イーリアス(ホメロス)とは — トロイア戦争とアキレスを描く古代叙事詩
ホメロスの『イーリアス』—アキレスの怒りとトロイア戦争を描く古代ギリシャ叙事詩の全貌をわかりやすく解説。史実と神話を織り交ぜた名作入門。
イリアスはギリシャ文学の現存する最古の作品の一つで、もともとは口承叙事詩として伝えられました。話者によって語られ、のちに文字としてまとめられたと考えられており、成立は一般に紀元前8世紀頃とされます。作品はヘキサメーター(六歩格)で書かれた24の章から成る長大な叙事詩で、古代ギリシャの多くの神話や伝説が取り入れられています。作品の題材は青銅器時代の都市トロイに対する攻撃に基づく可能性があり、伝統的にはホメロスが編んだとされていますが、学者は、この詩が単一の作者によるものか、あるいは長い口承伝承の集積として形成されたかについて議論を続けています。
舞台とあらすじ(概観)
物語の時代背景は、一般に紀元前12世紀頃のトロイア戦争の最中に設定されています。戦士であるアキレスと、ギリシャ諸王の盟主であるアガメムノン王の対決について語っています。叙事詩が扱うのは戦争全体ではなく、戦争終盤の数週間に限定された出来事ですが、その中でトロイア戦争に関わる多くの伝説的エピソードや人物の運命が描き出されています。代表的な場面には、アキレスの怒りとそれに伴う行動、トロイ側の英雄ヘクトルの戦死とその後の葬儀、さらには城塞トロイの包囲戦までが語られていますことが挙げられます。
作品の性格と主題
イリアスは個人の栄誉(タイム)や英雄の栄光、復讐と和解、運命と神々の干渉といったテーマを中心に据えています。戦場での個々の英雄の技量や名誉への執着が物語を駆動し、同時に神々が人間の運命に介入することで出来事が複雑化します。描写には詳細な戦闘場面、葬送儀礼、宴席の場面、そして英雄同士や王と配下の間の心理的葛藤が織り込まれており、単なる戦記にとどまらない深い人間描写が特徴です。
伝承と文本伝来
作品は長い口承期を経て文字化されたと考えられ、古代から多くの注釈書や写本で伝えられました。写本学的研究や方言の分析により、作品が何世紀にもわたる伝承と編集を経て現在知られる形になった可能性が示唆されています。古代から中世、近代にかけてさまざまな言語に翻訳され、ルネサンス以降のヨーロッパ文化にも大きな影響を与えました。
オデュッセイアとの関係
ホメロスに帰せられるもう一つの大作、オデュッセイア」とともに、ギリシャの二大叙事詩と見なされています。両作は登場人物や神々の系譜でつながり、互いに補完し合う形で古代の英雄伝説世界を構成します。
主な登場人物
イリアスの重要な登場人物には、アキレス、オデュッセウス、アガメムノン、メネラウス、プリアム、ヘクトル、パリス、ヘレンなどがいます。
- アキレス — ギリシャ側随一の戦士。名誉を何より重んじ、その怒りと葛藤が物語の中心となる。
- ヘクトル — トロイの最強の守護者であり、家族愛と義務感の英雄像を体現する。
- アガメムノン — ギリシャ軍の総大将。指導力と権威をめぐる衝突の当事者。
- オデュッセウス — 機知に富んだ将軍として活躍し、後の物語群でも重要な役割を担う。
- パリス と ヘレン — トロイ戦争の原因となった恋愛的・政治的な契機を象徴する人物。
- プリアム — トロイの老王。悲劇的な家父長の像として描かれる。
影響と現代への受容
イリアスは古代ギリシャ文化の価値観や英雄像を後世に伝え、文学・絵画・演劇・哲学など多くの分野に影響を与えました。近代以降も多くの翻訳や注釈、再解釈が行われ、戦争と人間性を問い直す普遍的なテキストとして読み継がれています。現代の研究では、史実としてのトロイア戦争と叙事詩的伝承の関係、口承から筆記への移行、作品におけるジェンダーや権力の問題など、多角的な視点から新たな解釈が提示されています。
参考点
作品を読む際は、古代の語法や比喩、儀礼的場面の背景知識を押さえると理解が深まります。注釈付きの翻訳や学術的解説書、史的・考古学的研究を併せて参照すると、詩の描く世界とその成立過程をより正確に把握できます。

ホメリック・ギリシャの地図。

負傷したパトロクロスを手当てするアキレス

イリアスの 第一節
プロット
この詩は、ギリシャ人がトロイア人の祭司の娘を捕らえたために、アポロ神がギリシャ人に疫病を送るところから始まります。アガメムノンは娘を返せと迫られます。アガメムノンは自分の娘を手に入れるために、捕らえられたトロイア人の娘ブリセイスを持ち主のアキレスから引き取ります。アキレスは怒り、戦争に参加することを拒否します。アキレスの友人パトロクロスがヘクトルに殺されると、アキレスは再び戦いを始め、決闘でヘクトルを殺す。その後、ヘクトルの父プリアムがアキレスのもとへ密かにやってきて、大好きな息子の遺体を引き取ってきちんとした葬儀をしてあげたいと言い出し、アキレスはそれを許します。詩はヘクトルの葬儀で終わる。
関連ページ
- トロイア戦争
- オデッセイ
質問と回答
Q:『イーリアス』とは何ですか?
A:『イーリアス』は、紀元前8世紀に書き下ろされた古代ギリシャの叙事詩です。もともとは口承叙事詩として語られていたもので、初期のギリシャ神話や伝説が含まれており、おそらく青銅器時代のトロイ襲撃が元になっていると思われます。
Q:『イーリアス』は誰が書いたのですか?
A: 人々は通常、ホメロスが『イーリアス』を書いたと言いますが、学者たちはこの詩が本当に一人の人間によって書かれたのかどうか確信がないようです。
Q:『イーリアス』の物語はいつごろの話ですか?
A:『イーリアス』の物語は、紀元前1200年頃のトロイア戦争が舞台になっています。
Q:『イーリアス』にはどんなことが書かれているのですか?
A:戦士アキレスと王アガメムノンの対決や、戦争にまつわるギリシャ神話が多く含まれています。アキレスの怒りからヘクトルの死と葬儀までの物語で、最後はトロイの包囲で終わります。
Q:『イーリアス』はどのくらいの長さなのですか?
A:『イーリアス』は24章からなる叙事詩で、ヘキサメトリーで書かれています。
Q:『イーリアス』の重要な登場人物は誰ですか?
A:アキレス、オデュッセウス、アガメムノン、メネラウス、プリアム、ヘクトル、パリス、ヘレンなどです。
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