近東とは?中東との違いと歴史・地理・考古学での定義

近東とは何か?中東との違いや歴史・地理・考古学での定義を分かりやすく解説する入門ガイド。

著者: Leandro Alegsa

近東は、考古学者地理学者、歴史家が中東を指す言葉として使っている。

語源と歴史的変遷

「近東(Near East)」という語は19世紀末から20世紀初頭にかけてヨーロッパで用いられるようになりました。ヨーロッパを基準にして、地理的に近い順に「近東(Near East)」「中東(Middle East)」「極東(Far East)」と分けたことに由来します。外交・軍事の文脈では時期や国によって指す範囲が変わり、第一次世界大戦前後にはオスマン帝国支配地域やバルカン半島周辺まで含むこともありました。

地理的範囲(定義の揺らぎ)

近東の範囲に関しては固定的な国境はなく、分野や文脈で異なります。一般に含まれることが多い地域は次の通りです。

  • メソポタミア(現在のイラク・クルディスタン地域)
  • レヴァント(シリア、レバノン、イスラエル・パレスチナ、ヨルダン)
  • アナトリア(トルコ)
  • エジプト(しばしば古代研究では含める)
  • イラン高原やペルシア湾岸(文脈によっては含む)

現代の政治地理で一般的に使われる「中東(中東)」とはほぼ重なることが多いですが、学術的には「古代近東(Ancient Near East)」と呼んで古代文明圏を特定する場合に「近東」が好まれる傾向があります。

考古学・古代史での「近東」

考古学や古代史では「古代近東(Ancient Near East)」という呼称が確立しており、ヒトの定住化(新石器革命)や農耕、都市国家の誕生、文字の発明など人類文明の初期段階を研究する地域を指します。代表的な特徴と成果は次の通りです。

  • 農業と定住化:小麦や大麦の栽培、家畜化が始まり、村落から都市へと発展した。
  • 文明の誕生:シュメール、アッカド、バビロニア、アッシリア、ヒッタイト、古代エジプト、ペルシアなど重要な国家や王朝がここで発展した。
  • 文字と管理制度:楔形文字や象形文字などの発明により記録文化が発達し、法律や行政が整備された。
  • 技術と交易:青銅器、冶金、航海・交易ネットワークが広がった。

代表的な遺跡・文明(例)

  • メソポタミア:ウル、ウルク、ニネヴェ、ハンムラビ法典に関連する遺跡
  • レヴァント:ジェリコ(テル・エル=スルタン)、ビブロス、ウガリット
  • アナトリア:チャタル=ヒュユク(Çatalhöyük)、ハットゥシャ(ヒッタイトの首都)
  • 南レバント・地中海沿岸:フェニキア都市(ティルス、シドン)
  • エジプト:ギザのピラミッド、テーベの遺跡群

「近東」と「中東」の違い(使い分け)

現代の一般的な用法では「中東(中東)」がより広く定着していますが、学術分野では使い分けがあります。

  • 学術(考古学・古代史):「近東」は主に古代〜中世にかけての文明圏を指し、「古代近東」という枠組みで使われる。
  • 現代の地政学・報道:「中東」は現代国家や政治・経済の話題を扱う際に一般的に使われる。
  • 歴史的用語の違い:19〜20世紀のヨーロッパ中心の分類では用語の境界が異なっていたため、古い史料では注意が必要。

現代での注意点と推奨される表現

用語を使うときは、文脈を明確にすることが重要です。たとえば:

  • 古代文明について論じる場合は「古代近東」や「古代中東」より「古代近東(Ancient Near East)」と表記する方が専門的に分かりやすい。
  • 現代の政治や経済の話題では「中東(Middle East)」を使うのが一般的。
  • 学際的な場面では、どの地理的範囲を指すか(例:トルコ、イラン、アラビア半島、北アフリカを含むか)を明示するのが望ましい。

簡単な年表(ハイライト)

  • 紀元前9000年頃:新石器革命(農耕・牧畜の始まり)
  • 紀元前4000〜3000年頃:都市化、国家の形成(メソポタミア、エジプトなど)
  • 紀元前2000〜1000年頃:青銅器時代、複数の王朝・民族移動
  • 紀元前1千年紀:鉄器時代、古代帝国の興亡(アッシリア、バビロン、ペルシアなど)
  • 7世紀以降:イスラム世界の成立と拡大(中世以降の歴史的変化)

まとめ

「近東」は分野や時代によって意味が変わる用語です。考古学・古代史の分野では古代文明圏を指す専門用語として確立しており、現代の地政学では「中東」という語がより一般的です。用語を使う際は、対象となる時代・地域を明確にすることが重要です。

背景

近東という言葉が使われるようになったのは、1890年代ヨーロッパ列強が「東」の二つの危機的状況に対処しなければならなくなったときである。極東では1894年から1895年にかけての日清戦争、近東ではアルメニア人の大量虐殺である。

イギリスの考古学者D.G.ホガースは1902年に「The Nearer East」を出版し、アルバニア、モンテネグロ、セルビア南部、ブルガリアギリシャ、エジプト、オスマン帝国全土、アラビア半島全体、イラン西部などを含む、その範囲と用語を定義するのに役立った。



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