アーサー・C・クラーク賞 — 英国SF小説の最優秀賞:概要・受賞基準・歴史
アーサー・C・クラーク賞は、優れたSF作品(主に長編小説)に贈られるイギリスの権威ある文学賞です。対象は前年度に英国で最初に出版された長編SF小説で、作者の国籍を問わず、英語原著や英国で初めて刊行された翻訳作品も対象になることがあります。受賞者には金銭的な賞金が授与され、賞金額は毎年増額されるのではなく「賞を贈られた年」を示すポンド額が支払われるのが伝統です(例:第1回1987年の賞金は1987ポンド、2011年の受賞時は2011ポンド)。
受賞基準と対象作品
- 出版地:その小説が前年度に英国で最初に出版されていること。
- 形式:通常は長編のフィクション(SFジャンル)。短篇やノンフィクションは対象外。
- 言語・翻訳:英語での初出が多いが、翻訳作品であっても英国で初めて出版された年であれば対象となる場合がある。
- ジャンル:SFの要素を中心に据えた作品が対象。純文学寄りの作品でもSF的設定やテーマが重視されれば審査対象となることがある。
選考・審査の流れ
受賞作は専門の審査員団によって選ばれます。審査は通常、長いリスト(ロングリスト)から短いリスト(ショートリスト)を経て最終候補を決定し、その中から受賞作が選ばれます。審査員は以下の組織から選出されることが慣例です:
- 英国SF協会(British Science Fiction Association)
- SF財団(Science Fiction Foundation)
- 第3のグループ(近年はSFクラウズネスト〈SF Crowsnest〉など)
運営はセレンディップ財団(Serendip Foundation)が担当しており、候補選定や授賞式の調整を行います。
歴史と意義
この賞はSF作家のアーサー・C・クラークが資金を提供して1987年に創設されました。以来、英国で刊行された優れたSF長編を表彰する主要な賞の一つとして定着し、国内外の作家にとって重要な栄誉となっています。受賞歴は作家の評価向上や書籍の読者拡大につながることが多く、ジャンル全体の活性化にも寄与してきました。
賞金と授賞式
賞金:伝統的に「受賞年の西暦と同じ数のポンド」が賞金として支払われます(例:第1回1987年=1987ポンド、2011年=2011ポンド)。この方式は年ごとに賞金額が変わるためユニークな慣例となっています(原文の例は1987年と2011年です)。
授賞式:近年はロンドンで開催される映画祭「SCI-FI-LONDON」の初日夜に授賞式が行われることが多く、作家・編集者・批評家・ファンが集うイベントになっています。
現在の運営と参考点
賞の運営はセレンディップ財団が管理し、審査員や外部パートナーとの連携で進められます。候補作品の公表や過去の受賞作リスト、審査基準の最新情報は公式発表や関連するSF団体の告知を参照してください。
補足:本文中の賞の仕組みや慣例(対象範囲、賞金の在り方、授賞の場など)は変化することがあります。最新の応募要項や受賞結果を確認する際は、公式資料や主催団体の発表を確認することをおすすめします。
受賞者一覧
- 1987年:マーガレット・アトウッド著「ハンドメイズ・テイル(侍女の物語)」。
- 1988年:ジョージ・ターナー著「海と夏
- 1989:レイチェル・ポラック著「消せない火
- 1990:ジェフ・ライマン著「チャイルド・ガーデン
- 1991年:テイクバック・プレンティ(コリン・グリーンランド著
- 1992年:パット・キャディガン著「シナーズ
- 1993年:Marge Piercy著『Body of Glass』(米国では『He, She and It』として出版。)
- 1994:ジェフ・ヌーン著「Vurt
- 1995:パット・ケイディガン著「フールズ
- 1996:ポール・J・マコーリー著「フェアリーランド
- 1997年 アミタフ・ゴーシュ著『カルカッタ・クロモゾーム』(原題:The Calcutta Chromosome
- 1998:メアリー・ドリア・ラッセル著「The Sparrow(雀)」。
- 1999:ドリーミング・イン・スモーク」トリシア・サリバン著
- 2000:ブルース・スターリング著「ディストラクション
- 2001年:チャイナ・ミエヴィル著『パーディド・ストリート・ステーション』(Perdido Street Station
- 2002:ボールド・アズ・ラブ(Gwyneth Jones著
- 2003:クリストファー・プリースト著「The Separation
- 2004:ニール・スティーブンソン著「クイックシルバー
- 2005:アイアン・カウンシル(チャイナ・ミエヴィル著
- 2006:Air by Geoff Ryman
- 2007:ノヴァ・スイング by M・ジョン・ハリソン
- 2008:ブラック・マン(リチャード・モーガン
- 2009:ソング・オブ・タイム」イアン・R・マクラウド著
- 2010:中国ミエヴィルの「街と都市
- 2011:ローレン・ビュークス著「Zoo City
- 2012:ジェーン・ロジャース著『ジェシー・ラムの遺言』(原題:The Testament of Jessie Lamb
- 2013:クリス・ベケット著「ダーク・エデン
- 2014:アン・レッキー著「アンシラリージャスティス
- 2015:ステーション・イレブン』エミリー・セントジョン・マンデル著
- 2016:エイドリアン・チャイコフスキーの「時の子供たち
- 2017:コルソン・ホワイトヘッド著『地下鉄道』(原題:The Underground Railroad
- 2018:アン・チャーノックの「時の始まる前の夢