イングランドには6つの大都市郡があり、それぞれが複数の都市とその周辺を含む広域的な都市圏をカバーしています。これらの大都市郡は1974年の地方自治制度改編(Local Government Act 1972)によって創設され、各郡はさらにいくつかの大都市圏や自治体(メトロポリタン・ボロウ/区)に分かれています。代表的な大都市郡としては、グレーター・マンチェスター、ウェスト・ミッドランズ、ウエスト・ヨークシャー、マーシーサイド(リヴァプールを含む)、サウス・ヨークシャー、タイン・アンド・ウィアなどがあります。

歴史的経緯としては、1974年創設後の1980年代に制度の見直しが進み、1986年に大都市郡評議会(metropolitan county councils)の多くが廃止されました。1986年以降、ランスティングは存在しなくなったという経緯があり、郡レベルの直接的な議会運営は縮小されました。

評議会廃止後の各種業務の受け皿として、多くの権限はそれぞれの自治体単位、すなわちメトロポリタン・ボロウや区に移されました。具体的には、教育や環境保全、地域計画などの多くが各自治体に移管され、各区が実質的に単一的な行政単位として機能するようになりました(これらはしばしば区に引き継がれ、自治体がユニタリー・オーソリティとして扱われる場合もあります)。一方で、交通、警察、消防、廃棄物処理などの広域的に行う必要があるサービスについては、複数の自治体が参加するジョイント・ボードや共同機関(joint boards/combined authorities)が設けられ、共同で運営されています。

人口・人口密度の特徴は郡ごと、また郡内の中心市部と周辺部で大きく異なります。中心市街地は高密度で商業・産業の集積が見られる一方、郊外や郡の一部には比較的低密度の地域も存在します。例えば中心市を含む地域では高い人口密度が観察されることが多く、リバプールの中心部のように密集した市街地と、ドンカスターなどのように人口密度が低めの地域が同一郡内に混在するケースもあります。

行政の仕組みと最近の動向としては、1986年以降の分権化と並行して、2010年代以降は広域的な課題に対応するための「コンバインド・オーソリティ(combined authorities)」や選挙で選ばれる直接選挙制のメイヤー(市長)導入が進みました。たとえばグレーター・マンチェスターやウェスト・ミッドランズなどでは、広域交通政策や経済振興を統括するためのコンバインド・オーソリティが設立され、一定の税源や権限を持って地域運営を行っています。

まとめると、イングランドの大都市郡は1974年に成立して以来、1986年の評議会廃止とその後の自治体への権限移譲、さらに近年の広域連携の強化といった変遷を経てきました。制度上は郡レベルの議会がなくても、共同運営機関やコンバインド・オーソリティを通じて都市圏全体の重要サービスが維持されており、人口・経済・インフラの面で重要な単位として機能し続けています。