オージェ電子分光法:表面に敏感な元素分析
オージェ電子分光法(AES)は、放出されるオージェ電子のエネルギーを測定して元素を同定し、化学環境を調べる表面高感度の分析手法です。
オージェ電子分光法(AES)は、固体の元素組成と表面近傍の化学状態を調べるための分析法である。放出されるオージェ電子は材料の最表面から生じるため、AESは非常に表面に敏感である。材料科学、薄膜解析、半導体製造、腐食研究、表面汚染の調査などで日常的に用いられている。
基本原理
AESはオージェ効果に基づく。原子の内殻電子が取り去られると、より高いエネルギー準位の電子がその空孔へ落ち込み、そのときの余剰エネルギーが第三の電子へ移ることがある。その第三電子が、元素と関与する電子状態に固有の、定められた運動エネルギーで放出される。AESでは、この空孔は多くの場合、入射する高エネルギー電子線によって作られ、放出電子をエネルギー解析してオージェスペクトルを得る。ピーク位置は元素の同定に役立ち、ピーク形状やわずかなエネルギーシフトは化学結合や局所環境を反映しうる。
画像ギャラリー
3 画像代表的な装置と測定
AES装置は、集束した一次電子線、電子エネルギー分析器、そして超高真空の分析室から成る。一次電子線は内殻電子を取り去ってオージェ放出を促す。エネルギー分析器は放出電子を集め、運動エネルギーに対する強度を記録して、特定の遷移に対応するピークを作る。オージェ電子の運動エネルギーは低いため、エネルギー損失なしに逃げ出せるのは最表面の原子層の電子に限られ、AESが表面特有のプローブであることにつながっている。
AESで分かることと用途
- 元素同定:特徴的なピークエネルギーから、表面にどの元素が存在するかを判定できる。
- 表面化学:ピーク強度の変化やわずかなエネルギーシフトが、化学状態や結合の手がかりになる。
- 深さ方向分析:制御されたイオンスパッタリングと組み合わせることで、層状構造の深さ方向の組成変化を調べられる。
- イメージング:電子線を試料上で走査すると、元素分布をマイクロメートル尺度の分解能で可視化できる。
利点、限界、実用上の注意
AESは、導電性試料や半導体試料に対して優れた表面感度と空間分解能を示す。一方で、帯電補償を用いない限り絶縁体にはあまり適さず、真空条件や電子線による損傷が制約になることもある。化学状態の情報は、結合エネルギーを直接測る手法に比べると一般に微妙であるため、AESはしばしばX線光電子分光法などの補完的手法と併用される。関係する電子過程の入門としては電子遷移とオージェ放出を、装置の概説としては表面分析の資料を参照するとよい。
歴史的・比較的な位置づけ
オージェ効果の名称は、この現象を研究し、20世紀初頭に広めた物理学者に由来する。その後、真空技術と電子光学の進歩により、AESは実用的な分析手法となった。ほかの表面感度の高い手法と比べると、AESはX線ではなく電子線で最初の空孔を作る点と、横方向の空間分解能が高い点が特徴的である。比較は、表面分析の入門的概説であるさらに読むで行える。
関連項目
著者
AlegsaOnline.com オージェ電子分光法:表面に敏感な元素分析 Leandro Alegsa
URL: https://ja.alegsaonline.com/art/7279