重水(D2O・酸化重水素)とは?定義・物性・原子炉での役割と安全性

重水(D2O・酸化重水素)の定義・物性、原子炉での中性子減速材としての役割と安全性をわかりやすく解説。

著者: Leandro Alegsa

重水酸化重水素2
H

2
OD
2
O重水素をベースにした水の一形態です。重水素は水素の同位体で、原子核に1個の中性子を持つため質量が普通の水素(プロチウム、質量数1)より大きくなります。重水素(記号D、または2
H)が酸素と結合したものが重水(D2O)です。

基本的な物性と化学的特徴

  • 見た目と匂い:純粋な重水は無色透明で、匂いはほとんどありません(化学的性質は水に類似)。
  • 密度と相変化:重水は普通の水より密度が大きく、常温での密度は約1.1056 g/cm3(参考値)です。融点は約3.82°C、沸点は約101.4°Cで、いずれも軽水(H2O)より高くなります。
  • 化学反応性:D–O結合はH–O結合よりわずかに強く、反応速度において「同位体効果(キネティックアイソトープ効果)」が生じます。つまり一部の化学反応では重水を用いると反応速度が遅くなります。
  • 中性子に対する特性:重水は中性子をよく減速(熱化)しますが、軽水よりも中性子を吸収しにくい(吸収断面積が小さい)ため、原子炉の中性子経済性を良くします。

原子炉での役割

重水は主に中性子減速材(モデレーター)や冷却材として原子炉で用いられます。キャンドゥ炉(CANDU炉など)のように、重水をモデレーター兼冷却材に使う設計では、燃料に未濃縮の天然ウランを使用できる利点があります。これは重水が中性子を効率よく熱化しつつ中性子吸収が少ないため、核分裂連鎖に必要な中性子を多く残せるからです。

利点と欠点の要約:

  • 利点:天然ウランが使えるため燃料加工コストを下げられる、良好な中性子経済性、温度変化に対する反応が穏やか(設計による)。
  • 欠点:重水そのものの製造コストが高い、重水漏洩時の回収と管理が必要、原子炉運転中に生成される放射性同位体(下述)に対する対策が必要。

生成と工業的製法

重水は自然界にも微量含まれますが、大量に得るには工業的な濃縮が必要です。代表的な方法には次があります:

  • 化学交換法(例:Girdler–Sulfide法など)— 工業的に広く使われてきた旧来の方法。
  • 蒸留や電気分解による濃縮 — 大量生産よりも高純度の得られる手法。
  • 同位体交換による膜分離や吸着プロセス — 研究・産業用に用いられることがあります。

安全性と放射性について

非放射性の重水自体は自然物質であり、化学的には水に近く、純粋な重水は放射性物質を含みません。ただし、原子炉内を循環した重水は中性子との反応により微量の放射性同位体(代表的にはトリチウム(3H)など)を生成・含有することがあります。そのため原子炉からの重水は厳重に監視・処理されます。

人体への影響:通常の取扱い量・条件(実験室レベルや運転管理の下)では健康リスクは低いとされています。しかし理論上、体内の水の大部分が重水に置き換わると生体の化学反応や代謝に悪影響を及ぼします。動物実験では体内水のかなりの割合がD2Oに置換されると生理機能障害が生じることが示されています。したがって飲用や大量皮膚吸収は避けるべきです。

現場での対策:原子炉や重水取り扱い施設では、重水の漏洩防止、回収設備、放射性同位体の測定(特にトリチウム)、および規制に基づいた廃棄処理が実施されます。作業者は防護具の着用、適切な換気、モニタリングが求められます。

その他の用途

  • NMR(核磁気共鳴)や分光実験での溶媒(D2O)としての利用。水素の信号が邪魔になる分析で使われます。
  • 化学・生化学の基礎研究で同位体効果を調べるためのトレーサーや置換試薬としての利用。
  • 中性子関連の研究装置や研究原子炉のモデレーターとしての利用。

まとめと注意点

  • 重水(D2O)は重水素を含む水で、物性は軽水と類似しつつも密度・沸点・融点などで差があります。
  • 原子炉では優れた中性子減速材となり、天然ウランを燃料として使える利点がある一方、製造コストや放射性同位体の管理が課題です。
  • 純粋な重水は非放射性ですが、原子炉を通過した重水は微量の放射性物質を含む可能性があるため、取り扱いや廃棄は法規制と安全管理に従う必要があります。

質問と回答

Q:重水とは何ですか?


A:重水は、重水素(2HまたはD)という水素同位体を通常より多く含む、重水素をベースとした水のことです。

Q: 重水は普通の「軽い」水とどう違うのですか?


A:重水は重水素の存在によって核的性質が異なり、また質量が増加することによって通常の軽水とは異なる物理的・化学的性質を持つようになります。

Q:重水にはどのような用途があるのですか?


A:重水は、CANDU炉など一部の原子炉で中性子減速材として使用されています。また、濃縮されていないウランを燃料として使用する際にも使用されます。

Q:純重水は放射性物質ですか?


A:いいえ、重水は安定な同位体なので、純重水は放射性物質ではありません。しかし、原子炉を通過したものであれば、わずかながら放射性物質が含まれています。

Q: 普通の軽い水ではなく、重たい水だけで生きていけるのですか?


A:いいえ。重水は化学的性質が異なるので、普通の軽水の代わりに重水だけで生きていくことはできません。

Q:少量の重水は人体に有害ですか?


A:いいえ、少量であれば人体に毒性はありませんし、代謝実験のために数グラム飲んでも病気にならないことが一般的です。


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