氷床コア(アイスコア)とは|過去80万年の気候を読む氷の試料と解析
氷床コア(アイスコア)で読み解く過去80万年の気候史。大気ガスや火山灰などの試料解析で地球温暖化の実態に迫る入門ガイド。
アイスコア(氷床コア、アイスコア)とは、氷河や氷床から垂直に掘削して採取した長い氷の柱状試料です。深く掘ることで、表面近くの比較的新しい氷から、氷河底付近に蓄積された何万年、場合によっては何十万年にもわたる古い氷まで連続的に得られます。通常は、南極、グリーンランド、あるいは高山氷河などの極めて寒冷で氷の堆積が長期間保存されている場所から採取されます。
採取の仕組みと氷層の形成
雪は地表に降り積もり、上からの荷重で圧縮されていきます。新雪→圧雪→粗密な「ファーン(firn)」を経て、最終的に気泡の少ない氷になります。層状に堆積するため、基本的には年ごとの堆積層(年層)が残り、浅い部分では一年ごとの区別がつくことが多いです。深部では圧縮と流動により層厚が薄くなり、解析解像度は低下しますが、より古い時代の記録が保存されています。
年代を決める方法
氷床コアの年代測定には複数の手法が用いられます。代表的な方法は次の通りです:
- 年層カウント:浅部や年層が明瞭な部分で、層の数を数えて年代を求める。
- 同位体比(酸素・水素同位体):水の中の重い同位体(δ18O、δDなど)の比率から間接的に堆積年代や温度を推定する。
- 火山灰(テフラ)やケイ酸塩層:既知の火山噴火の年代と照合して年代付けを行う(火山灰などの層を利用)。
- 導電率や化学的マーカー:季節性のイオン濃度や、導電率を測定して季節パターンを識別する。
- 数値モデル:氷の流動や堆積履歴を再現する数学的・物理的モデルを用いて年代を補正する(数学的なモデルを作る方法)。
深い年代ほど年層の識別が難しくなるため、複数の手法を組み合わせて年代精度を高めます。なお、氷中に閉じ込められた大気は氷より若い(ガス気泡の閉じ込め時期が遅れる)ため、氷の年代と気泡の年代が異なる点にも注意が必要です。
氷床コアが教えてくれること
氷床コアは過去の地球環境を多面的に記録しています。主な情報は次の通りです:
- 大気組成:氷に閉じ込められたガス(CO2、CH4、N2Oなど)を測定することで、過去の温室効果ガス濃度が直接わかります。
- 温度指標:水の同位体比(δ18O、δD)から古気候の寒暖を推定できます(これにより温度を計算することが可能)。
- 火山活動とエアロゾル:火山灰などや硫酸塩層は大規模噴火の記録や大気成分の変動を示します。
- 砂塵(ダスト)と粒子:乾燥・風の強さや氷床周辺の陸域環境の変化を反映します。
- 微生物や有機物:過去の生態系変化や植生の情報が含まれる場合があります。
解析手法(実験室での作業)
採取されたコアは低温管理の下で断面を作り、以下のような分析が行われます:
- ガス抽出とガスクロマトグラフ/質量分析による温室効果ガス濃度測定。
- アイソトープ比の質量分析(δ18O、δD)による温度復元。
- イオン分析(IC)や誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)による化学成分測定。
- 微粒子・ダスト量の測定や顕微観察、火山灰の鉱物学的同定。
- 導電率や微小層解析で季節性や短期イベントの検出(導電率を測定しる手法など)。
過去80万年の気候と現代への示唆
長期の氷床コア研究によって、地球は過去80万年以上にわたり氷期(氷河時)と間氷期を規則的に繰り返してきたことが明らかになりました。これらの周期は軌道要素(ミランコビッチサイクル)などと関連しており、同時に大気中のCO2やCH4濃度も変動していたことが示されています。氷床コアは、過去の温室効果ガスと気温の相関を直接示すため、現在の地球温暖化の進行を理解するうえで非常に重要な基準となります(古気候の自然変動と人為的変動を区別するための背景資料を提供します)。
限界と注意点
氷床コアは強力な記録源ですが、いくつかの限界もあります:
- 地域性:採取点は極地や高山に限られるため、全球の均一な記録ではありません。地域差を考慮する必要があります。
- 年代不確かさ:深部では年層が同定できず、年代推定にモデル依存性や誤差が入ります。
- ガスと氷の年齢差:先述の通り、気泡に閉じ込められた大気の年代は周囲の氷の年代より若くなることがあり、解釈に注意が必要です。
- 融解や再堆積の影響:局所的な融解や層の破壊があると記録が失われたり混入したりします。
保存と国際協力
採取されたアイスコアは低温で保管され、世界中の研究機関が分配して多様な分析を行います。代表的なプロジェクト(例:Vostok、EPICA、Dome C、GISP2、NGRIPなど)の成果が現在の古気候理解を支えています。こうした長期かつ国際的な協力により、過去の気候変動の全体像とそのメカニズムが徐々に明らかになっています。
まとめると、氷床コアは雪の堆積と圧密過程によって保存された時間カプセルのようなものであり、過去の気候がどのように変化してきたか、そして現代の地球温暖化を理解するうえで欠かせない重要な科学的証拠を提供します。氷中に閉じ込められた大気や微量成分、層構造を総合的に解析することで、過去数十万年の気候史を再構築できます。

毎年形成される層を示す氷のコアを少しだけ
質問と回答
Q:アイスコアとは何ですか?
A:アイスコアは、氷河から採取された長い氷の塊です。氷河の底にある古い氷までさかのぼるように、非常に深く掘削されます。
Q: アイスコアはどこで採取されるのですか?
A:アイスコアは通常、南極大陸、グリーンランド、または非常に高い山から採取されます。
Q:雪はどのように積もり、アイスコアになるのでしょうか?
A:雪は地表に降り積もり(深くなり)ます。雪が降れば降るほど、上の層の重みで下の層が圧縮され(薄くなり)ます。最終的には、氷だけが残り、空気はすべてなくなります。氷が深ければ深いほど、古い氷であることを意味します。
Q: 科学者はどのようにして氷床コアを年代測定するのですか?
A: 氷の層を見ることによって年代を測定することができます。また、氷が何年前のものかを調べるのは難しいので、電気伝導度の測定や数学的モデルの作成など、他の方法を用いる場合もあります。
Q: アニセコアを研究することで、どのようなことがわかるのですか?
A: 氷床を調べることで、過去の気候や、氷床の層に閉じ込められた火山のガスや粒子、火山灰を知ることができます。また、氷床を構成する水の種類は、過去800,000年の地球の温度を計算し、周期的な気候の変化を知ることができます。
Q:過去の気候を知ることは、地球温暖化を理解する上でどのように役立つのでしょうか?
A: 過去の気候を知ることは、化石燃料の燃焼や森林伐採などの人間活動による将来の気候変動パターンを予測するために、気候が時間とともにどのように変化したか、その変化の要因は何だったかを知ることで、地球温暖化をより理解することにつながります。
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