レッド・トーリーとは:カナダの“赤い保守派”の定義・特徴と歴史
カナダの「レッド・トーリー」を徹底解説。定義・政治思想・歴史的背景と著名な指導者まで、保守派の新たな顔をわかりやすく紹介。
レッド・トーリーは、カナダ保守党の内部に見られる考え方の一つで、保守的価値観と社会的責任(コミュニタリアニズム)を重視する派閥を指します。端的に言えば、伝統や秩序を重んじつつも、公的な社会保障や公共サービスの維持を支持する点で、より「社会的な」側面を持った保守主義です。
主な特徴
- 社会政策における寛容さ:個人の権利や社会的寛容を重視する傾向があり、死刑に反対する立場や、同性愛者の結婚に対して比較的寛容な見解、中絶などの選択に対して個人の権利を尊重する立場を取るメンバーもいます。ただしこれは一枚岩ではなく、個人差があります。
- 経済・福祉政策の折衷:歴史的には市場原理だけに委ねず、州(連邦)による経済介入や社会保障制度の維持を支持することが多く、いわゆる「大きな政府」を肯定する側面もあります。一方で、現代の党内では財政保守を重視して低い税率や効率化を訴えるメンバーも存在し、必ずしも一貫した経済路線とは言えません。中には低い課税や小さな行政を志向し、リバータリアンな傾向を示す人もいます。
- 保守的アイデンティティ:価値観や国家観においては依然として保守的であり、伝統や秩序の尊重を重視します。したがって、レッド・トーリーは形を変えた保守派であり続けています(例として本文では保守派である。と表現されることがあります)。
党内対立と位置づけ
カナダ保守党の中では、より小さな政府や文化的・社会的な保守性を強く主張する派をブルートリーと呼び、レッド・トーリーとはしばしば対立します。党内の政策論争では、福祉政策や経済政策、社会問題に関する姿勢の違いが勢力争いの焦点になります。
歴史と代表的な人物
レッド・トーリーの思想は英国の「パターナリスティック保守主義」に由来する要素を持ち、カナダの歴史的保守主義(Progressive Conservative の系譜)と結びついて発展しました。戦後から冷戦期にかけては、政府の役割を重視しつつ伝統を守る政治家が存在しました。代表例として、ジョン・ディーフェンベーカー(在任1957–1963)は大衆的な政策と国民統合を重視した面があり、またジョー・クラークは(在任1979–1980)穏健な進歩的保守主義の代表的存在と見なされることがあります。
現状と展望
2003年の保守党再編(Progressive Conservative と Canadian Alliance の合併)以降、党の路線は右寄りにシフトしたため、従来のレッド・トーリー的伝統は影響力を弱めた面があります。しかし多くの州レベルの保守党や党内の穏健派として、現在もレッド・トーリー的な立場は存続しており、経済・福祉・社会政策の折り合いをつける「中道的保守」として議論に関わり続けています。
まとめると、レッド・トーリーは単純な左右の枠組みでは捉えにくい「保守の中の多様性」を示す概念であり、社会的責任と伝統尊重を両立させようとする思想です。具体的な政策や立場は時代や個人によって変わるため、文脈ごとにその意味合いを確認することが重要です。
百科事典を検索する