メラトニンとは?睡眠・概日リズム・松果体の役割とサプリ解説

メラトニンの基礎から睡眠改善・概日リズム調整、松果体の役割やサプリの効果と安全性まで分かりやすく解説。

著者: Leandro Alegsa

メラトニンは、動物、植物、微生物に存在するホルモンです。動物では、メラトニンの濃度は1日周期で変化し、主に夜間に上昇します。メラトニンは、いくつかの生物学的機能の概日リズム(サーカディアンリズム)を調整・同期させる役割を持ち、「暗黒のホルモン」とも呼ばれます。

メラトニンは、血液脳関門の外側にある松果体で主に合成・分泌されます。合成は必須アミノ酸トリプトファンから始まり、トリプトファン→セロトニン→メラトニンという経路を経ます。光情報は網膜から視交叉上核(SCN)を介して松果体に伝えられ、明るい光があると分泌が抑制され、暗くなると分泌が促進されます。

作用機序と生理的役割

メラトニンは血中に放出され、全身の組織にあるメラトニン受容体(主にMT1、MT2)に作用します。これにより睡眠-覚醒リズムの調節、体温低下の誘導、概日リズムの位相調整(位相シフティング)などを行います。また、メラトニンは強力な抗酸化物質としても働き、直接的にフリーラジカルを消去したり、抗酸化酵素の活性を高めて細胞やDNAを保護すると報告されています。

体内での分布と補助的生産

松果体以外にも、消化管や網膜、免疫細胞などでもメラトニンが合成されることが知られています。食物にも少量含まれており、例えばタルトチェリーやナッツ類にはメラトニンが含まれることがあります。

臨床応用とサプリメント

ヒトへのメラトニン補充は、睡眠障害や時差ぼけ、夜勤などの概日リズム障害の治療や調整に用いられます。市販のメラトニンは短時間作用型と徐放型があり、用途に応じて使い分けられます。米国ではメラトニンは医薬品ではなく栄養補助食品として市販されており、規制は医薬品ほど厳格ではありません。米国食品医薬品局(FDA)もサプリメントとして扱っています。

一方で、欧州やオーストラリアでは、特定の処方薬としての徐放性メラトニン製剤が高齢者の不眠に対して承認されています。例えば、55歳以上を対象とした処方の徐放型メラトニンは、複数の臨床試験で小〜中等度の効果が報告されていますが、効果の大きさや長期安全性については議論があります。

使用法の実際(タイミングと用量)

  • 睡眠導入目的:就床の30〜60分前に服用することが一般的。低用量(0.1〜0.5 mg)でも位相調整効果や入眠改善が得られる場合があり、3 mgや5 mgなど高用量を用いる例もありますが、副作用が増えることがあります。
  • 時差ぼけ:目的地の現地時間の夜に合わせて服用する(到着後の就寝時に服用する、あるいは渡航前に位相調整する方法など)。
  • シフトワーク:勤務と睡眠のスケジュールに合わせたタイミングで服用することで、覚醒-睡眠リズムの調整を図る。
  • 慢性不眠:徐放型や短期の認知行動療法と併用されることがあるが、医師と相談の上で使用することが推奨される。

効果のエビデンス

研究によれば、メラトニンは概日リズム障害(時差ぼけ、視交叉上核由来の位相異常)や一部の入眠障害に対して有益とされています。高齢者の不眠に対する徐放型メラトニンは一定の有効性が示されるものの、若年者の慢性不眠に対する効果は限定的な報告もあります。その他の用途(抗がん作用、抗酸化による疾患予防など)は基礎研究や予備的臨床データがあるものの、確立された臨床的推奨には至っていません。

副作用と注意点

一般的に短期間の低用量使用では安全性は高いとされますが、以下の点に注意が必要です。

  • 眠気、めまい、頭痛、悪夢や夢の増加、日中の眠気などが報告されることがある。
  • 薬物相互作用:CYP1A2阻害薬(例:フルボキサミン)によりメラトニンの血中濃度が上昇すること、ワルファリンなどの抗凝固薬や免疫抑制薬との相互作用の可能性が指摘されているため、常用薬がある場合は医師に相談すること。
  • 妊娠中・授乳中の安全性は確立されていないため通常は使用を避けるか医師の管理下でのみ使用する。
  • 小児への使用:概日リズム障害や発達障害に伴う睡眠問題で処方されることはあるが、長期的な発達への影響については注意が必要で、専門医の指導が重要。
  • 慢性疾患やホルモン感受性疾患(例:うつ病、糖代謝異常、自己免疫疾患など)を持つ人は使用前に医師と相談する。

測定と診断への利用

メラトニンは概日リズムの指標として臨床研究で用いられます。例えば、暗所でのメラトニン分泌開始(DLMO:Dim Light Melatonin Onset)を測定することで個人の概日位相を評価できます。測定は血液、唾液、尿中(代謝物6-スルファトキシメラトニン)で可能です。

まとめ

メラトニンは概日リズムの調節に重要な役割を持ち、睡眠障害や時差ぼけなどで臨床的に活用されています。松果体で夜間に合成されるほか、抗酸化作用など多面的な生理作用を持ちます。サプリメントとして広く利用可能ですが、用量・タイミング・薬物相互作用や個人の健康状態を考慮して、必要に応じて医師や薬剤師と相談して使用することが推奨されます。

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質問と回答

Q: メラトニンとは何ですか?


A:メラトニンは、動物、植物、微生物に存在するホルモンです。

Q:メラトニンは動物ではどのような働きをしているのですか?


A:いくつかの生物学的機能の概日リズムを駆動します。

Q: メラトニンは動物のどこで作られるのですか?


A:血液脳関門の外側にある松果体で生成されます。

Q: メラトニンは体内でどのように作用するのですか?


A: ホルモンとして作用し、血液中に放出されます。メラトニンはメラトニン受容体に作用します。また、強力な抗酸化物質であるため、直接的に作用し、DNAを保護します。

Q: 人間はメラトニンのサプリメントを飲むことができますか?


A:はい、人間用のメラトニンサプリメントを与えることができます。

Q: メラトニンはFDAによって医薬品とみなされますか?


A: いいえ、米国食品医薬品局(FDA)では、医薬品ではなく、栄養補助食品として分類されています。

Q: 欧州医薬品庁とオーストラリアでは、どのようなメラトニン製品の使用が承認されていますか?


A: 55歳以上の方を対象とした処方箋のみのメラトニン製剤が、わずかな効果しか認められなかったものの、2007年に欧州医薬品庁から、2009年にオーストラリアで使用が承認されました。


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