アスピレーション(送気)とは:子音の送気・IPA表記と言語別の例
アスピレーション(送気)の仕組みとIPAのʰ表記、英語・ヒンディー語・北京語での違いや具体例を初心者にも分かりやすく解説。
送気(アスピレーション)とは、子音を発音するときに声門の閉鎖が解除された直後に大量の息(気流)が伴う現象を指します。日本語で「吸引」や「吸気」と書かれることがありますが、これらは意味が異なるため誤用です。送気は「息を強く吐くような付帯的な気流」であり、例えば口の前に紙をぶら下げて破裂音(破裂子音)を発音すると、送気のある音では紙がはためくのが観察できます。紙がほとんど動かなければ、その子音は送気を伴っていない(非送気)ということになります。送気は音声学では VOT(voice onset time、声の開始時間)の差として計測され、長い正のVOTが送気を示します。
IPA表記と記号
国際音声記号(IPA)では、送気は子音の直後に小文字の上付き ʰ を付けて表します。たとえば英語の語頭の無声破裂音は送気を伴うことが多く、/pʰ/, /tʰ/, /kʰ/ のように表記します。アフリカート(破擦音)にも同様に /t͡ʃʰ/ のように ʰ を付けます。声帯振動を伴う有声音で「息の伴う」発音がある言語では、しばしば上付きの ʱ(例:/bʱ/)で「有声音の呼気的な摩擦・息気」を示すことがあります(インド諸語の一部など)。
英語の例(英語は送気を音素としては持たない)
英語では語頭のアクセントのかかる音節の無声破裂音は通常送気されますが、これは対立(異なる意味を生む音素の差)ではなく音声変異(アロフォン)です。例:
- "pick" /pʰɪk/(語頭の /p/ は送気)
- "tick" /tʰɪk/、"kick" /kʰɪk/、"chick" /t͡ʃʰɪk/
- 一方で "spit" の /p/ や "skit" の /k/ のように /s/ の直後に来る語内クラスタでは /p/, /t/, /k/ は非送気です(例:"spin" /spɪn/)。
つまり英語では 送気か非送気かは位置によって決まる(語頭で送気、/s/ の後では非送気、語末はまた別の条件)ため、音素的対立ではありません。
インド諸語(ヒンディー語など)の例
ヒンディー語には送気は音素的に重要です。多くのインド語派生語では、破裂音が次のように四つの系列で対立します:有声音非送気、無声音非送気、無声音送気、有声音送気(または有声音有気/呼気化と表されることがあります)。文字表記でも子音の後に h を付けて表すことが多く、例えば姓の Bhattacharya の最初の bh は有声音の送気化(/bʱ/)を表し、IPAでは /bʱ/ と表記されることが一般的です。ただし /bʱ/ は単なる「有声音+送気」ではなく、しばしば息を伴う声(息混じり声、breathy voice)の性質を持つ点に注意が必要です。
中国語(北京語・標準中国語)の場合
北京語(標準中国語)では、有声音の破裂音がほとんど存在しないため、無声破裂音どうしの 送気の有無が主要な区別になります。つまり同じ位置にある音でも送気があるかないかで語の意味が区別されます。ピンインではこの対立を次のように表します:送気を伴う無声破裂音は英語の無声破裂音に似た字(p, t, k 等)で、非送気(無声非送気)は b, d, g のように書きます(ピンインの b, d, g は英語の有声音 b, d, g とは異なり、無声非送気を表します)。
たとえば「高考(gaokao)」を挙げると、発音は語の第2音節が送気を伴うため、IPA では /kau̯.kʰau̯/ のように書かれます。ウェイド・ジャイルズ(Wade–Giles)式では、ピンインと異なり送気を示すために文字の後にアポストロフィを付ける表記法が使われます(例:k と k' の区別)。
まとめと注意点
- 送気(アスピレーション)は子音の直後に続く強い気流で、IPAでは上付き ʰ で表記します。
- 英語では送気は対立素ではなく位置依存のアロフォン(語頭などで現れる)です。一方、ヒンディー語やタイ語・北京語などでは送気は音素的に意味を区別します。
- インド諸語で見られる bh や dh のような表記は、しばしば息混じりの有声音(/bʱ/ や /dʱ/)を示します。
- 音声学的な解析では VOT(voice onset time)で送気の有無を定量的に扱います。
用語に関しては「吸引」「吸気」と「送気」を混同しないようにしてください。日常語では「息を強く吐くように発音する」ことで十分理解できますが、学術的には「送気(aspiration)」が正しい用語です。
質問と回答
Q:吸引力とは何ですか?
A:アスピレイションとは、子音を言うと空気が抜けるという言語の特徴のことです。
Q:吸気音か非吸気音か、どうやって見分けるのですか?
A: 紙を口の前に垂らし、子音を発したときに紙が動くかどうかで、吸気音か非吸気音かを判断することができます。紙が動けば、それは吸気性子音、または呼吸性子音です。紙が動かなければ、それは非吸引子音、または息のない子音です。
Q: 英語の吸気音にはどんなものがありますか?
A: 英語では、単語の最初に起こる無声停止音や摩擦音は吸気音となり、それは「p」「t」「k」「ch」の音です(IPAでは同じ順番で/p/, /t/, /k/, /t͡ʃ/と表記されます)。
Q: 吸引音はIPAでどのように書くのですか?
A: 吸引音は、IPAでは後にʰ記号を付けて書くことができます。例えば、/pm_2B0/, /k↪Lm_2B0/, /t͡ʃ/などです。
Q: 英語には吸引される有声音はありますか?
A: いいえ、英語には吸引される有声音はありません。
Q: ヒンディー語には吸引する有声音はありますか?
A: はい、ヒンディー語には子音文字の後に'h'を付けて書かれる有声音もあります。例えば、「Bhattacharya」はIPAでは「/bʱ/」と表記されます。
Q:中国語は他の言語と違って、どのように「志」を表すのですか?
A:北京語には声調のストップ、フリカティブ、アフリケートがないので、代わりに吸気音で区別しています。ピンインでは英語の無声音のように書き、無声音は有声音のように書きます。例えば、「高考」はIPAでは「/kau̯.k˰/」と書き、ウェイドガイルでは「Kaok'ao」と表記されるでしょう。
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