フルゴロモルファ(プラントホッパー)とは?特徴・擬態・歯車機構を解説
フルゴロモルファ(プラントホッパー)の特徴・擬態・驚きの歯車機構を図解で分かりやすく解説。生態や防除のポイントまで初心者必見!
フルゴロモルファ(プラントホッパー)下目(Fulgoromorpha)に属する昆虫群で、現在までに12,500種以上が記載されています。カメムシ目(Hemiptera)に含まれ、世界中の陸上植生に広く分布します。
主な特徴
フルゴロモルファは小型〜中型の昆虫で、口吻(吻)は植物の汁を吸うための刺す型(吸汁型)に特化しています。体長は種によって数ミリから数センチ程度まで幅があります。多くの種で体表に蝋状の粉や糸状の分泌物を出すものがあり、これが防御や乾燥対策になることがあります。翅を持ち飛翔する種もあれば、翅が退化したものや短いものも存在します。
擬態・保護色
体の形や色が周囲の植物に溶け込む個体が多く、これは捕食者から身を守るための重要な適応です。具体的には、葉や茎、古い枯葉、苔や地衣類に似せた形態・色彩をとることが知られています。ときに複雑な突起や伸長した頭部形状を持つ種もあり、目立つ外見を利用した擬態や警告色を示す例もあります。こうした隠蔽効果により、捕食圧からの逃避が図られます。隠語的な擬態を示す種が多いのが特徴です。
行動と運動
歩行は比較的ゆっくりですが、危険を感じると瞬発的に跳躍して逃げる能力に優れます。大型の後脚を用いて短距離を大きく跳躍することができ、外見からはバッタのように飛び跳ねることもあると表現されます。種によっては飛翔を伴って広範囲に移動するものもあります。
生態と植物との関係
フルゴロモルファは主に植物の師管や維管束にある汁を吸って生活するため、寄主植物と密接な関係を持ちます。多くは単独または小群で植株の葉・茎・若芽などにとどまり、摂食の結果として蜜露(はちみつ状の排泄物)を出し、それを利用してアリなどとの相利共生が見られる場合もあります。
一般に多くの種は大きな農業害虫とはならないものの、ある種は植物病原体を媒介するものもいる。植物の葉茎に生息するファイトプラズマは、ツマグロヨコバイなどフルゴロモルファ類によって伝搬され作物に被害を与えることがあり、農業上の防除対象となることがあります。ウイルスやファイトプラズマなどの病原体の媒介者となる例は、管理上特に注意が必要です。
ニンフの歯車機構(同期機構)
興味深い生物学的特徴として、いくつかのプラントホッパー(特にヨーロッパの種など)のニンフ段階では、後脚の付け根に微細なかみ合う歯状構造を持ち、跳躍時に左右の後脚を正確に同期させる「歯車機構」が確認されています。この構造は切れ込み状の小さな歯が相互に嚙み合うことで機械的に脚の始動タイミングを合わせ、極めて短時間(マイクロ秒オーダーに近い高精度)で同時に力を発揮させることができます。
この歯車様構造は成長に伴う脱皮の過程で成体になると失われ、成虫は神経・筋肉による別の同期メカニズムで跳躍を行うと考えられています。歯車機構の発見は生物学的構造における機械的解決の一例として注目され、進化生物学やバイオミミクリー(生体模倣)の観点からも研究対象となっています。
まとめ(要点)
- フルゴロモルファはカメムシ目のプラントホッパー類で、多様な種が世界に分布する。
- 植物の汁を吸って生活し、擬態や保護色・蝋質分泌などで捕食から身を守る。
- 一部の種は植物病原体の媒介者となりうるため、農業上の重要性がある。
- ニンフには左右の後脚を同期させるための生物学的な歯車機構を持つ種が存在し、これは生体における機械的同期の興味深い例である。
より詳しい分類や種ごとの生態、害虫対策については、専門の図鑑や農業技術資料を参照してください。
大衆文化において
アルフレッド・ヒッチコック監督の映画『思い出のマーニー』の重要なシーンに、このウンカが登場する。
「ケニアにヒヤシンスのような美しい花があります。手を伸ばしてみると、その花は花ではなく、ヒラタムシという小さな虫が何百匹も集まってできた模様なのだそうです。彼らは、花の形をして生き、死ぬことで、飢えた鳥の目から逃れているのです」。
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