パタウ症候群(トリソミー13)とは:原因・症状・発生率・遺伝の解説
パタウ症候群(トリソミー13)の原因・症状・発生率・遺伝をわかりやすく解説。リスクや検査、家族への影響まで最新知見で確認。
パタウ症候群は、トリソミー13またはトリソミーDとしても知られている、染色体の問題です。この病気にかかると、13番染色体が1本余分になります。これは通常、減数分裂の際に起こった問題のためですが、ロバートソン転座という、ヒトによく見られる染色体の再配列の結果であることもあります。女性が人生の後半に出産する場合、減数分裂の際に問題が起こるリスクが高くなります。(一部の報告では母親の平均年齢が約31歳とされますが、報告により差があります。)
一般的な3つのトリソミーの中で最も稀なものです。ダウン症候群とエドワーズ症候群はもっと一般的です。パタウ症候群は、生児25,000人に1人の割合で発症します。
原因
主な原因は13番染色体の過剰(トリソミー)で、次のような機序があります。
- 自由型トリソミー(非離分):減数分裂時の染色体分配の異常により、受精卵に余分な13番染色体が入る。
- ロバートソン転座:13番染色体が別の染色体(多くは14番など)と結合する構造的再配列を持つ保因者の親から生じる場合。保因者自身は軽い症状もしくは無症状でも、子に不均衡な染色体配列を伝えるとトリソミー13が発生する可能性がある。
- モザイク型:一部の細胞だけに余分な13番が存在するタイプで、症状が比較的軽いことがある。
主な症状・臨床像
症状は多岐にわたり重症度も幅がありますが、代表的なものを挙げます。
- 脳の発達異常(ホロプロセセファリー:前脳の分割不全)
- 顔面・眼の異常(小眼球、眼の近接、口唇口蓋裂など)
- 多指・合指などの四肢異常
- 先天性心疾患(複雑な心奇形が多い)
- 頭皮や皮膚の欠損(cutis aplasia)
- 重度の成長遅延および知的障害
- てんかん発作、摂食困難、呼吸障害などの合併症
モザイク型ではこれらの症状が軽度で経過が比較的安定する場合があります。
発生率と予後
- 発生率は地域や報告により差がありますが、本文で示したように生児25,000人に1人程度とされる報告があります。
- 胎内での流産や人工妊娠中絶が多く、出生に至った場合でも新生児期や乳児期の死亡率は高いです。多くは生後数日から数週間で亡くなることが多く、1歳を超えて生存する子は比較的少数(報告によっては数%〜10%前後)です。
- ただし個々の状況(モザイクの有無、合併症の重症度、受けられる医療処置など)により経過は変わります。
診断
- 妊娠中:超音波検査で形態異常が指摘されると、母体血胎児染色体検査(非侵襲的胎児遺伝学的検査:NIPT)や羊水検査・絨毛検査(染色体核型解析、FISH、マイクロアレイ)で確定診断を行う。
- 出生後:身体所見に基づいて染色体検査(核型解析や染色体分析)を行い確定する。モザイクが疑われる場合は複数の組織で検査することがある。
治療とケア
根本的に染色体異常を“治す”治療法はありません。治療は症状に対する支持療法と合併症への外科的・内科的対応が中心です。
- 先天性心疾患や口唇口蓋裂などは個別に外科的修復を検討する。
- 栄養管理(経管栄養)、呼吸管理、てんかんの薬物治療など、臨床症状に応じた対症療法。
- 家族への心理的サポートや緩和ケアの導入も重要。医療チーム(小児科、心臓外科、整形外科、整形外科、リハビリ、遺伝カウンセラー等)による多職種連携が望まれる。
遺伝と再発リスク
ほとんどは偶発的な自由型トリソミーで、親の染色体が通常型であれば再発リスクは一般に低いとされています。しかし:
- 親がロバートソン転座の保因者であった場合、再発リスクは著しく上昇します。保因者の性別や転座の種類によってリスクは異なるため、具体的な確率は個別の染色体検査と専門家の評価が必要です。
- 妊娠を希望する家族には、遺伝カウンセリングと親の染色体検査(核型解析)を強く推奨します。
支援と情報
診断を受けた家族は、遺伝カウンセリングの受診、専門施設での相談、同様の経験を持つ家族や支援団体とのつながりを持つことで、医療的・心理的な支援を受けられます。医師や遺伝カウンセラーとともに、治療方針・ケア目標を検討してください。
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