次亜塩素酸ナトリウムとは|性質・化学式・用途・安全性まとめ
次亜塩素酸ナトリウムの性質・化学式(NaClO)・消毒や漂白などの用途、危険性と安全な取り扱い方法を分かりやすく解説。
次亜塩素酸ナトリウムは、ナトリウムイオンと次亜塩素酸イオンからなる不安定な化合物です。しかし、溶液中では安定であることが多く、薄緑色の水溶液として市販されています。化学式はNaClO(またはNaOCl)で、強力な酸化剤です。消毒(バクテリアやウイルスを不活化する)や衣服などの汚れを落とす漂白剤として広く使われます。工業的には塩素を原料として水酸化ナトリウムと反応させて製造されますが、製品中にはしばしば水酸化ナトリウムが少量残留し、これが繊維や皮膚に対して腐食性を示すため、綿や天然繊維への使用は注意が必要です。さらに、酸と反応して塩素を発生させるため、酸性物質やアンモニアと混ぜないなど取り扱い上の注意が求められます。
性質
- 化学式:NaClO(NaOCl)。水中では次亜塩素酸イオン(OCl−)と平衡にある。
- 色・状態:薄緑色の水溶液。固体は白色〜淡黄色の粉末や結晶。
- pH依存性:水中では次亜塩素酸(HOCl)と次亜塩素酸イオン(OCl−)の平衡があり、pKaは約7.5(25°C)。pHが低いほどHOClが多く、消毒力は高いが酸を加えると塩素ガスが発生する危険がある。
- 酸化力・反応性:有機物や微生物を酸化して不活化する。アンモニアや有機窒素と反応して塩素化副生成物(塩素アミン類)を作ることがある。
- 分解:光や熱、二酸化炭素、有機物の存在で分解しやすく、塩化物(NaCl)などに還元される。濃度は時間とともに低下するため、使用直前に希釈することが推奨される。
製造と主な化学反応
- 工業的製法:塩素(Cl2)を水酸化ナトリウム(NaOH)に通じて生成する。代表的反応式:Cl2 + 2 NaOH → NaCl + NaClO + H2O(低温で進行しやすい)。
- 酸との反応:酸を加えると次亜塩素酸(HOCl)が生成され、さらに酸性条件下では有毒な塩素ガス(Cl2)を発生する可能性がある。例:NaOCl + 2 HCl → Cl2↑ + NaCl + H2O。
- アンモニアとの反応:アンモニア(NH3)と反応して塩素アミン(NH2Cl など)を生成し、有毒かつ刺激性のあるガスを発生することがある。
用途
- 消毒・殺菌:医療施設、食品加工場、家庭内の床やトイレ、器具の消毒に用いられる。効果は濃度と接触時間、汚れの有無に依存する。
- 上下水・プール処理:水道水やプールの消毒に利用される(適切な濃度管理が必須)。
- 漂白:衣類や紙パルプの漂白に用いられる。ただし繊維や染料を損なうことがある。
- 工業用途:製紙、染色、化学合成の酸化剤として利用される。
希釈と一般的な濃度目安
- 市販の家庭用漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム水溶液)は一般に約3〜6%(重量/体積)の有効塩素を含むことが多い。
- 消毒の目安(目安値):
- 一般的な表面消毒:約0.05%(500 ppm)程度。家庭用5%漂白剤を1:100に希釈(例:5%製品 10 mL を 1 L の水に加える)すると約0.05%になる。
- 血液や体液の処理など高リスク汚染:約0.5%(5,000 ppm)。家庭用5%製品を1:10に希釈(例:100 mL を 1 L の水に加える)すると約0.5%になる。
- 希釈は使用直前に行い、作成後はできるだけ早く使う(一般に1日以内に使い切るのが望ましい)。
安全性と取り扱い上の注意
- 混合禁止:酸(酢や塩酸など)、アンモニア、アミン系洗剤などと絶対に混ぜない。塩素ガスや塩素アミンが発生し、呼吸器や眼に重篤な障害を引き起こす。
- 腐食性・刺激性:金属や繊維、塗装を腐食・脱色させる。皮膚・眼に刺激性があり、付着した場合は多量の水で洗い流す。保護手袋や必要に応じて保護眼鏡を着用する。
- 揮発・吸入:高濃度の蒸気や混合により有害なガスが発生することがあるため、換気の良い場所で使用する。
- 保管:直射日光を避け、冷暗所に密栓して保管する。時間とともに分解して効果が落ちるため、長期保管や高温は避ける。金属容器は腐食する可能性があるので、適切な材質の容器を使用する。
- 環境影響:水生生物に有害で、塩素化有機物などの副生成物が環境負荷を与えることがあるため、過剰な放流は避ける。
応急処置の概略
- 皮膚に付着した場合:汚染部分を水で十分に洗い流し、必要なら医師に相談する。
- 眼に入った場合:大量の水で少なくとも15分間洗眼し、速やかに医療機関を受診する。
- 吸入した場合:新鮮な空気の場所へ移し、呼吸困難や咳が続く場合は医師の診断を受ける。
- 誤飲した場合:口をすすぎ、医療機関に連絡。嘔吐を無理に誘発しない。製品ラベルや容器情報を持参する。
まとめ
次亜塩素酸ナトリウムは強力な酸化剤・消毒剤として有用ですが、その効果は濃度・pH・接触時間・有機物の有無に依存します。正しい希釈・使用方法と保管を守り、酸やアンモニアなどと混ぜないこと、皮膚・眼・呼吸器の保護を徹底することが重要です。
関連ページ
- 塩素酸カリウム
- 次亜塩素酸塩
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