ポトハリ(ポトワル)語とは:定義・歴史・分類—パンジャブ北部の方言か独立言語か

ポトハリ(ポトワル)語の定義・歴史・分類を解説。パンジャブ北部で方言か独立言語かを検証する決定版ガイド。

著者: Leandro Alegsa

ポトハリ(またはポトワルPahari-Potwari)は、パンジャブ州北部のポトワル台地(ポトワル地区)で話されている、伝統的にパンジャブ語の方言とされる言語変種である。話者は主にラーワルピンディ(Rawalpindi)周辺やチャクワール、ジェラム、アトックなどの地域に分布し、また近隣のアジュムダル(アザド・カシミール)側にも方言連続体が広がっている。

定義と名称

「ポトハリ」「ポトワル」「Pahari‑Potwari」といった呼び方は、地理的・方言学的な区分を示すために使われる。学術的には「Pahari‑Potwari」や「Pothwari–Mirpuri」などの総称で扱われることが多く、どの範囲を独立した「言語」とみなすかは研究者や話者の側で見解が分かれる。名称の混在は、地理的な連続性と方言差異が大きいことを反映している。

歴史と系統

歴史的には、ポトハリは北西インド・パンジャブ地域に属するインド・アーリア語群の一員として発展してきた。中世からの発音変化や語彙借用(ペルシア語・アラビア語経由の借用語、後年はウルドゥー語や標準パンジャブ語の影響)を受けつつ、地域的な話者集団の移動や政治的支配の変化によって方言差が拡大した。

分類と議論:方言か独立言語か

パンジャブ語やウルドゥー語・ヒンディー語の関係と同様に、ポトハリを「方言」とみなすか「独立言語」とみなすかは、言語学的基準だけでなく社会政治的要因にも左右される。

  • 方言とする立場:標準パンジャブ語(あるいはラフンダ/Lahnda と総称されるグループ)との間に高い語彙・文法上の類似性があり、方言連続体の一部として位置づけられる。
  • 独立言語とする立場:他方、ポトハリ内部での変異が大きく、ミルプーリ(Mirpuri)など地域変種は互いに十分な連続性を欠く場合があり、話者のアイデンティティや社会的区別を根拠に独立性が主張される。

結局のところ、言語学的には「方言連続体」の一部分として扱う研究が多いが、話者の自己認識や政治的・行政的分類によっては独立した言語と見なされることがある。どちらの見方も一定の妥当性を持つため、分類は単純には決定できない。

言語的特徴(概説)

ポトハリは、パンジャブ系方言に共通する特徴を多く持つが、以下のような点が観察される。

  • 音韻:声調(トーン)や子音の対立など、パンジャブ系に典型的な音韻現象を示す要素があるとされる。
  • 文法:基本語順はSOV(主語‑目的語‑動詞)で、動詞の時制や人称に応じた一致や、過去形での主語マーカーの変化(半エルゴーティブ的振る舞い)など、北インド諸語に共通する構造を持つ。
  • 語彙:日常語には土着のインド・アーリア起源の語彙が多く、宗教・行政・学術語彙ではペルシア語・アラビア語由来の借用語を広く含む。また近年はウルドゥー語や英語からの借用も顕著である。

話者数と分布

正確な人口統計は国勢調査の集計方法や分類によって変わるため一概には言えないが、ポトハリ系の変種を話す人々は数百万にのぼると見積もられている。加えて1970年代以降の移住により、イギリスなどの欧州諸国にも相当数の話者コミュニティ(特にミルプーリ出身者を中心とするコミュニティ)が形成されている。

文字・文学・メディア

パキスタン国内では一般にペルシア系のアラビア文字系筆記法(シャームキー=Shahmukhi)を用いることが多いが、日常的には口語中心で、標準化された正書法は限定的である。口承文学(民謡、民話、スーフィー詩など)は豊富で、地域の文化的表現として重要である。移民コミュニティではラテン文字による転写や、コミュニティ内出版物・ソーシャルメディア投稿などで書かれることもある。

社会言語学的側面

言語アイデンティティは非常に重要で、地域的誇りや出身地の表明(例:ポトワル出身であること)と密接に結びついている。パキスタンにおける国語政策、都市部でのウルドゥー語の優勢、標準パンジャブ語(インド・パキスタンでの扱いは異なる)の地位などが、ポトハリの扱いや認識に影響を与えている。また、移民先では「ミルプーリ=カシミール」アイデンティティなど、行政上のカテゴリーが現地コミュニティの言語認識を左右することもある。

研究・保存の課題

ポトハリは方言連続体のため地域差が大きく、包括的な言語記述が十分ではない部分が多い。方言ごとの音声資料、語彙辞典、文法記述、口承文学の記録などの蓄積が求められている。加えて、地域語の教育的利用やデジタル化(入力システム、辞書・コーパスの整備)といった実務的な課題もある。

まとめると、ポトハリ(ポトワル)は地理的・社会的に複雑な位置を占める言語変種であり、「パンジャブ語の方言」とする見方と「独立した地域語」とする見方のいずれにも一定の根拠がある。より精緻な言語学的調査と、話者自身のアイデンティティを尊重した分類・保存の取り組みが今後の重要課題である。



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