ヨーロッパのイスラム教の歴史と現状:分布・移民・社会的影響

ヨーロッパにおけるイスラム教の歴史と現状を分布・移民動向・社会的影響から解説。成長予測や課題、地域別の実情を分かりやすく紹介。

著者: Leandro Alegsa

イスラム教はヨーロッパで2番目に大きく、急速に成長している宗教であり、その歴史と現状は地域によって大きく異なります。多くのムスリムのコミュニティは20世紀以降に形成されましたが、バルカン半島やイベリア半島の一部では何世紀にもわたる定着の歴史があります。

歴史的背景

イスラム教のヨーロッパ進出は複数の時期に分かれます。8–10世紀には、北アフリカからの侵入によりイベリア半島に定着しました。特に北アフリカの「ムーア人」が支配した時期は、スペインやポルトガル、南イタリア、マルタなどで長期にわたるイスラム文化の影響を残しました。これらの地域は、後のレコンキスタ(キリスト教勢力による再征服)を経てキリスト教支配に戻されました。

同時期に、7世紀以降のペルシャ征服やその後の勢力拡大により、イスラム教はコーカサス地域にも広がりました(参考:コーカサス)。さらに、オスマン帝国は中世から近世にかけて南東ヨーロッパへ勢力を拡大し、14〜15世紀にはビザンチン帝国の大部分を征服しました。オスマン帝国の支配が続いたバルカン半島には、現在でも多くのムスリム集団が存在します(関連:マン帝国は)。しかし19〜20世紀にかけて帝国は衰退し、最終的に1922年に崩壊しました。

分布と人口動態

バルカン諸国のうち、アルバニアコソボボスニア・ヘルツェゴビナなどのイスラム教徒が多い国はしばしば「ムスリム・ヨーロッパ」と呼ばれます。さらに、トルコアゼルバイジャンカザフスタンなどの大陸横断国や、北コーカサス地方のロシアといった地域にも多くのムスリムが暮らしています。

近現代の統計では、20世紀後半から21世紀初頭にかけて、西ヨーロッパへ大量の移民が流入しました。2010年時点の推計では、欧州全体に約4400万人(約6%)のムスリムが居住しており、そのうち欧州連合(EU)域内には推定1900万人(約3.8%)が含まれるとされています。将来的には人口比率が上昇すると予測され、2030年には約8%に達するとの見積もりもあります。

国別では、現在西ヨーロッパで最も多くのムスリムが住んでいる国としてフランスがよく挙げられ(人口のおよそ12.5%とする推計がある)、EU加盟国の中ではブルガリアが回答ベースで世俗統計上イスラム教徒の割合が高い国の一つとされています(原文参照)。ただし、国や調査によって推計値は大きく異なるため、数値はあくまで参考値です。

20世紀以降の移民の波と原因

  • 戦後の労働移民:第二次世界大戦後、西ヨーロッパ各国は急速な経済復興を背景に労働力を必要とし、トルコ、北アフリカ、南アジアなどからの「ゲストワーカー」受け入れを拡大しました(例:ドイツのGastarbeiter)。
  • 脱植民地化による移民:フランスやイギリス、オランダなどの旧宗主国には、アルジェリア、モロッコ、チュニジア、パキスタン、バングラデシュ、インドネシアなど旧植民地からの移住が続きました。
  • 難民・庇護申請:1990年代のユーゴスラビア紛争、2000年代以降の中東・北アフリカの紛争(イラク、シリア)やアフリカからの難民流入により、新たなムスリム移民・難民が増加しました。
  • 家族再統合・経済的移住:長期滞在者の家族呼び寄せや、教育・就労を目的とした個別移住も継続しています。

