No Prayer for the Dyingは、アイアン・メイデンのスタジオ・アルバムで、1990年10月1日に発売された作品である。バンドにとってはシンプルで生々しい演奏を志向した作風の転換点とされ、従来のシンセや厚い多層コーラスを抑えた、より直線的なヘヴィメタルを志向している。
概要
本作は、ジョン・ディッキンソン(ボーカル)在籍期のラインナップで制作されたアルバムで、ギタリストの交代(アドリアン・スミスの脱退とジャニック・ガースの加入)を経た後に発表された。プロデュースはスティーヴ・ハリスとマーティン・バークが担当しており、録音・ミックスでは従来よりも「生録り」に近いアプローチが取られている。
収録曲(主な曲とシングル)
アルバムには、バンドとしてイギリスのシングルチャートで1位を獲得した唯一の曲である「Bring Your Daughter...to the Slaughter」が収録されている。ほかにもシングルとしては「Holy Smoke」「Tailgunner」などがリリースされ、特に「Bring Your Daughter...〜」は大きな話題を呼んだ。
- Bring Your Daughter...to the Slaughter — アルバム収録曲。シングルでイギリス・シングルチャート1位を獲得。
- Holy Smoke — 活気あるリフと皮肉の効いた歌詞が特徴のシングル。
- Tailgunner — ライブ向きの勢いあるナンバー。
- No Prayer for the Dying(タイトル曲) — アルバムの主題を象徴する楽曲。
- Public Enema Number One / The Assassin など — アルバムを構成する他の楽曲。
(上は主な収録曲の抜粋。完全なトラックリストは盤種・地域によって異なる場合がある。)
制作と音楽性
本作は、前作群に見られた装飾的な要素を縮小し、ギター中心の原点回帰とも言えるサウンドを意図して制作された。ギター・トーンはよりストレートで、リズムはタイトにまとめられている。曲構成も簡潔でキャッチーなフックを重視したものが多い。
リリース後の反応と評価
発表当時の批評は賛否両論で、支持する声は「原点回帰による勢い」やシングル曲の魅力を評価する一方で、否定的な評価は「全体としてアルバムに深みや多様性が欠ける」「以前の作品に比べて物足りない」といった指摘があった。商業的には注目を集め、シングルの成功や各国でのチャートインを果たした。
また、このアルバムはアメリカでRIAAによってゴールドに認定された作品の一つである。
ツアーとその影響
アルバム発売後、バンドは世界規模のツアーを行い(「No Prayer on the Road」として知られることもある)、新曲を中心に演奏することでライブ・パフォーマンスの評価を維持した。ライブでの演奏はアルバム制作時の生々しさを反映し、ファンからの反応は概ね良好だった。
パーソネル(主要メンバー)
- Bruce Dickinson — ボーカル
- Dave Murray — ギター
- Janick Gers — ギター
- Steve Harris — ベース(プロデューサーの一人)
- Nicko McBrain — ドラム
- Martin Birch — プロデューサー / エンジニア
総評
No Prayer for the Dyingは、アイアン・メイデンのキャリアにおける一つの転換点であり、古くからのファンには賛否が分かれる作品だ。しかしながら、シングル曲の成功やライブでのパフォーマンスにより、バンドの活動が停滞していないことを示したアルバムでもある。アルバムの評価は個人の好みに大きく左右されるため、初めて聴く際はシングル曲だけでなくアルバム全体を通しての聴取をおすすめする。