体細胞とは|定義・特徴・配偶子との違い・有糸分裂とヒトの染色体(46本)
体細胞とは何かをわかりやすく解説:定義・特徴・配偶子との違い、有糸分裂の仕組みとヒトの46本染色体を図解で理解。
生物の体内には、卵や精子などの性細胞である倍数体配偶子や生殖に関わる細胞以外は、すべて体細胞である。
体細胞は通常2倍体であるが、倍数体である場合は例外である。いずれにせよ、体細胞は同じ生物の配偶子が持つ染色体の2倍の数を持つ。体細胞は有糸分裂によって分裂し、自分自身の同一コピーを作るが、配偶子は生殖細胞が減数分裂することによって作られる。
ヒトの場合、体細胞には46本の染色体がある。
定義(体細胞とは)
体細胞(somatic cell)は、個体を構成するほとんどの細胞のことで、配偶子(卵・精子)や配偶子を作る生殖細胞系列(生殖細胞)は含みません。皮膚、筋肉、神経、肝臓、血液中の白血球など、身体の構造や機能を担う細胞が該当します。
特徴
- 染色体数(核内DNA):一般に同種の配偶子が持つ染色体数の2倍(2n)を持ちます。つまり、父方と母方それぞれから受け継いだ同じ種類の染色体が対を成します(ホモログ対)。
- 分裂様式:体細胞は主に有糸分裂(mitosis)によって増殖し、遺伝情報が複製された等しい娘細胞が生じます。
- 多様性と役割:組織や器官ごとに形態・機能が異なる多数の種類があり、成長、組織の修復、代謝などを担います。
- 例外:植物では多くの体細胞が倍数体(多倍性)であることがあり、また昆虫の一部(例:ハチ属の雄)では体細胞が単相(n)である場合があります。哺乳類の成熟した赤血球は核を失っているため核内染色体を持ちませんが、それでも体細胞に分類されます。
配偶子(生殖細胞)との主な違い
- 染色体数:配偶子は通常1n(単相)で、受精によって2nになるのに対し、体細胞は通常2nです。
- 分裂の仕方:配偶子は減数分裂(meiosis)で作られ、染色体数を半分にしつつ遺伝的多様性を生む過程(相同染色体間の交差・独立分配)を伴います。一方、体細胞は有糸分裂で正確に染色体を複製して分配します。
- 機能:配偶子は次世代に遺伝情報を伝える役割を持ち、体細胞は個体の構築と維持を担います。
有糸分裂(概略)
有糸分裂は一般に次の段階で進行します:前期(染色体の凝縮と核膜の消失)、中期(染色体が赤道面に並ぶ)、後期(姉妹染色分体が分離して両極へ移動)、終期(核膜の再構築と染色体の脱凝縮)、および細胞質分裂(サイトカインシス)。有糸分裂により生じる娘細胞は通常親細胞と遺伝的に同一です。成長や組織の修復、幹細胞の自己複製などで重要な役割を果たします。
ヒトの体細胞と46本の染色体
- ヒトの体細胞は通常46本(23対)の染色体を持ちます。内訳は22対の常染色体(オートソーム)と1対の性染色体(女性はXX、男性はXY)です。
- 配偶子(精子・卵)はそれぞれ23本(n)であり、受精で合わさって46本(2n)になります。
- 注意点:染色体数の異常(例:トリソミー21=ダウン症候群)は受精時や初期細胞分裂での非分離や誤分配により生じます。体細胞で新たに染色体異常や突然変異が起きると、モザイク(体細胞モザイク)やがんの発生に関与することがあります。
- また、細胞質内のミトコンドリアは独自の小さなDNA(ミトコンドリアDNA)を持ち、全ての体細胞に存在します(ただし成熟赤血球は核を欠く)。ミトコンドリアDNAは母系遺伝します。
補足:幹細胞と分化
体内には多能性や組織特異的な幹細胞が存在し、必要に応じて分裂して新しい体細胞を供給し、分化して特定の機能を持つ細胞になります。生殖系列の幹細胞(精原細胞・卵母細胞の前駆細胞)は将来配偶子を作るための分裂を行いますが、それ自体は体細胞系と区別されることが多いです。
まとめ(要点)
- 体細胞=個体を構成するほとんどの細胞(配偶子・生殖細胞を除く)
- 通常は2n(二倍体)で、有糸分裂により同一の娘細胞を生じる
- ヒトでは通常46本の染色体(23対)を持つ(22対の常染色体+1対の性染色体)
- 例外や変異(多倍性、単相体、無核赤血球、モザイク、がんなど)が存在する
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