サモセット(1590年頃~1653年頃)は、1621年3月16日にプリマス植民地を訪れ、移住者たちに最初に英語で挨拶したことで知られるネイティブ・アメリカンの人物である。植民地側の記録(特にウィリアム・ブラッドフォードの『プリマス植民史』)によれば、サモセットは突然入ってきて英語で「Welcome, Englishmen(ようこそ、イングランド人)」のような言葉をかけ、入植者たちを大いに驚かせたと伝えられている。彼が英語を話せたのは、メイン州沿岸に来ていたイギリス人の漁師たちとの接触を通じて言葉を覚えたためと考えられている。

サモセットは出自について諸説あるが、一般にメイン州沿岸の先住民、いわゆるアベナキ(ワバナキ連邦の一部)やその周辺部族に属すると考えられている。必ずしもワンパノアグ族の一員ではなく、当時の地域的な勢力関係の中で重要な地位にあった人物であった。プリマス植民地のリーダーたちと親しく話をし、その後まもなく英語を話す先住民の仲介者であるSquanto(ティスクァントム)を入植地に案内したことで、入植者と先住民との間の初期の交流や同盟形成に大きな役割を果たした。

名前にはいくつかの表記揺れがあり、英語史料では「Samoset」や「Somerset(サマセット)」などと記されることがある。後者の綴りは、イングランド側の地名であるイギリスのサマセットにちなむと考えられるが、これは英語話者がつけた外来名である可能性が高い。1624年には、探検家クリストファー・レヴェット(しばしば「レベット」と表記される)が現在のメイン州ポートランド付近の港で他の先住民指導者とともにサモセットに会ったという記録も残る。

サモセットの正確な生年や死亡年は不確かだが、一般には1590年頃生まれ、1653年頃に没したとされる。彼の重要性は、単に「最初に英語で挨拶した人物」という逸話にとどまらず、異文化間の最初期接触において情報・言語・外交の橋渡しを果たした点にある。史料は当時の英語側の記録に偏るため、詳細や背景には不確実な点も多く、研究者の間で解釈が分かれる箇所があることも付記しておく。