アーカイブとは:定義・役割・保存方法・アーキビスト入門
アーカイブの定義・役割・保存方法を基礎から詳解。アーキビスト入門や実務で使える保存術・運用ノウハウをわかりやすく紹介。
アーカイブとは、記録の集合体のことです。この言葉は、これらの記録が保管されている場所にも使われます。アーカイブは、個人や組織の人生の過程で作成された記録で構成されています。一般的にアーカイブは、恒久的または長期的に保存するために選択された記録で構成されています。記録はメディアを問わず、書籍やその他の出版物とは異なり、通常は未発表のものです。アーカイブは、企業や政府などの大規模な組織によって作成されることもあります。アーカイブズは、図書館とは異なり、唯一無二の記録を保持しています。アーカイブズは活動の「副産物」である情報を保持しているのに対し、図書館は特別に作成された情報「製品」を保持していると表現できます。名詞や動詞としての「アーカイブ」はコンピュータサイエンスに関連しているが、「アーカイヴ」という言葉は正しい用語である。
アーカイブズで働く人をアーキビストと呼ぶ。アーカイブズにある情報や資料を整理、保存し、利用できるようにするための研究と実践をアーカイブズ科学といいます。
アーカイブの役割
- 証拠の保存:政府・企業・個人の意思決定や活動の証拠を残し、法的・行政的な裏付けや説明責任に役立てます。
- 文化遺産の保持:歴史研究や文化的記憶の継承に不可欠な一次資料を保存します。
- 研究・教育資源:学術研究、報道、教育、公共利用のための原資料を提供します。
- 組織運営支援:過去の記録を参照することで業務の継続性や意思決定の根拠を提供します。
アーカイブの種類
- 公的アーカイブ(国立公文書館、地方公文書館など)
- 企業アーカイブ(企業の業務記録や経営資料)
- 私設・個人アーカイブ(研究者・作家・市民のコレクション)
- 宗教機関や学術機関のアーカイブ
- デジタルアーカイブ・ウェブアーカイブ(電子メールやウェブページの保存)
記録の選別と収集(保存のプロセス)
アーカイブ化には、まずどの記録を保存するかを判断する「選別(評価)」があり、その後に「収集(取得)」して恒久的に管理します。選別の判断基準には以下が含まれます:
- 法的・行政的価値(保存義務や証憑性)
- 歴史的・文化的価値(将来の研究や文化継承への寄与)
- 保存可能性(保存コストや物理的条件)
- 利用需要(利用される見込み)
整理と記述
受け入れた資料は整理(アレンジメント)され、記述(ディスクリプション)して利用者が検索・利用できるようにします。主なポイント:
- 階層的な構成(ファンド=fonds、シリーズ、アイテム)で整理するのが基本。
- 検索や管理のための目録やファインディング・エイド(目録記述)を作成。
- メタデータ規格(例:Dublin Core、EAD、ISAD(G) など)を用いて記述の統一性を保つ。
保存と管理(保存方法)
保存は物理資料とデジタル資料で手法が異なりますが、どちらも資料の長期的な完全性を守ることが目的です。
- 物理資料:温度・湿度管理、適切な収納材(酸性を含まない保存箱)、直射日光や害虫の防止、定期的な点検と修復。
- デジタル資料:ファイル形式の選択(長期保存に適した非可逆でない形式、例:TIFF、PDF/Aなど)、チェックサムやハッシュによる整合性チェック、複数の場所へのバックアップ、フォーマットの移行(マイグレーション)やエミュレーション戦略。
- 複製と分散:オリジナルの物理保管に加えデジタル複製を作成し、地理的に分散して保管することが推奨されます。
利用と公開
アーカイブは保存だけでなく利用提供が重要です。一般的な提供方法:
- 所蔵目録の公開、オンライン検索システムの提供
- 閲覧室での原本利用、複写・デジタル画像の提供
- 展示や解説、教育プログラム、デジタル公開による広報
- ただし、個人情報や著作権等の理由でアクセス制限がかかる場合があります。
アーキビスト入門
アーキビストは単に資料を保管する人ではなく、資料の選別・整理・保存・提供までを行う専門職です。主な業務と求められるスキル:
- 業務:受入・目録作成・保存管理・利用支援・展示企画・資料救済(災害対応)など
- スキル:資料史料学、メタデータ設計、保存修復の基礎知識、デジタル技術(ファイル管理、チェックサム、データベース)、法令(著作権・個人情報保護)やコミュニケーション能力