社会的影響と論争

ムスリムの増加は受入社会にさまざまな影響を与え、活発な議論の対象になっています。主な論点は以下の通りです。

  • 宗教的シンボルと公的空間:フランスのような世俗主義(laïcité)を掲げる国では、公共教育や公務での宗教的シンボルの制限(スカーフや顔覆いの禁止など)が大きな論争を呼びます。
  • 治安と暴力行為:極端主義によるテロ攻撃や暴力事件は社会不安を惹起し、移民コミュニティ全体に対する偏見や監視強化を招くことがあります(関連:テロ攻撃)。
  • 表現と宗教間摩擦:デンマークの風刺画事件など、宗教的表現をめぐる騒動が文化的対立を深めることがあります(関連:デンマークでの漫画事件)。
  • 政治的利用:イスラム教徒を移民や治安の「問題」として利用するポピュリスト右派政党の支持が根強く、移民規制や同化政策を掲げる動きがあります(関連:ポピュリスト)。
  • 差別と排斥:こうした出来事はまた、イスラム恐怖症や社会的偏見を煽り、雇用や教育の機会不平等をもたらす可能性があります。

宗教生活・文化的側面

ヨーロッパのムスリムは一枚岩ではなく、宗派(スンニ派、シーア派、アフリ派など)、出自、言語、世俗性の度合いによって多様です。多くは現地文化と融合しつつ、宗教行事(ラマダン、イードなど)、食文化(ハラール)、地域のモスクや宗教教育を通じて信仰を維持しています。また、文化的・経済的貢献も顕著で、料理、芸術、学術、スポーツなど多くの分野で存在感を示しています。

課題と展望

  • 統合と格差:教育機会、雇用、住宅での格差是正は引き続き重要な課題です。若年層の失業や疎外感が社会的緊張や過激化のリスクと結びつくことが指摘されています。
  • 宗教の自由と公共政策:服装規制、宗教教育、モスク建設など、公的な規制と宗教の自由とのバランスをどう取るかが主要な政策課題です。
  • 多様性のマネジメント:移民を受け入れる社会側の適応(多文化主義と同化政策の調整)、および移民側の言語習得や市民権取得の促進が、安定した共生の鍵となります。
  • 国際情勢との連動:中東・北アフリカの情勢や移民政策の変化、難民流入は今後もヨーロッパの宗教的景観に影響を与えるでしょう。

まとめ:ヨーロッパのイスラム教徒は歴史的に長い定着を持つ地域もあれば、近年の移民によって形作られたコミュニティもあります。人口動向、法制度、社会的議論は国ごとに大きく異なり、多面的な対応が求められています。将来は人口動態や政策、国際情勢次第で変化し続けるでしょう。

質問と回答

Q:ヨーロッパで2番目に大きく、最も急速に成長している宗教は何ですか?


A:イスラム教はヨーロッパで2番目に大きく、最も急速に成長している宗教です。

Q:イスラム教はどのようにして南ヨーロッパに入ったのですか?


A: イスラム教は8世紀から10世紀にかけて、北アフリカの「ムーア人」の侵略によって南ヨーロッパに入りました。

Q:イスラム教徒のペルシャ征服とは何ですか?


A: イスラム教徒のペルシャ征服は、現在イランとして知られている地域の大部分をイスラム教が支配することになった一連の紛争と戦争でした。

Q:オスマン帝国はいつヨーロッパ南東部に進出したのですか?


A: オスマン帝国は14世紀と15世紀にヨーロッパの南東部に進出しました。

Q:「イスラム教徒のヨーロッパ」の一部と考えられているのはどの国ですか?


A: アルバニア、コソボ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、トルコ、アゼルバイジャン、カザフスタン、ロシアの北コーカサス地方です。
Q:2010年には、ヨーロッパに何人のムスリムが住んでいると推定されますか?A:2010年までに、推定4400万人のムスリムがヨーロッパに居住していました(6%)。

Q: 西ヨーロッパで最もイスラム教徒が多い国はどこですか?


A:フランスは西ヨーロッパで最もイスラム教徒の多い国であり、全人口の12.5%を占めています。


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