輝石類(ピロキシン)とは|構造・分類・火成岩・変成岩の主要鉱物

輝石(ピロキシン)の構造・分類を図解で解説。火成岩・変成岩での主要鉱物としての役割や化学組成・結晶特性をわかりやすく紹介。

著者: Leandro Alegsa

輝石類は、多くの火成岩や変成岩に含まれる重要な造岩性の非ケイ酸塩鉱物の一群である。一般式 XY(Si,Al)2O6 (X と Y は金属イオンを表す) で表される、ケイ素四面体が一列につながった「単鎖珪酸塩(単鎖珪酸類、inosilicate)」の構造を持つ点が共通している。長石や角閃石のような珪酸塩ではアルミニウムが広くケイ素と置換しているのに対し、ほとんどの輝石ではアルミニウムの置換は比較的限られている。

輝石岩は、輝石族に属する鉱物が主に集まってできた火成岩(超基性〜中性の深成岩や飛灰由来の火成岩など)を指す。特に地球のマントルや深成岩(かんらん岩、閃緑岩、斑れい岩など)や玄武岩質岩石に多く見られる。

構造と化学組成

輝石類の基礎は、SiO4四面体が互いに二つの酸素を共有して連続した鎖([SiO3]n。実際の単位としては Si2O6 を含む)を形成する単鎖構造である。一般式 XY(Si,Al)2O6 において、X 位置には主に Ca, Na, Fe2+, Mg2+、Y 位置には主に Mg2+, Fe2+, Fe3+, Al3+ などが入る。よく知られる代表鉱物には以下がある:

  • 斜方輝石(Orthopyroxene):エンスタタイト(Enstatite, MgSiO3 系)やフェロシライト(Ferrosilite, FeSiO3 系)など(Mg-Fe の固溶系列)。
  • 単斜輝石(Clinopyroxene):ジオプサイド(Diopside, CaMgSi2O6)、ヘデンベルギ石(Hedenbergite, CaFeSi2O6)、オーガイト(Augite、複雑なCa-Mg-Feの固溶体)など。
  • ナトリウム系輝石:ジャダイト(Jadeite, NaAlSi2O6)、アイガーリン(Aegirine, NaFe3+Si2O6)など。

分類の基準

輝石類は結晶系(斜方晶か単斜晶か)と化学組成(特に Ca–Mg–Fe の比)によって大別される。学術的には「ピロキシン四辺形(pyroxene quadrilateral)」が Mg–Fe–Ca 系の clinopyroxene の分類に使われる。温度や圧力、酸素分圧、結晶成長速度によっても組成や相(たとえばヘデンベルギ石とジオプサイドの割合)が変わる。

岩石学での役割と出現環境

輝石は多くの火成岩や変成岩の主要構成鉱物であり、岩石の起源や進化、温度・圧力条件を示す指標鉱物として重要である。

  • 火成岩:玄武岩、閃緑岩、斑れい岩、かんらん岩などに広く分布する。マグマの組成や分化過程を反映する。
  • 深成岩・超基性岩:かんらん岩や輝石を主体とする輝石岩(pyroxenite)はマントルに近い組成を示すことが多い。
  • 変成岩:高圧環境ではジャダイトやオムパサイト(omphacite、ジャダイトとジオプサイドの固溶体)が生じ、エクロジャイト類に典型的である。高温変成(グラニュライト相)では斜方輝石が安定することがある。
  • 月や隕石:月の玄武岩や多くの隕石にも輝石が含まれ、太陽系小天体の形成史研究に利用される。

物理的・光学的性質と識別法

輝石の特徴的性質は以下の通り:

  • 断口・割れやすさ:二方向の明瞭な劈開がほぼ直角(約87–93°)をなす。これが識別に有用。
  • 色・光沢:黒色~緑黒色、褐色、淡緑色など。光沢は通常ガラス光沢。
  • 比重:一般に比較的高め(種によるが約3.2–3.8)。
  • 岩石薄片での光学像:斜方輝石と単斜輝石で消光角や干渉色が異なる。薄片観察では単斜晶系の臨界角や二軸性などが鑑定に役立つ。
  • 組織特徴:溶融冷却過程や固溶体の分離で斑晶や条線(条線状組織)、浸入や連続的な固溶変化により包有物や繊維状組織を示すことがある。

地球化学的意義と応用

輝石の組成はマグマのMg#(Mg/(Mg+Fe))やCaの挙動、分異作用、酸素分圧などを反映するため、岩石の起源や分化履歴を推定する材料として重要である。また、高圧相変化(例:ジャダイトの生成)は造山帯や沈み込み帯での圧力条件の指標となる。

見分け方の実用メモ(ハンドサンプルと薄片)

  • ハンドサンプル:黒緑色で二方向の劈開が確認できれば輝石の可能性が高い。比重が重く、ガラス光沢があることを確認。
  • 薄片観察:斜方輝石と単斜輝石は光学的挙動が異なるため、偏光顕微鏡での消光形式や干渉色、屈折率差で判別する。
  • 化学分析:EPMA や XRD による組成・結晶構造解析で確実に同定できる。Mg–Fe–Ca 比を測れば分類が明確になる。

このように、輝石類(ピロキシン)は地球科学において広範な情報を与える重要な鉱物群である。岩石の種類や生成環境、変成条件を読み解く上で不可欠な指標鉱物である。

輝石鉱という、輝石鉱物を主成分とする岩石のサンプル。Zoom
輝石鉱という、輝石鉱物を主成分とする岩石のサンプル。

輝石Zoom
輝石



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