ハリケーン・ジョン(1994年)—東西太平洋を横断した史上最長31日間の熱帯低気圧
1994年のハリケーン・ジョン:東西太平洋を横断し史上最長31日間観測された驚異の熱帯低気圧の経緯と被害を詳述。
ハリケーン・ジョンは、東太平洋から西太平洋まで追跡され、中央太平洋を横断して合計31日間観測された史上最長の熱帯低気圧であった。複数回にわたって勢力を弱めたり再強化したりしながら長距離を移動し、経路・寿命ともに稀な事例として気象学的な注目を集めている。
発生から主要経過
ジョンの前兆は、7月25日にアフリカ沖に移動した熱帯波であった。この熱帯波は大西洋域では不利な条件に遭遇したが、8月8日に東太平洋に到達して徐々に組織化した。やがて8月11日にメキシコのアカプルコの南南東約300海里で熱帯低気圧10-Eと認められ、同日にバンド状の雨雲構造と良好な上層流出を伴って熱帯性暴風域(トロピカルストーム)ジョンへ発達した。
東太平洋北部の強い高気圧の張り出しに押されて西へ進み、上層の風のせん断(シアー)を受けて強度の変動を繰り返したが、19日以降にシアーが緩和して20日にはハリケーンへと増強した。短期間でさらに発達して大型ハリケーンとなり、中部太平洋を横断した。
ジョンは勢力を維持・強化し、23日には最大風速150ノット(約278 km/h、時速175マイル)というピークを記録してハワイの南約300海里を通過した。ハワイ本島は数日前から警戒を要する状況であったが、南から張り出す高気圧の尾根によりジョンは本島より南側を通過し、大規模な直撃は免れた。しかし高波や強雨をもたらし、海岸域や沿岸船舶に影響を与えた。これらの期間中、米空軍予備隊の偵察機などによる強度観測が継続的に行われた。
その後ジョンは進路をやや北寄りに変えつつ勢力変動を繰り返した。北上して一時的に弱まった後、再び勢力を強めてカテゴリー4級(最大時速約135マイル/約217 km/h)に達したが、再び上層のシアーで勢力をそがれた。やがて国際日付変更線を越え、国際基準では台風ジョンと呼ばれる領域に入った。
その後は次第に衰弱し、8月末から9月上旬にかけて熱帯暴風域や熱帯低気圧へと勢力を落とした。北西にループ状の経路を描きつつ再び勢力を盛り返す場面もあり、9月上旬には上部トラフに引き寄せられて北東進し、中央太平洋へ再進入した。再進入後の9月8日遅くに一時的に再びハリケーンへ復活したが、間もなく上層のシアーで弱まり、9月10日には熱帯性の嵐に衰弱、その日のうちにウナラスカ島(アリューシャン列島付近)の南方約1000マイルの北中部太平洋で温帯性低気圧へと移行し、観測史上前例の31日間に及ぶ海上活動の末に消滅した。
影響と記録的意義
- 経路:東太平洋で発生後、中部太平洋を横断して西太平洋へ到達し、再び中部太平洋に戻るという長大で複雑なトラックをたどった。
- 強度:最大で150ノット(約278 km/h、時速175マイル)に達し、主要ハリケーン(カテゴリー4以上)に相当する極めて強い勢力を示した時期があった。
- 被害:ハワイ諸島やジョンストン環礁(ジョンストン島)付近では高波や強雨、局地的な被害が報告されたが、広域にわたる大規模な人的被害や壊滅的な被害報告は相対的に限定的であったとされる。
- 記録性:観測されている限りでの熱帯低気圧としての持続日数が最長の31日間であり、複数の海域(東太平洋・中部太平洋・西太平洋)を跨いだ珍しい事例として気象史上に残った。
ハリケーン・ジョン(1994年)は、熱帯低気圧の寿命や海域跨越が気象現象に与える影響を考える上で重要なケーススタディとなり、長期間にわたる航空偵察・衛星観測による追跡の意義を強く示した。31日間に及ぶ経過のなかで、勢力の変動や進路の偏向は上層環境(高気圧の張り出しやトラフ、風のせん断)の影響を色濃く反映している。
質問と回答
Q:ハリケーンジョンの前兆は何でしたか?
A:ハリケーンジョンの前兆は、7月25日にアフリカ沖で発生した熱帯波です。
Q:東太平洋に到達したのはいつですか?
A:8月8日に東太平洋に到達しました。
Q: ハリケーンになったのはいつですか?
A:8月20日にハリケーンになりました。
Q: 強度は?
A:8月23日に150ノット(風速175マイル)の最大勢力に達しました。
Q:中部太平洋のどこを横切ったのですか?
A:8月20日に大型ハリケーンになった後、すぐに中部太平洋に入りました。
Q:ジョンストン島付近では、どのような被害がありましたか?
A:ジョンストン島付近では、中程度の被害が発生しました。
Q: ハリケーン・ジョンはいつ、どこで消滅したのですか?A:ハリケーンジョンは8月10日にウナラスカ島の南約1000マイルの北中部太平洋で消散しました。
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