メタボリズムとは 日本発の1960年代建築運動と代表作・特徴解説
メタボリズムとは、1960年頃に日本で始まった建築運動(建築様式)です。第二次世界大戦後の急速な都市化と復興の時代に、都市と建築を「生物のように成長・変化するもの」と捉え直す試みとして登場しました。主なメンバーには粟津潔、川添登、菊竹清訓、黒川紀章、槇文彦、大高正人、丹下健三らが名を連ねます。彼らは1960年の世界デザイン会議のために「The proposals for a new urbanism」という英日併記の短い冊子を発表し、自らの理念を国外にも発信しました。
理念と特徴
メタボリズムの中心的な考え方は、都市や建築を固定的・永久的なものとみなすのではなく、
- 成長と更新:建物や都市が部分的に取り替えられ、増殖・縮小・再配置されることで時間とともに変化してゆくこと。
- モジュール化(カプセル化):住戸や機能を独立したユニット(カプセル)として設計し、必要に応じて差し替えや増設が可能な構成。
- メガストラクチャー:巨大な骨格(メガストラクチャー)を据え、その上に可変なユニットを付け替えることで多様な都市システムを実現する発想。
- 技術楽観主義:高度成長期の技術革新を前提に、機械化・工業化された建築プロセスを積極的に取り入れること。
- 人間中心の密度ある住宅:急増する都市人口に対応するための集合住宅や新しい都市形態の提案。
代表的なプロジェクト・作品
メタボリストたちは、実験的なプロポーザルから実際の建築まで幅広く手がけました。代表的な例をいくつか挙げます。
- 中銀カプセルタワー(黒川紀章、1972):1つ1つが独立した「カプセル」ユニットとなる集合住宅。丸窓を持つ長方形のカプセルをコアに差し込む形で組み、将来的に取り替え可能としたプラグイン式の思想を体現しました。建築当初は交換・更新を前提としていましたが、実際には維持・更新の難しさや所有問題から計画通りには進まず、最終的に解体の議論と保存問題が大きな社会的関心を呼びました(※後述参照)。
- 菊竹清訓の「海の都市(Marine City)」やスカイハウス:海上や空間を利用した都市模型的な提案や、入れ子状の居住実験など、可変性を重視したプロポーザルで知られます。
- 丹下健三の東京再開発案(東京湾プランなど、1960年代の提案):大規模な都市構造の再編成を目指す計画で、メタボリズムの考え方が大きなスケールで反映されました。丹下はメタボリズムの理念を都市計画へ応用する中心的存在でもありました。
- その他のプロジェクト:メタボリズムのメンバーや関連者は、都市の骨格を示す大型提案(メガストラクチャー)や可変住居の模型・展示を数多く発表し、1970年の大阪万博などでも影響を与えました。
歴史的意義と影響
メタボリズムは、戦後日本の高度経済成長期における都市問題へのアプローチとして、国内外で大きな反響を呼びました。米欧の建築界にも刺激を与え、1970年代以降の都市計画や集合住宅の考え方に影響を残しました。特に「可変性」や「プレファブ化(工場生産)」、「尺度の異なる構造の組合せ」といった概念は、その後の建築・都市設計に重要な示唆を与えています。
評価と課題(保存・実現の困難さ)
理論的には魅力的でも、実際に「更新可能なカプセル」を長期にわたって維持・運用することは容易ではありませんでした。技術的問題・経済性・所有権・法規制・住民の生活実態などが絡み、多くの計画は当初の理想どおりには実現しませんでした。中でも中銀カプセルタワーは保存か解体かを巡る議論の象徴的存在となり、最終的に2022年に解体されるなど、メタボリズム建築の保存問題は建築史上の重要な課題を提示しました。
今日の受容と再評価
近年は、サステナビリティや循環型社会の観点から「部分更新」「モジュール化」といったメタボリズム的発想に再び注目が集まっています。また、デジタル技術やプレハブ技術の進化により、当時よりも実用的に可変建築を実現できる可能性も指摘されています。一方で、当時の思想が抱えていた近代化至上の側面や、実装時に生じた問題点も批判的に再検討されています。
参考に覚えておくポイント
- メタボリズム=生物のように変化する都市・建築の提案
- 特徴:メガストラクチャー、モジュール化、交換可能なユニット、技術楽観主義
- 代表作:中銀カプセルタワー(黒川紀章)をはじめ、菊竹清訓・丹下健三らの都市計画やプロポーザル
- 現代への影響:可変性やプレファブ、循環的な都市設計などの考え方が再評価されている
メタボリズムは、理想と現実の狭間で様々な教訓を残した運動です。今日の都市課題に対しても示唆に富む概念を含んでおり、歴史的意義とともに技術や社会の変化に応じた再解釈が進められています。


メタボリズムの例としては、東京の静岡放送会館が有名です。
質問と回答
Q:メタボリズム・アーキテクチャとは何ですか?
A:メタボリズム建築とは、1960年頃に日本で生まれた建築物の設計スタイルです。
Q:メタボリズムのメンバーは誰だったのですか?
A:粟津潔、川添登、菊竹清訓、黒川紀章、槇文彦、大高正人、丹下健三などがメタボリズム・グループのメンバーです。
Q:メタボリズムグループは、都市についてどのように考えていたのでしょうか?
A:メタボリズムグループは、都市を長い時間をかけて変化する生き物と考えていました。
Q: メタボリズム・グループはどのようなプロジェクトに取り組んでいたのですか?
A:メガストラクチャーと呼ばれる大規模な都市計画を多く手がけました。
Q:「中銀カプセルタワー」とは何ですか?
A:中銀カプセルタワーは、黒川紀章が設計した集合住宅で、丸窓が1つ付いた長方形のブロックから構成されています。ブロックは、必要に応じて追加、移動、削除が可能でした。
Q: なぜ黒川は、中銀カプセルタワーに新しいカプセルを設置することを計画したのでしょうか?
A: 黒川は、カプセルタワーを常に最新の状態に保つために、古いカプセルから新しいカプセルへの入れ替えを計画しました。
Q: 中銀カプセルタワーに住んでいる人たちは、何をするつもりですか?
A: 中銀カプセルタワーに住んでいる人たちは、中銀カプセルタワーを取り壊して、もっと大きなビルに建て替える予定です。