- 教育・資格:図書館情報学やアーカイブ学の修士課程、専門研修や現場での実務経験が重視されます。プロフェッショナル団体や学会の研修も有用です。
- 倫理:記録の真正性・説明責任・利用者の権利尊重などが求められます。
デジタルアーカイブ特有の課題
- 劣化(ビットロット)や媒質の老朽化:保存媒体の物理的寿命やデータ腐敗に対する監視が必要です。
- フォーマット廃止:ソフトウェアやファイル形式の陳腐化に備え、定期的なフォーマット変換やエミュレーションを行います。
- メタデータと真正性:出所(プロヴェナンス)や変更履歴(イベントメタデータ)を記録して真正性を担保します(例:PREMISなど)。
- ウェブアーカイブ:動的コンテンツやリンク切れ、権利処理など独自の困難があります。Wayback Machineのような事例もありますが、機関独自の収集方針が重要です。
法的・倫理的配慮
- 個人情報保護やプライバシーの扱い:公開前に慎重な検討と必要な匿名化やアクセス制限が必要。
- 著作権と利用許諾:公開・複写の可否や期間の確認と権利者との交渉。
- 機密性・機関内規程:行政機関の文書などは開示時期や手続きに制約がある場合があります。
個人ができる保存の基本(すぐできる対策)
- 原本の保管環境:高温多湿・直射日光・害虫を避ける。重要書類は耐酸性の箱やフォルダに保管。
- デジタル化:写真や書類は高解像度でスキャン(TIFFやPDF/A推奨)。ただしデジタル化はアクセスを容易にする手段であって、必ずしも原本代替にはならない。
- ファイル管理:分かりやすいファイル名、日付(ISO形式:YYYY-MM-DD)、バージョン管理を行う。
- バックアップの原則(3-2-1ルール):少なくとも3部、2種類以上の媒体、1つはオフサイトに保管。
- 長期保存フォーマット:可能ならオープンで広くサポートされたフォーマットを使用(例:TIFF、PDF/A、Plain text)。
参考・関連用語
- アーカイブ(Archives)
- アーキビスト(Archivist)
- ファンド(Fonds)/アクセション(Accession)
- メタデータ(Metadata)、目録(Finding aid)
- マイグレーション(Migration)、エミュレーション(Emulation)
- PREMIS、Dublin Core、EAD、ISAD(G) などの規格
アーカイブは単なる「物置」ではなく、記録の保存・利用・公開を通じて社会の記憶を支える重要な機関です。保存と利用のバランス、法的・倫理的配慮、そしてデジタル時代の技術的対応がますます重要になっています。アーキビストを目指す人も、個人で記録を守りたい人も、上記の基本を踏まえて適切な管理を心がけてください。
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質問と回答
Q: アーカイブとは何ですか?
A: アーカイブとは、永久保存または長期保存のために選択された記録のコレクションのことです。
Q: アーカイブとライブラリーの違いは何ですか?
A: アーカイブは、活動の副産物であるユニークな記録を保管し、ライブラリーは、特別に作成された情報製品を保管します。
Q: アーキビストの役割は何ですか?
A:アーキビストとは、文書館で働く人のことで、文書館にある情報や資料を整理、保存し、アクセスを提供する役割を担っています。
Q: アーカイブスの情報源は何ですか?
A: アーカイブは、個人や組織の生活の過程で作成された記録で構成されており、企業や政府などの大組織が作成することもあります。
Q: 記録のコレクションを表す正しい用語は何ですか?
A:記録の集合体の正しい用語は「アーカイブス」です。
Q: アーカイバル・サイエンスとは何ですか?
A: アーカイブズ科学とは、アーカイブズにある情報や資料を整理、保存し、アクセスを提供するための研究と実践のことです。
Q: アーカイブスの記録は常に公開されているのですか?
A:いいえ、アーカイブズの記録は、書籍やその他の出版物とは異なり、通常は未発表のものです。
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