました。地熱は地域特性が強いため、具体的な導入・設計を検討する際は現地の地質調査や専門家の評価が不可欠です。

アイスランドのネスジャベリル地熱発電所から立ち上る蒸気Zoom
アイスランドのネスジャベリル地熱発電所から立ち上る蒸気

質問と回答

Q:地熱エネルギーとは何ですか?


A:地熱エネルギーは地殻の中の熱によって作られる再生可能なエネルギーです。地球の形成過程や鉱物の放射性崩壊に由来するもので、発電や地域暖房などの冷暖房に利用することができます。

Q: 2007年、世界の地熱発電量はどのくらい?


A: 2007年には、世界中で約10ギガワット(0.3%)の電力が地熱によって発電されました。

Q:地表から10フィートの深さの地面は、どのくらいの温度を保っているのでしょうか?


A: 地表から10フィートの深さの地面は、通常50°から60°F(10°から16°C)の間でほぼ一定の温度を保っています。

Q: 地中熱ヒートポンプはどのように建物の暖房に利用できるのですか?


A: 地中熱ヒートポンプは、冬に建物の近くの浅い地中に埋められたパイプから熱を取り除き、夏にはこのプロセスを逆転させることで、この資源を利用して建物を暖房することができます。この熱を温水として利用することもできます。

Q: 拡張型地中熱利用システムは、成熟した技術なのでしょうか?


A: いいえ、地熱発電システムはまだ成熟した技術ではありません。

Q: 地熱貯留層は、アメリカのどこにあるのですか?A: アメリカの地熱貯留層のほとんどは、西部の州、アラスカ、ハワイにあります。

Q: 高温岩体資源は地表のどの深さまで存在するのか?A 地下3〜5マイル(5〜8km)の深さにあり、それ以下の深さの所もあります。

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