オングストローム(記号 Å)は、国際的に認知されている非SIの長さの単位で、原子や分子、電磁波の波長など非常に短い距離を表すのに使われることが多い。値は0.1ナノメートル(nm)に相当し、科学的表記では1×10−10 m(正規化表記)または1 E-10 m(指数表記)と書くことができ、どちらも1/10,000,000,000 mを意味する。原子の大きさ、化学結合の長さ、可視光線のスペクトル、集積回路の部品の大きさなどを表すのに使われることがある。なお、単位名はスウェーデンの物理学者アンダース・ヨナス・オングストローム(Anders Jonas Ångström)に由来する。

定義と換算

  • 1 Å = 1 × 10−10 m
  • = 0.1 nm(ナノメートル)
  • = 100 pm(ピコメートル)
  • = 0.0000000001 m(小数表記)

主な用途と具体例

  • 原子・分子スケールの長さ:水素原子のボーア半径は約0.529 Å、二原子分子の代表的な結合長はH–H(H2)で約0.74 Å、C–C単結合は約1.54 Åなど。
  • 結晶学・格子定数:シリコンの格子定数は約5.431 Å、グラファイトの層間距離は約3.35 Åなど。
  • 分光学:可視光の波長は約4000–7000 Å(400–700 nm)に相当する。たとえば、宇宙・天文・原子スペクトルの古い文献や分光データでは波長をÅで表記することが多い(例:Hα線 6562.8 Å)。
  • X線や電子回折:X線の波長はおおむね0.1–100 Åの範囲にあり、結晶構造解析や電子顕微鏡の分解能の記述に用いられる。
  • 材料・表面科学、薄膜の厚さ:原子層レベルの厚さや表面間隔を示す際にしばしば使用されるが、近年はナノメートルやピコメートルで表すことが推奨される場合が増えている。

歴史と標準化上の扱い

オングストロームは19世紀に分光学で導入され、長らく天文学や物理・化学分野で慣用的に使われてきた。現在では国際単位系(SI)には含まれていない非SI単位だが、慣習的に広く用いられている。国際機関や学術団体は、明確さと一貫性のために新しい仕事ではナノメートル(nm)やピコメートル(pm)などSIに近い単位を使うことを推奨することが多い。

表記上の注意

  • 単位記号は大文字のリング付きA(Å)を用いる(Unicode U+00C5)。
  • 単位記号は省略形であり複数形にしない(例:5 Å、5Å と表記)。
  • 文献によってはÅの代わりにnmやpmが用いられるため、数値を変換して比較する際は注意すること。

よく使う変換例

  • 1 Å = 0.1 nm
  • 5 Å = 0.5 nm = 500 pm
  • 3.35 Å(グラファイトの層間距離)= 0.335 nm
  • 5.431 Å(シリコン格子定数)= 0.5431 nm

まとめると、オングストロームは原子・分子スケールの長さを直感的に表すのに便利な単位であり、歴史的・実務的に広く使われているが、国際的な標準化の観点からはnmやpmなどSIに近い単位へ置き換えて表記することが推奨される場合が多い。