気体の運動論(運動分子論)とは:分子運動で説明する圧力・温度・体積

気体の運動論を図解で解説:分子運動と衝突から圧力・温度・体積の関係をわかりやすく理解

著者: Leandro Alegsa

気体の運動論は、圧力、温度体積など気体の全体的な性質を、分子の構成と運動によって説明しようとするものである。この理論では、初期の科学者が考えていたように、圧力は分子同士が押し合うことで発生するのではないとされている。その代わり、圧力は分子同士や容器とぶつかり合うことで発生する。運動論は、運動分子論衝突論とも呼ばれる

運動論には、大きく分けて3つの要素があります。

  1. 気体を構成する粒子(分子や原子)が非常に多数存在すること。
  2. 各粒子はランダムに、直線運動と衝突を繰り返すこと。
  3. 衝突は瞬間的で、弾性衝突(運動エネルギーの一部が内部エネルギーに変わらない)で近似できること。

基本的な仮定と理想気体との関係

運動論はまずいくつかの近似を置きます。分子の体積は全体の体積に比べて無視できるほど小さく、分子間の相互作用(引力・斥力)は衝突時以外では無視できるとします。これらの条件下で導かれる結果がいわゆる理想気体の法則です。実験的に観測される状態方程式 pV = NkT(p:圧力、V:体積、N:粒子数、k:ボルツマン定数、T:絶対温度)は、運動論から理論的に導出されます。

圧力の微視的理解

気体分子が容器の壁に衝突して力を伝えることが圧力の本質です。単純化した導出では、質量密度を ρ、分子の速度の二乗の平均を <v^2> とすると、

p = (1/3) ρ <v^2>

という関係が得られます。これを用いると、温度が分子の運動エネルギーに対応することが明瞭になります。

温度と平均運動エネルギー

運動論では温度は分子一つあたりの平均運動エネルギーと直接結びつきます。単原子分子の三次元系では、1粒子あたりの平均運動エネルギーは

(1/2) m <v^2> = (3/2) kT

となります。ここで m は分子の質量、k はボルツマン定数、T は絶対温度です。この式が意味するのは、温度を上げれば分子の平均速度の二乗が増加し、それが圧力上昇や気体の状態変化につながるということです。

速度分布とマクスウェル–ボルツマン分布

気体中の分子速度は一様ではなく分布を持ちます。熱平衡状態ではマクスウェル–ボルツマン分布に従い、ある速度を持つ分子の割合が確率的に定まります。分布から得られる代表的な速度には次のものがあります。

  • 最頻速度 v_mp(最も頻繁に観測される速度)
  • 平均速度 <v>
  • 二乗平均速度 v_rms = sqrt(<v^2>)

これらは温度と分子質量によって決まり、軽い分子ほど同じ温度で速く動きます。

衝突、平均自由行程、輸送現象

分子は互いに衝突を繰り返すため、自由に一直線運動する距離(平均自由行程 λ)には限りがあります。平均自由行程と衝突頻度は拡散、粘性、熱伝導といったマクロな輸送係数に影響します。これらは運動論から導かれる重要な結果で、気体の流れや熱伝導の理解に役立ちます。

限界と実在気体への拡張

運動論(理想気体近似)は多くの状況で有効ですが、次の場合には修正が必要です。

  • 高圧や低温で分子間力が無視できないとき(気体の凝縮や相転移が発生)
  • 分子の内部自由度(回転・振動)を考慮しなければならない場合(比熱やエネルギー分配の違い)
  • 量子効果が支配的な極低温領域や高密度領域

これらの状況では、ヴァン・デル・ワールスの状態方程式や量子統計(フェルミ・ディラック分布、ボース・アインシュタイン分布)などの拡張理論が用いられます。

歴史的背景と応用

運動論はダニエル・ベルヌーイの頃から考えられ、クラウジウス、マクスウェル、ボルツマンらによって発展しました。現代では気体の基礎理論にとどまらず、プラズマ物理、気体力学、天体物理、化学反応速度論、計算流体力学(分子動力学シミュレーション)など幅広い分野で応用されています。

以上が気体の運動論の要点です。基本的なアイディアは「マクロな性質はミクロな運動の統計によって説明できる」というものです。具体的な導出や数学的扱いはさらに詳細になりますが、ここでは直感と主要な結果をまとめました。



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