近距離無線通信(NFC)の定義と仕組み モバイル決済・ICカードの用途

Near Field Communication(略称:NFC)は、無線通信技術を利用して近距離でデータを送信する規格の名称である。通常、距離は4センチメートル程度である。この規格は、主にマイクロペイメントシステムに使用されています。また、電車やバスなどの乗車券を再利用可能なICカードに格納することも一般的な用途です。多くの大学では、学生証を装備し、カフェテリアでのコーヒー1杯など、少額の支払いに利用できるようにしている。

各デバイスにはアクティブとパッシブがあり、両方の役割を担えるものもあります。

NFCの基本的な仕組み

周波数と通信方式:NFCは13.56MHzの高周波(HF)帯を利用し、近距離での電磁誘導(インダクティブカップリング)によって通信します。通信距離は通常数センチメートル(一般的には4cm程度)で、データ転送速度は106、212、424 kbpsのモードが広く使われています。

動作モード:NFCには主に次の3つの動作モードがあります。

  • カードエミュレーション(Card Emulation):スマートフォンやデバイスがICカードのように振る舞い、既存のリーダー(例:改札機、決済端末)とやり取りします。モバイル決済(Apple Pay/Google Pay等)で使われる代表的なモードです。
  • リーダー/ライター(Reader/Writer):デバイスがNFCタグ(読み取り専用や読み書き可能なタグ)を読み書きします。スマートポスターや情報読み取りに利用されます。
  • ピアツーピア(Peer-to-Peer):2台のNFC対応デバイスが互いにデータを交換します。古くは名刺情報や小さなファイルを交換する用途で使われましたが、現在はBluetoothやWi‑Fiのペアリング開始を支援する用途などで使われます。

アクティブとパッシブの違い

アクティブデバイスは通信時に自らRFフィールドを生成してデータを送信します。スマートフォン同士でデータをやり取りするときなど、一方または双方がアクティブになります。パッシブデバイス(例:NFCタグや非接触ICカード)は自ら電力を持たず、相手のRFフィールドから電力を得て応答します。これによりバッテリー不要で長期間動作するタグが可能になります。

規格とタグの種類

  • 関連規格:主要な規格には、ISO/IEC 14443(近接型ICカード)、ISO/IEC 18092(NFCIP-1)、ISO/IEC 21481(NFCIP-2)などがあり、NFC Forumによる仕様も広く採用されています。
  • NFC Forumタグタイプ:Type 1~Type 4の4種類が定義されています。各タイプは構造や容量、対応速度、セキュリティ機能が異なり、実装例としてNXPのNTAGシリーズ、SonyのFeliCa(Type 3相当)などがあります。

主な用途

  • モバイル決済(コンタクトレス決済、モバイルウォレット)
  • 交通・改札の非接触ICカード(運賃支払い、乗車券)
  • 入退室管理・アクセスコントロール(社員証、ホテルのルームキー)
  • スマートポスター、製品情報タグ、在庫管理などのIoT用途
  • ワイヤレス機器のペアリング(Bluetooth/Wi‑Fiの初期設定の簡略化)
  • 会員カード、ポイントカード、チケットのデジタル化

セキュリティとリスク

短距離であることは安全を完全に保証しない:通信距離が短いことは保護の一要素ですが、盗聴(イーブスドロップ)や中継(リレー)攻撃、なりすまし(スキミング)などのリスクがあります。対策としては以下が用いられます。

  • トークン化や動的暗号(決済トランザクションの一時トークン化)
  • セキュアエレメント(Secure Element)によるキーの保護や、ホストカードエミュレーション(HCE)とクラウドベースの認証併用
  • 生体認証(指紋/顔認証)やPINコード要求
  • 通信の暗号化、端末側とサービス側での多層認証

実装・利用時のポイント

  • スマートフォンでNFCを使う場合は設定でNFCを有効にする必要があります。端末によってアンテナ位置(背面上部・中央など)が異なるため、読み取り位置を合わせると確実です。
  • ケースや保護フィルムが厚いと通信が妨げられることがあるため、注意が必要です。
  • 支払い時は端末のロック解除や認証(生体・PIN)が求められることが多く、不正利用を抑止します。
  • NFCタグの読み書きやエミュレーションには対応アプリやサービスが必要です。タグには読み取り専用に固定できるものもあります。

まとめると、NFCは「非常に短い距離で簡便にデータ交換や決済を行うための規格」であり、交通・決済・アクセス制御・IoT領域で広く使われています。一方で、セキュリティ対策や実装上の配慮が重要であり、各種規格や運用ルールに基づいた運用が求められます。

オーストリア国鉄のこの機械では、NFC技術を使って切符を認証することもできます。NFC対応の携帯電話を「NFC」と表示された場所にかざすと、切符が入ったSMSメッセージが送信されます。Zoom
オーストリア国鉄のこの機械では、NFC技術を使って切符を認証することもできます。NFC対応の携帯電話を「NFC」と表示された場所にかざすと、切符が入ったSMSメッセージが送信されます。


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