B of the Bangはイギリスのマンチェスターにある彫刻でした。スポーツシティのシティ・オブ・マンチェスター・スタジアムの隣に設置され、トーマス・ヘザーウィックの設計による作品です。彫刻は走者の爆発的な動きを象徴する「爆発の瞬間(バング)」をモチーフにしており、中心から放射状に伸びる多数の突起(スパイク)で構成されていました。構造上の問題により2009年に解体され、現在は現存していません。

概要と意図

この作品は2002年のコモンウェルスゲームを記念して発注され、マンチェスター市のランドマークとして計画されました。完成時には市内で最も高い構造物の一つに数えられ、2008年にアスパイアが完成するまでは英国で最も高い彫刻とされていました。建築的・彫刻的な意図は、短距離走者がスタートダッシュで放つエネルギーの「一瞬の爆発」を巨大な静止画のように表現することにあり、そのネーミングは英国のスプリンター、リンフォード・クリスティの言葉「スタートはピストルの“バング”ではなく“バングのB”である(the start is not the bang of the pistol but the B of the bang)」に由来します。

構造と外観

彫刻は中央の鋼製コアから無数の突起が放射状に伸びる形状で、遠目には破裂する星や花火のような印象を与えました。材料は主に鋼(ステンレス鋼を含む)で製作され、設置高さは約56メートル程度と報じられています。デザインは視覚的に強い動感を与える一方で、薄く鋭い突起の多さと接合部に高い構造的安全性が求められるものでした。

建設と問題の発生

  • 2003年に発注され、当初の予定より工期が延びたため、正式なお披露目は2005年1月12日に延期されました。
  • お披露目の6日前、彫刻の突出した先端の一部が外れて地上に落下する事故が発生し、これが表面化した最初の構造的問題でした。
  • その後の検査で、接合部やボルト部分に疲労や亀裂が見つかり、複数箇所で安全性の懸念が生じました。これにより補強や修繕を巡る議論が長引きました。

訴訟と和解

問題発生から約1年後、製作・施工にかかわった側とマンチェスター市との間で訴訟が起こされ、最終的に総額約170万ポンドの法廷外和解が成立しました。和解金は補修費用や責任の配分に関する合意に充てられたと報告されています。

撤去とその後

しかしながら、継続的な安全性の問題と維持費用の増大を受け、2009年2月にマンチェスター市議会は「唯一の現実的な代替案」として彫刻の解体と保管を発表しました。市議会は当初、設計チームと協力して「敷地内での再構築が可能かどうか」を検討すると述べ、保管と再設置の可能性を示唆していました。

それにもかかわらず、撤去作業の過程で彫刻のコアと脚部は切断され、当初期待された形での完全な再建は実現しませんでした。以降、彫刻の一部は保管・処分されたとされ、当初の場所に戻ることはありませんでした。

評価と遺産

B of the Bangはその大胆なデザインと巨大さから大きな注目を集め、支持者からはマンチェスターの新たな象徴として評価されました。一方で、工学的な問題と高額な維持費、公共の安全性に関する懸念から批判の対象ともなり、公共アートとインフラ管理の難しさを示す事例として語られます。設計者のトーマス・ヘザーウィックはこの作品を含めた一連の仕事で国際的な評価を高め、その後も公共空間における挑戦的なプロジェクトを多数手掛けています。

現在、B of the Bangは物理的には解体されているものの、マンチェスターの2000年代の都市景観とパブリックアートをめぐる議論の象徴として記憶されています。