ポリブタジエンとは|合成ゴムの定義・製造方法と主な用途(タイヤ・ABS等)
ポリブタジエンの特性・製造法からタイヤ・ABSなどの主要用途までを図解でわかりやすく解説。用途別のメリットと最新動向を網羅。
ポリブタジエンは、主に合成ゴムとして使用されるポリマーで、モノマーである1,3-ブタジエンを原料として作られます。ポリブタジエンは耐摩耗性に優れている。生産量の約70%がタイヤに使用されています。約25%は、ポリスチレンやアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)などのプラスチックの靭性(耐衝撃性)を向上させる添加剤として使用されている。ポリブタジエンゴムは、2012年の世界の合成ゴム消費量全体の約4分の1を占めている。また、ゴルフボールや各種弾性体の製造、電子部品のコーティングや封止に使用され、高い電気抵抗率を実現している。
概要と種類
ポリブタジエン(Polybutadiene、略称BR)は、1,3-ブタジエンの重合により得られる合成ゴムです。重合の進行様式によって主に次のような構造が得られます。
- cis-1,4-ポリブタジエン:ゴム弾性が高く、低温でも柔軟性に優れる。タイヤ用ゴムとして重要。
- trans-1,4-ポリブタジエン:結晶化しやすく、硬めの性質を示す。
- 1,2-(ビニル)付加型ポリブタジエン:側鎖にビニル基を持ち、ガラス転移温度(Tg)が高めで、硬さや加工性に影響する。
これらの比率(マイクロストラクチャー)を制御することで、靭性、耐摩耗性、低温特性などの物性を調整できます。
製造方法(重合技術)
- 溶液重合(陰イオン重合):リチウム化合物などの開始剤で行い、分子量やマイクロ構造を精密に制御できる。特に精密ポリマーやブロック共重合体の合成に用いられる。
- 配位重合(触媒重合):金属触媒(ニッケル、コバルト、希土類など)を用いると高いcis-1,4比率が得られ、タイヤ用高性能ゴムの生産に有利。
- 乳化(エマルジョン)重合やラジカル重合:工業的に大量生産する際に使われ、コストや生産性の面で採用される手法。得られるマイクロ構造は触媒や条件に依存する。
主要な物性と加工
- 耐摩耗性・弾性:高い耐摩耗性と優れた弾性を持ち、タイヤトレッドやゴムローラーなど摩耗と弾性が要求される用途に適する。
- 低温特性:cis-1,4が多いポリブタジエンはガラス転移温度(Tg)が非常に低く(おおむね-100℃付近まで変動)、低温下でもゴムらしい柔軟性を保つ。
- 電気特性:高い電気抵抗率を示すため、電子部品のコーティングや封止材として利用されることがある。
- 硫黄架橋(加硫):一般的には硫黄や過酸化物による架橋(加硫)で弾性体に加工される。カーボンブラックやシリカ等の充填剤、オイル、促進剤を配合して目的特性を得る。
主な用途
- タイヤ(特にトレッドやカーカスのブレンド材) — 世界生産量の大部分がタイヤ用。
- プラスチックの耐衝撃改質剤 — PSやABSなどの衝撃強化に使用(成形体の耐衝撃性向上)。
- ゴルフボールのコア、弾性体部品、シール材、ホースやベルトなど摩耗の激しい部品。
- 電子部品のコーティング・封止材料 — 高い絶縁性を活かした用途。
他のゴムとの比較・ブレンド
ポリブタジエンは、スタイレン・ブタジエンゴム(SBR)と混合して用いられることが多く、SBRの加工性に対してBRが耐摩耗性や低温特性を付与します。ABS樹脂などにはポリブタジエン系のゴムが含浸・分散され、破壊靱性を高めます。
安全性と環境
- 原料の1,3-ブタジエンは発がん性が指摘される化学物質であり、取扱い時のばく露管理が重要です。ポリマー化後の製品自体は一般に安定していますが、未反応モノマーのトレースは除去・管理されます。
- 使用済みタイヤなどのリサイクルは世界的な課題であり、ゴムの再利用・粉砕材としての二次用途開発が進められています。
まとめ
ポリブタジエンは耐摩耗性、低温での柔軟性、良好な弾性などに優れる合成ゴムで、特にタイヤ用途で重要な材料です。重合方法やマイクロ構造を制御することで用途に応じた物性設計が可能であり、プラスチック改質剤や電子材料など幅広い産業で用いられています。一方で原料モノマーの安全管理やリサイクルといった環境面の課題への対応も求められています。

生産されるポリブタジエンの約70%は、タイヤの原料として使用される。
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