パーミネラリゼーション(貫入鉱化)とは?化石化の過程と種類を解説
パーミネラリゼーション(貫入鉱化)の定義から化石化の過程・種類、植物や軟組織の保存例まで図解でわかりやすく解説。
パーミネラリゼーション(貫入鉱化、パーマネレーションとも)とは、鉱物の沈殿物が生物の内部鋳型を形成して化石化する過程のことです。周囲の水に溶けているミネラルが、生体組織の孔や空隙(細胞腔、導管、骨の間隙など)に浸入し、そこで析出・結晶化して有機組織内を埋め尽くします。
基本的な過程
パーミネラリゼーションは一般に次のような段階で進行します。
- 埋没:遺体や植物組織が堆積物や火山灰、泥などに覆われる。
- 浸透:地下水や湖水、海水などのミネラル溶液が組織の孔に浸透する。
- 核生成と析出:細胞壁や孔の表面でミネラルが核生成し、結晶が成長して空隙を埋める。
- 充填の進行:内腔(細胞の中央空洞)や導管が完全に満たされるまで析出が続く。外側の細胞壁や組織の原形はしばしば残り、微細構造が保存される。
保存される情報と重要性
パーミネラリゼーションによる化石は、組織の微細構造(細胞壁の配置、導管の形、骨の組織構造など)を高い解像度で保存することが多く、古植物学や古脊椎動物学、古微細組織学で非常に重要です。軟組織が保存される場合もあり(条件次第で筋繊維や消化管の痕跡など)、生体の形態や機能に関する情報を提供します。
起こりやすい環境と条件
- ミネラル飽和の水:シリカ、カルサイト、リン酸塩、硫化鉄などが溶け込んだ水が必要です。
- 多孔質の組織:細胞や導管など空隙が多い組織で起こりやすい。
- 分解の抑制:嫌気的条件や低温、迅速な埋没などで微生物分解が抑えられると保存率が高まります。
- 化学的環境:還元的環境ではパイライト化(硫化鉄化)が起こりやすく、リンが豊富な環境では燐酸塩で保存されやすいなど、局所的な化学組成が結果を左右します。
代表的な種類(鉱物別)
- 珪化(Silicification):溶存シリカ(ケイ酸)が析出して組織を充填。木化石(珪化木)、チャートに産する植物・動物化石など。非常に細かな細胞構造が保存されやすい。
- 灰白色カルサイト化(Calcification):カルサイト(CaCO3)が充填・被覆するタイプ。貝殻や骨の保存に関与することが多い。
- 燐灰石化(Phosphatization):燐酸塩(しばしばアパタイト)が速やかに沈殿し、軟組織までも微細に保存する例がある(例:一部のカンブリア紀化石層)。
- パイライト化(Pyritization):還元的で硫黄・鉄が豊富な環境でFeS2が生成し、組織を覆う/充填する。黒色・金属光沢を示すことがある。
パーミネラリゼーションと類似概念の違い
- 置換(Replacement)との違い:置換は元の有機・鉱物成分が化学的に別の鉱物に置き換わる過程です。パーミネラリゼーションは主に空隙を鉱物で満たすもので、元の組織(細胞壁など)が残ることが多い点で異なります。
- 鋳型・自然鋳造(Cast/Mold)との違い:鋳型や鋳造は外形が残る保存様式で、内部の微細構造の保存は期待できませんが、パーミネラリゼーションは内部構造の保存に優れます。
実例と研究での利用
・木化石(珪化木)はパーミネラリゼーションの代表例で、樹木の年輪や細胞形態から古気候や樹種の解析が可能です。
・恐竜骨や魚類の骨では、リン酸塩やカルサイトによるパーミネラリゼーションで微細構造が保存され、成長速度や代謝推定に使われます。
・研究手法としては、薄片観察、走査型電子顕微鏡(SEM)、X線マイクロCT(非破壊で内部構造を三次元的に可視化)などが活用されます。
まとめ
パーミネラリゼーションは、鉱物が生体の内部空隙を埋めることで微細構造を高精度に保存する重要な化石化過程です。保存される鉱物の種類や環境条件によって記録の内容が変わり、古生物学・古植物学・古地球化学の研究において欠かせない手がかりを提供します。

シリカ球

石炭ボール
タイプ
ケイ化
珪化は、最も一般的なパーミネラリゼーション(再石灰化)の一種です。
炭酸塩鉱床
炭酸塩の鉱化現象は、コールボールとして発生する。コールボールは、植物やその組織の化石で、通常は海水や酸性の泥炭があるときに作られる。この化石は、上部石炭紀(3億2500万年~2億8000万年前)の植物について情報を与えてくれる。
パイライト化
硫化鉄が飽和している海底にいると、生物はパイライト化する。
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