前日譚(プレクエル)とは?定義・歴史・映画・文学の事例とバックストーリーの違い

前日譚(プレクエル)の定義から歴史、映画・文学の事例(スター・ウォーズ等)とバックストーリーの違いを分かりやすく解説。

著者: Leandro Alegsa

前日譚(プレクエル)とは、物語の時間軸において「あとで作られた作品が、物語上は以前の出来事を描く」タイプの作品を指す用語です。たとえば、シリーズの最初に発表された作品の続きではなく、後に作られた別の作品が「主人公の若い頃」や「事件が起きる以前の経緯」を描く場合、それを前日譚と呼びます。これはドラマや文学の分野で使われる概念で、いわば「続編の反対の意味」を持つ語です(続編の反対の意味)。

概念と用語の由来

英語の"prequel"は "preceding" と "sequel" の合成語で、日本語では「前日譚」と訳されることが多いです。重要なのは「制作(または公開)順」と「物語上の時間順」が異なる点で、前日譚は一般に制作が後で、物語上は前の出来事を描きます。たとえば歴史を扱う書物は自然に時系列で並べられることが多く、第二次世界大戦をテーマにした一連の本が1930年代から始まり1946年で終わる、というのは典型的な時系列の例です。しかしフィクションでは意図的に順序を入れ替えて語ることがよくあります。

歴史的な例と古典

前日譚という手法自体は新しいものではありません。古代ギリシャの叙事詩群のなかに、ホメロス作とされる作品群の周辺に位置づけられる作品があり、たとえばCypriaホメロスIliadの物語に先行する出来事を描くものとしてしばしば言及されます。これは、後世にまとめられた大きな叙事の「前史」を補う役割を果たしました。

映画での代表例

現代においては映画やテレビで前日譚が広く用いられています。商業的な理由(人気作を拡張して収益を得る)、世界観の補強、登場人物の動機付けや背景説明などを目的に制作されることが多いです。よく知られた例としてはスター・ウォーズ」では、最初に公開された作品がスター・ウォーズ エピソードIV:新たなる希望(1977年)であるのに対し、後年になってスター・ウォーズ エピソードI/ファントム・メナス(1999年)、スター・ウォーズ エピソードII/クローンの攻撃(2002年)、スター・ウォーズ エピソードIII/シスの復讐(2005年)といった前日譚的作品が制作され、物語上はIVの以前の時代を描いています。

他にも、たとえば『ゴッドファーザー PART II』の一部は一重で並行して語られつつも、主人公の若い頃を描く部分は前日譚的な性格を持ちますし、最近のスーパーヒーロー映画やフランチャイズ作品でも「起源(origin story)」として前日譚を採用する例が増えています。

文学での前日譚

文学でも同様に、後年に書かれた作品が既存の物語の前史を補うことがあります。例としては、J.R.R.トールキンの『ホビットの冒険』と『指輪物語』の関係は微妙ですが、物語の順序と出版順が一致しているため厳密には「後から作られた前日譚」とは言いにくい一方、作者や編集者が後年に設定を詳述して補完するケースは多々あります。現代のシリーズ作品では、読者の関心に応じて後から前日譚を連作として書き足すことがよくあります。

「前日譚」と「バックストーリー(背景)」の違い

  • 前日譚(プレクエル):後で制作・発表された別作品そのものが、物語上は以前の出来事を描くもの。独立した作品として公開されることが多い(映画、ドラマ、長編小説など)。
  • バックストーリー(背景):ある登場人物や出来事の背景情報で、元の作品内で語られたり、断片的に示されたりするもの。必ずしも別作品として発表されるとは限らない。作者の設定資料や付録、キャラクター説明の一部として存在することもある。

要するに、前日譚は「作品そのもの」の位置づけに関する用語であり、バックストーリーは「その作品が扱う情報」の一種です。前日譚はバックストーリーを物語化して独立させたものとも言えますが、バックストーリーは作品内の説明や回想で完結することもあります。

前日譚が果たす役割と留意点

  • 世界観の拡張:未描写の歴史や制度、勢力の成り立ちを説明する。
  • 人物造形の補強:人物の動機や性格形成の過程を描き、感情的な深みを与える。
  • 商業的理由:既存のブランドを拡張して新たな観客層を取り込む。
  • リスク:既存の謎や魅力を損なう(ネタバレや過剰な説明)、既存設定との矛盾(レトコン)を生む可能性がある。

まとめ

前日譚は、制作順と物語順を逆転させることで世界観と登場人物の理解を深めたり、物語の幅を広げたりするための手法です。古代の叙事詩から現代の映画シリーズまで幅広く用いられており、効果的に使えば作品を豊かにしますが、扱い方次第で元の作品の魅力を損なうこともあります。なお、作品の「バックストーリー」とは語の適用範囲が異なり、前日譚は「別作品としての前史」、バックストーリーは「登場人物や物語の背景情報」である点を区別して理解するとよいでしょう。

質問と回答

Q:文学やドラマにおける前日譚とは何ですか?


A:前日譚とは、文学やドラマで使われる言葉で、「前兆」と「続編」という言葉が融合したもので、いくつかの段階に分けて語られる物語を指し、時間の順に語るのが自然なことだとされています。

Q:前日譚は、本や映画のシリーズものの一部でもいいのでしょうか?


A: はい、「前日譚」という言葉の正しい使い方は、作品がシリーズの一部であり、後の出版物が以前の時代に言及する場合にのみ適用されます。

Q: 前作がある映画シリーズの例は何ですか?


A: 「スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス」「スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃」「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」など、前作がある映画シリーズの一例です。

Q:前作は新しいコンセプトなのでしょうか?


A: いいえ、前作は古い考え方です。しかし、今日、映画やテレビドラマでよく使われています。

Q: シプリアとは何ですか?


A:『シプリア』は古代ギリシャの文学作品であり、ホメロスの『イリアス』の前日譚にあたります。

Q:バックストーリーとは何ですか?


A: バックストーリーとは、本編や登場人物の背景となる物語のことです。

Q: 前日譚は時間順に語られるべきですか?


A:はい、物語がいくつかの段階に分かれている場合、時間順に語るのが自然ですが、様々な理由で必ずしもそうなるとは限りません。


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