マラヤーリ族(マラヤーラム語話者)とは — ケーララ州の民族、人口・宗教

マラヤーリ族(マラヤーラム語話者)—ケーララ発祥の約3,900万人。人口・宗教分布(ヒンドゥー・イスラム・キリスト)やUAEなどの移住事情を解説。

著者: Leandro Alegsa

マラヤーリ族マヤーリー族とも表記される)は、マラヤーラム語を母語とする人々である。現在のインドのケーララ州南部を原産とし、言語・文化を共有する民族集団を指す。伝統的にはケーララ州内で多様な宗教・カースト・職業集団に分かれているが、共通してマラヤーラム語が日常語となっている。

人口と分布

マラヤーラム語を母語とする人は世界で約3,900万人と推定され、そのうち約3,400万人がインドに在住している。さらに、中東諸国や欧米、オーストラレーシアにも大きなディアスポラ(海外移住者コミュニティ)が存在し、特に湾岸諸国では多くの労働者・専門職が暮らしている。例えば、約100万人がアラブ首長国連邦に住んでいるとされるほか、サウジアラビア、クウェート、カタール、バーレーン、オマーンなどにもコミュニティがある。

宗教構成

ヒンズー教徒が55%イスラム教徒が27%キリスト教徒が19%と報告されることが多い(いずれも概数で、四捨五入による差が出る場合がある)。ケーララでは特にシリア系キリスト教徒(セント・トーマス派、通称「シリア・クリスチャン」)や、歴史的に独自のイスラム文化を育んだムスリム(マップラとも呼ばれる)、複雑なカースト体系を背景にしたヒンドゥーの諸共同体が共存している。

言語と文字

マラヤーラム語はドラヴィダ語族に属し、隣接するタミル語と近縁であるが独自の発展を遂げた。マラヤーラム文字はブラーフミー系の表記体系から派生し、子音・母音を組み合わせる合成文字(アブギダ的要素)を含む。現代では公用語・教育語として学校や行政で使われるほか、文学・メディア・映画でも広く用いられている。

歴史と起源

マラヤーリ族の歴史は、南インドの古代王朝や海上交易の歴史と深く結びついている。ケーララは古くから香辛料貿易で知られ、アラブ・ヨーロッパ・東南アジア諸文化と接触することで独自の宗教・社会構造を形成してきた。中世以降、植民地期や近代化を経て教育水準が向上し、幅広い社会変動が起きた。

社会・文化の特徴

  • 高い識字率と教育水準:ケーララ州はインド国内でも識字率や保健指標が高く、教育に対する意識が強い。
  • 家族と共同体:伝統的には拡大家族やマトリライン(母系)を重視する風習が一部に見られたが、近代化に伴い多様化している。
  • 海上・移民文化:海上交易と海外出稼ぎ(特に湾岸諸国への出稼ぎ)が経済・文化面に大きな影響を与えている。

文学・芸術・映画

マラヤーラム文学は長い歴史を持ち、近代詩人や作家を多数輩出している。演劇や舞踊(カタカリ等)、音楽も豊かで、映画産業(通称「モリウッド」)は地域文化の重要な表現媒体となっている。宗教的・社会的テーマを扱う作品が多く、インド国内外で評価を受ける作品もある。

祝祭日・食文化

  • 代表的な祝祭:Onam(オーナム)、Vishu(ヴィシュ)、イスラム教・キリスト教の主要祝祭(イード、クリスマス)
  • 食文化:ココナッツ、米、魚介類、香辛料を多用する料理が中心。地域ごとに多様な郷土料理が存在する。

経済と移住の影響

ケーララ経済では農業・漁業に加え、海外からの送金(リマネンス)が重要な役割を果たす。多くのマラヤーリが中東や欧米に働きに出ており、これが地域の生活水準や消費文化に直結している。また、IT・教育・ヘルスケア分野での専門職も増えている。

現在の課題と展望

高い教育水準と社会指標を持つ一方で、若年層の雇用確保、都市化・高齢化に伴う社会保障の整備、伝統文化の継承と近代化の両立など課題も存在する。しかし、活発な海外交流と旺盛な文化創造力により、国内外での存在感は今後も維持・強化されると見られている。



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